News 2002年11月20日 11:59 PM 更新

マイクロソフトが描く、情報家電の近未来像

「情報家電産業総合会議」のセッションで、マイクロソフトが非PC分野での取り組みを語った

 Microsoftはこれまで、同社のOSが入っているPCが中心となったコンピューティングの世界をユーザーに紹介してきた。近年、そのビジョンに変化が表れている。

 ビッグサイトで11月20日に行われた「情報家電産業総合会議」のセッションで、マイクロソフト ニューメディア&デジタルデバイス本部の佐野勝大氏が、同社の非PC分野の取り組みを語った。


マイクロソフト ニューメディア&デジタルデバイス本部の佐野勝大氏

水道/電気会社を目指すMicrosoft

 「1999年ぐらいまでは、MicrosoftはPCを中心に考えていた。インターネット上でWindowsを使い、PCもしくはPCサーバを利用することで、ユーザーの利便性向上や生活を豊かにすることを会社のビジョンとしていた」(佐野氏)。

 だが、1999年を境に、同社の戦略が大きく転換した。理由は、インターネットなどネットワーク技術の進化やブロードバンドやワイヤレスなど通信インフラの普及、そして情報家電分野の技術革新だ。

 「Microsoftはコンピューティングの世界をWindowsだけで構築しようとしていた。しかし、われわれの力だけでやれることには限りがある。インターネットという標準技術を利用して、その中でユーザーの社会的な基盤を築いていこうというビジョンへと全社的に移行した。分かりやすくいうと、Microsoftは水道会社や電気会社を目指しているということ」(佐野氏)。

 つまり、OSを個別に買ってもらったり、ランタイムやロイヤリティで利益を得るためにテクノロジーを提供していくのではなく、水道や電気といった生活に欠かせないインフラのように、社会的基盤の中にMicrosoftの技術を取り込んでいくことを同社のビジョンにしたのだと佐野氏は説明する。


 そのビジョンを一般家庭でどう具現化していくかを示したのが、昨年から提唱する「Microsoft eHome Vision」だ。

 家電製品を快適に使いやすくするためには、家電製品同士をネットワークで結び、それらを一元管理する仕組みが必要になる。いわゆるホームオートメーション/ホームネットワーキングと呼ばれるものだが、Microsoftは、まずこの世界の実現を目指している。

 「個別の家電製品を有機的にネットワークでつなげて、その上でソフトウェアのプロトコルを走らせて、ソフトウェアで制御できるようにしていく。Microsoftのソフトウェア技術を家庭でどのように応用できるかという取り組みが、eHomeのビジョン」(佐野氏)。

 同社はMicrosoft eHome Visionを実現するための要素技術として、「UPnP(Universal Plug&Play)」や、UPnPの応用範囲をホームオートメーション分野に広げた電灯線ネットワーク規格「SCP(Simple Control Protocol)」などを発表している。

 「Windowsとは違う“オープンソース”というカタチをとったUPnPやSCPは、フォーラムを作るなどして業界団体とともに標準化を進めている。従来のUPnPは、プリンタやスキャナなどPCの周辺機器に対してプラグアンドプレイを実装する技術だったが、最近ではソニーのRoomLinkが、バイオとAV機器とをつなぐためにUPnPを実装するというような使い方も出てきている」(佐野氏)。

 ハードウェアを物理的につなぐ従来のネットワークでは、プラットフォーム変更のたびにハードウェアも変更しなければならず、コストや時間がかかっていた。UPnPやSCPでネットワークに論理的につなぐことで、プラットフォーム変更時もソフトウェア的に対応できる世界が実現できる。

 「最終的には、家電製品を買ってきて家の中に入ってきた時点で、ホームネットワークがその製品の特性などを自動的に検知し、どういうプロトコルを送れば制御できるかということを自動的にセッティングしたり、1つのユニバーサルリモコンですべての家電製品を操作できるような世界を目指している」(佐野氏)。

家庭のネットワークの中心は、やはりPC

 ただし、MicrosoftはWindowsというOSを捨てたわけではない。家庭のネットワークの中心となってサーバ的役割を担うのは、やはりPCだと考えているのだ。


 来年1月に発売される「Windows XP Media Center Edition」が、eHomeの構想を具現化した第1弾製品となる。これはAVやマルチメディアのデータをPCで一元管理し、どこででも使えるようにしようというコンセプトだ。

 「PCを冷蔵庫のように常に電源オンの状態にしておく。このPCは、外のインターネットと常時接続してファイアーウォールの役割も担う。デジタルデータはPCに集約され、家電製品はコントロールポイントとして構成情報のみをPCに送ってくる。こうしておくことで、どこにどんなデバイスがあっても、1つのコントロールポイントで制御できるようになる」(佐野氏)。

 このような構想のもと、個別の要素技術として、Windows CE.NETベースのディスプレイデバイス「Smart Display」、マルチメディアのコーデックやビデオのストリーミングの技術として「Windows Media 9 Series」、接続するためのプロトコルとしてUPnP、インターネットの世界から家の中へサービスを取り込む技術として.NETがあるのだ。

 「単にネットワークを接続するだけでなく、その上でどういったサービスを提供するかということも考えて、Microsoftはプラットフォームを提案していきたい」(佐野氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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