News | 2002年11月29日 10:53 PM 更新 |
ただし、NY74+MAは、単純に振動の低減対策のみを行ったわけではない。「音の評価とあわせて方向性を確認しながらやってきた結果、このメディアができあがりました」(八代氏)。
NY74+MAの開発にかかった時間は、なんと「約3年」ぐらい。「考え方は、再生性能を安定化させるというところと、音の評価をうまく合わせこめるかというところなんですが、それに時間がかかりました。特に苦労したのは、やっぱりレーベル印刷のところですね」(八代氏)。
もちろん、音の評価には、さまざまなものが使用されている。「クラシックはもちろんのこと、ロック系のものや歌謡曲などを評価サンプルの曲として使いました」(八代氏)。
また、CD-Rメディアは使用するドライブによっても音が変わってしまうことは今では有名な話だ。NY74+MAは、マスタリング用メディアとして開発されている。もちろん、記録に使用されたドライブは、現在でも業務用ドライブのリファレンスとして君臨するソニーの「CD-W900E」だ。
「音の評価は、CD-W900Eの“1倍速”で行いました。また、プレクスターさんが現在開発中の業務用ドライブでベストな状態で記録できるようにもなっています」(八代氏)。
高速記録は音質劣化の原因?
「(記録)速度があまり速いと(ピットの)形が崩れやすくなります。形が崩れると、もちろん、ジッタの劣化につながるので、音が悪くなります。フォーカス/トラック系も早いほうが苦しくなります。また、評価の時に1倍、2倍、4倍、16倍とか変えてテストしましたが、16倍ですと、せっかくの素材が使えませんでした。やっぱり、1倍と16倍の差は歴然としています」(八代氏)。
八代氏は、NY74+MAの設計時の評価を振り返り、音は、低速記録の方がよいと指摘する。また、メディアの設計者として「やはり、高速用にチューニングすると、低速が合いにくくなります」ともいう。
もちろん、同社では、反射層の違いによる音質チェックも行っている。「NY74+MAを見てもらっても分かりますが、反射層は“銀”です。“金”もテストしてみましたが、結果は、見ての通りです」(八代氏)。
NY74+MAは、1枚8000円という一般ユーザーでは、購入したくても簡単にできるような価格ではない。しかし、現在では、高音質な音楽CDを作成したいというマニア層も急増中。TDKが反射層金と銀の63分メディアを同社のWeb上で販売したところ、合計3000枚のメディアが2週間ほどで売り切れになったというのは記憶に新しい。
NY74+MAを開発したリコーでも、こういった高品質なメディアについて「お客様の声を聞いて市場性がありましたら考えてみたい」と話している。個人的には、多くのユーザーから、そういった要望が集まり、高音質な高級CD-Rメディアという市場が立ち上がることに期待したい。
そうなったら、ぜひ、NY74+MAで培った技術を採用した高品質メディアをリコーに販売してほしいものだ。
[北川達也, ITmedia]
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