News 2002年12月5日 04:56 PM 更新

どうなる次世代光ディスク 第4回
NECは、なぜ東芝と“組んだ”のか?(1/3)

NECはBlu-rayに組せず、東芝と次世代規格を共同提案する道を選んだ。やや意外だったこの動きの裏側では、どのような判断が働いていたのだろうか

 東芝と共同でDVDフォーラムに次世代光ディスク規格を提案したNEC。これまでの経緯から見ると、やや意外な組み合わせだったが、なぜNECは、東芝と組むことにしたのだろうか。

 「赤(波長650ナノメートルのレーザー)をやっていた時代から、日亜化学があり、次は青(波長405ナノメートルの青紫色レーザー)ともう分かっていたわけです。NECとしては、青になったら、フォーラムなどのどこか1カ所で規格を決め、それをパソコンなりAVなりで使用できるようにすればよいのではないかとずっと主張していました」。

 NEC マルチメディア研究所 エグゼクティブエキスパート 福地弘道氏は、波長405ナノメートルの青紫色レーザーを使用した次世代光ディスク規格に対するNECの取り組みの姿勢についてこう説明する。これには、大きく2つの理由がある。


NEC マルチメディア研究所 エグゼクティブエキスパート 福地弘道氏

 まず、1つは、DVDの記録では、結果として複数の規格ができ上がってしまったことだ。「ROMはうまくいったのですが、リライタブルは、RAMあって、RWが出てきて、その上、DVDフォーラム外でプラスRWが出てきてと、ガタガタしてしまった。そういうのを見て、お客様に対して失礼だなと思っていました」(福地氏)。

 同氏は現行DVDにおいて、複数の記録型DVDの規格ができ上がってしまった原因を次のように分析したという。「やはり、あれは顧客が存在していなかった。要は“技術”で動いちゃったわけです。RAMはRAMでワーキンググループが動いてしまった。それで、RWはRWで動いてしまった。結局、それで技術的にぐじゃぐじゃになってしまった」(福地氏)。

 もう1つは、レーザーの波長を短くすることで記録マークを小さくし、それによって大容量化を目指すという現在の光ディスクの流れが、「青紫色レーザー」の登場によって少なくとも「波長」という点では、ひと段落することが見えているからだ。

 確かに、光ディスクは、さらに波長が短い波長300ナノメートル台の紫外レーザーを使用することによって、“理論上”は、大容量化を実現することが可能だ。

 しかし、現在のCDやDVD、さらには次世代光ディスク規格でも採用されている基板の材料「ポリカーボネート」は、300ナノメートル台に入ると光を急激に吸収するようになり、光が“抜けない”という問題点があることが分かっている。光の集約に使用する対物レンズも同様。しかも、現在の方式のまま、波長を短くするだけでは、増やせる記録容量もあらかじめ想像がつく範囲のもので、飛躍的な記録容量の増加にはつながらない。

 このため、青紫色レーザーのさらにその次は、現在も各社でさまざまな研究開発が行われている。追記型ディスクで1テラバイト(TB)の容量の実現を目指す「ホログラフィック記録再生技術」などは、その1つだ。

 「(波長を短くし記録容量を増やす)現行の流れでは、(青紫色レーザーの先は)やらないほうがよい。やるんだったら、それよりガーっと飛んでしまったほうが技術的には面白い。そういう意味では、青はこれから5年10年……。意外ともつかもしれない」。

 だから、青の時代では、“コンセプト”のしっかりしたもの作るべきだと福地氏は言う。

 「ROM(再生専用ディスク)やRAM(書き換え型ディスク)、R(追記型ディスク)といったものは、1つのコンセプトの中で作り上げるべき。そうしないと、5年10年としっかりもつものはできません」(福地氏)。

0.65と0.85、両方の研究を行っていたNEC

 「NECでは、相当前から対物レンズの開口数(NA)が0.65と0.85の2つのテクノロジーを追いかけていました」。

[北川達也, ITmedia]

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