News | 2002年11月25日 12:07 PM 更新 |
平面スピーカーの技術開発を行っている英NXT(New Transducers)社に、COMDEX/Fall 2002の会場近くで話をうかがうことができた。NXTの技術は、小型のアクチュエータで平板を分割共振させ、音を出すというユニークなもの。
この技術はNECの社内ベンチャーから独立したオーセンテックがライセンスし、NEC製のパソコン用小型スピーカーとしても製品化されている。今年、富士通が一部機種で採用した平面スピーカーも、オーセンテックによるものだ。
これらの製品はSurfaceSoundと呼ばれる技術を元にしたものだが、同じ原理を透明な1枚のアクリル板でステレオを実現するSoundVu技術も、NECのVALUSTAR Tシリーズで製品化されている。
オーディオのタブーを破るスピーカー
コンベンショナルなスピーカーは、振動板の剛性を上げ、たわみによる分割振動(分割共振)を抑えながら音を出す。分割共振は音の純度を下げ、付帯音が増加するため、これをいかに抑えるかは、スピーカー開発をする上でひとつの技術的な争点だった。
しかし、NXTの技術は分割共振を抑えるのではなく、分割共振させることで音を出す。分割共振を意図的に起こすなど、ピュアオーディオでは考えられないタブーだが、その禁を破ったおかげで、NXTは平面薄型スピーカーの技術を実用化できたのだ。
例えば、板のある点をアクチュエータで振動させる時、周波数が高いと表面が波形に変形して凸凹になってしまう。ゆっくり動かすとたわみ、そして戻って逆にたわむという動作になる。だが、周波数が高いとたわみが戻る前に逆方向にたわませる力が加わるため、表面は海の水面のようになる。この平板のゆがみこそが音声の素。
この音声の素は、減衰しながら平板全体に広がっていく。このため、アクチュエータ部はコンパクトで小さなエネルギーしか与えていなくとも、平板全体から出てくる音は意外なほど大きなものになる。
また平板全体がピストン運動するのではなく、分割共振するため、周波数再生レンジが非常に広いのも特徴。50〜70Hzを下限に、上は20kHzから100kHz程度まで、周波数特性を伸ばすことができる。これほどワイドレンジのスピーカーは、なかなかお目にかかれない。巨大なウーファーから小さなトゥイータまでを並べ、エンクロージャ容量も必要なスピーカーと比べると、コンパクトさやコストの安さが際だつ。
例えば、NXTから技術ライセンスを受けているRadicaは、Radica Mini Wooferというゲームボーイアドバンス用のスピーカーユニットを販売している。ゲーム機本体にアタッチして使うのだが、ゲームボーイアドバンス本体にぴったりと合う形で非常にコンパクト。単3電池を2本使うが、かなり大きな迫力のある音でゲームを楽しめる。値段も3000円程度と安い。現在は英国のみで発売されており、近日、米国市場でも投入される見込み。
また、簡単な実験でNXTスピーカーに使われているアクチュエータに、手で名刺を押しつけてみた。すると名刺から音が聞こえてくる。しかもかなり大きな音。うーん、こりゃ面白い。
[本田雅一, ITmedia]
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