News:ニュース速報 2002年11月27日 06:19 PM 更新

MS、「GPLは国内ソフト産業発展を制限」

マイクロソフトは11月27日、電子政府・自治体システムへのオープンソースソフトの導入について同社の見解を発表した

 マイクロソフトは11月27日、電子政府・自治体システムへのオープンソースソフトの導入について同社の見解を発表した。

 見解では、「システムの導入はセキュリティやTCO(Total Cost of Ownership、全体コスト)の観点から検討されるべきであり、『オープンソース』だからといって特別扱いされるべきではない」としてLinuxなどオープンソースOSへの傾斜が進む傾向に反論。さらにGPL(GNU General Public Liseence)について「ソフトの知的財産権を否定するもの」と批判している。

「『オープンソース』議論は混乱している」

 マイクロソフトはまず、「オープンソースソフトはIT産業の発展に大きな貢献をしてきた」として「オープンソースソフトウェアを否定するものではない」と断った上で、「ただ現在の『オープンソース』議論は『オープンソース』が何なのかはっきりせず、混乱が生じている」と指摘。“ソースコードがオープン”“オープン=無料”といったさまざまな見方が混在している現状にクギをさした。

 その上で「政府の選択は、製品の開発方法が何であるかではなく、製品がどのような機能を有しているか、その製品を用いて構築され運用されるシステム全体のコストをがどれくらいか、などを総合的に判断して決定すべきだ」と主張し、“はじめにオープンソースありき”な風潮を批判している。

 マイクロソフトによると、オープンソースOSに対するWindowsの優位点は主に(1)セキュリティ、(2)TCO──の2点。

 セキュリティ面では「独立系調査機関の調査結果によれば、オープンソフトOSが商用ソフトに比べセキュリティ面で必ずしも優れているわけではないことが報告されている」。Microsoftは「Trustworthy Computing」を全社的な方針に掲げセキュリティ面の強化と迅速な情報開示を進めているとしている。

 またWindows 2000が「ISO 15408」のセキュリティ評価共通基準認定を取得したのに対し、オープンソフトOSはこれが実現できてないと指摘した。

 TCO面では、コスト判断は製品導入時のみではなく、製品を使用する全体の期間について行うべきだとした。初期導入時はオープンソースOSのほうが安いとしても、「システム構築、運用、サポートなどTCOの観点が非常に重要。その場合、オープンソースOSはメンテナンスや社内人件費に費用がかかり、全体の期間で考えると商用ソフトよりコストがかかる場合が多くある」という。

 その上で、米Microsoftが展開しているプログラム「シェアードソースイニシアティブ」を今後は日本の政府・自治体向けにも展開することを明らかにした。同プログラムは公的機関や企業、教育機関と秘密保持契約(NDA)を結んだ上でWindowsソースコードを開示するもの。既に国内でも一部の公的機関や大学などに開示は行ってきたが、今後はプログラムとして本格的に実施する。

「GPLは知的財産立国に逆行」

 さらに批判の矛先はGPLに向かう。GPLソフトは無償で改変したり、独自ソフトと組み合わせて頒布することが可能だが、「そうしてできた新しいソフトもGPLに対応する必要がある。結局、独自に開発したソフトの派生物はソースコードを公開し、ソフト自体の価格を他社に請求することができない」。そのため「こうした条件はソフトに対する知的財産権を否定するもの」であり、「健全なソフト産業が発展することができない」とした。

 また政府が進める“知的財産立国”について「GPLはこれに逆行する」「GPLは国内ソフト産業の育成を制限する可能性を秘めている」という。

脱Windowsに危機感?

 電子政府・自治体システムへのオープンソースOS導入では、特に欧州で脱Windowsの動きが進んでいるほか、日本政府もオープンソースへの傾斜を強めている。北海道庁など自治体レベルでもオープンソース採用の動きがある。最近になってこうした報道が相次いだこともあり、関係者の間では今回の「見解」はマイクロソフトの危機感が現れたものと受け止められている。

 マイクロソフト側の「オープンソースを特別扱いするべきでない」との主張に対し、「政府系機関だからこそ民間企業1社によるプロプラエタリなOSを使用すべきでない」という反論もあるだろう。「GPLはソフトの知的財産権を否定する」という主張も含め、論議を呼びそうだ。



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