News 2002年12月5日 03:41 PM 更新

運転中の携帯電話は重大事故の原因――ハーバード大調査

運転中の携帯電話利用による死亡者数は、米国で年間2600人に達するという。ハーバードリスク分析センターがこのほどまとめたもので、年間の被害総額は430億ドルに上る

 ハーバードリスク分析センター(HCRA=the Harvard Center for Risk Analysis)の新しい調査によると、運転中に携帯電話を使用していたことによる米国内での事故は、年間、死者2600人、重傷33万人、軽傷24万人に上るという。また、物損による被害は150万件に達している。

 ただ、ドライバーの携帯電話の利用に関するデータがまだ少ないため、推計にはまだ幅が大きく、死亡者数は800−8000人、重軽傷者は10万人−100万人と見積もられている。

 この研究は、同センターがAT&T Wirelessのために行った2000年の研究を見直したもので、シニアリサーチサイエンティストのJoshua Cohen博士によって行われた。今回の研究はセンター自身の予算によって行われ、「National Highway and Traffic Administration」から提供された運転中の携帯電話利用に関する最新データなどが反映されている。

 最新の調査によると、運転中の携帯電話の利用時間は年間300分−1200分で、典型的な利用ケースでは年間600分の利用があると推定されている。

 Cohen博士によると、携帯電話を利用中のドライバーが死亡事故を起こすリスク、いわゆるボランタリーリスク(自発的リスク)は100万人当たりおよそ13人(4人−42人の範囲)。一方、それ以外の道路上の人が死亡事故を起こすリスク(非自発的リスク)は100万人当たりおよそ4人(1人−12人の範囲)。

 Cohen博士は運転中に携帯電話を使う人の数は増えており、そのことが引き起こす社会的なリスクは政策決定者たちにとって重要な課題になっていると指摘している。

 同博士はまた、運転中の携帯電話の利用を緊急時以外禁じた場合の金銭的な利益と損失を比較している。事故による医療コストなどの総額を算出、これを運転中の携帯電話の利用料総額と比べたもので、それによると、禁止による利益は430億ドル(90億ドル−1930億ドルの範囲)。一方、携帯電話中の利用料は一人当たり340ドル(130ドル−1200ドル)で、総額は年間430億ドル前後(170億ドル−1510億ドルの範囲)とほぼ拮抗していた。

 禁止による損失の軽減は、携帯電話利用料の喪失という経済的な不利益によって、ほぼ相殺されてしまう勘定だ。ただ、この算定についてはまだ不確実な部分も多いとCohen博士は述べている。

 ハーバードリスク分析センターはハーバード大学公衆衛生大学院(the Harvard School of Public Health)の一機関で、健康・衛生・環境面から見たリスクを評価・分析し、政策決定への提言などを行っている。

関連リンク
▼ ハーバードリスク分析センター
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[ITmedia]

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