News 2003年1月14日 02:39 AM 更新

CESレポート
Blu-ray試作機が一斉展示。MPEG-4/AVCプレーヤーも話題に

Blu-ray陣営が試作機を一斉に展示。いずれもすぐにでも出せそうな完成度の高さだった。また、東芝、パイオニアなどがMPEG-4/AVCプレーヤーを出展している

 Interenational CES 2003では、Blu-rayに参画する各社が、一斉に試作機を展示。HDTV向けDVDとして注目を集めた昨年から比べると、それはごく当たり前の存在としてとらえられているようだ。実際、Blu-ray陣営のベンダーは、あくまでも試作展示の域を出ないとしながらも、"いつでも出せる”という雰囲気がある。早期製品化を目指してDVD Forumに縛られない企業連合を立ち上げただけのことはある、といったところだろうか。


Blue-Ray陣営の展示は総じて完成度が高い。サムスンのBD-1000は今にも発売できそうに見えるほど


松下もBlue-Rayプレーヤーを試作展示


パイオニアのBlue-rayプレーヤー。昨年展示していた青色レーザー機と同じデザインのままだった

 ソニー社長の安藤国威氏は基調講演後の質疑応答の中で、Blu-rayの製品化時期について問われ、「すでに技術面での話ではなくなっている。ハリウッドとの協力や高品質映像の再生環境など、ビジネス面での環境が整った時に出荷することになるだろう」と話した。安藤氏によると、ハリウッドは現在、DVDビジネスに熱心でHD化への興味は薄いと言う。製品ローンチのタイミングは、2005年程度との見通しを示し、おそらく日本が最初に出荷する市場になると話した(関連記事:普及が「2005年以降」になる理由

 一方、東芝では、ITU-T H.264準拠のMPEG-4/AVCで1080pのHD映像を圧縮したものを既存のDVDに記録するHD-DVD規格に対応するDVDプレーヤー「HD-DVD9」を、青色レーザー採用のAODを用いたHDTV録画/再生機と並べて展示した。HD-DVDであれば、青色レーザーに移行する前に、圧縮フォーマットを変更した新しいDVD-Videoのアプリケーションフォーマットを定義することでHD化を行える。


東芝が展示したHD-DVD9。MPEG4を用いて記録されたHDTV映像を再生できる

 同様のアプローチはパイオニアブースでも見られた。パイオニアはSDTV用のMPEG-4エンコーダチップを4つ用い、1080pの映像を4分割して4つの動画ストリームに分割。1つのストリームにマルチプレクシングした後、従来のDVD-RWに記録/再生するというDVDレコーダだ。既存のMPEG-4エンコーダチップが利用できるのが長所と言えるが、映像フォーマットは全く独自であり、製品化も予定していない。パイオニアによると、あくまでもMPEG-4の可能性を示すもので、将来的には1本の動画ストリームでHD映像を扱えるようにする予定という。


パイオニアが試作したHD映像をMPEG4で記録するDVD-RWレコーダ

 話を東芝のHD-DVD9に戻そう。H.264を用いた新しいDVDアプリケーションフォーマットは、DVD Forumで審議するのと並行してハリウッドとの交渉を進め、マトリックスなど一部のソフトが発売に向けてゴーサインが出たという噂があった。しかし、DVD Forumでの審議が難航しそうな見通しで、年内の製品化は非常に難しくなった(絶望的との観測も強い)という。

 まずは赤色レーザーのままソフトとプレーヤーをMPEG-4でHD化し、付加価値の高いレコーダは青色レーザーでカバーするというやり方は、半導体デバイスであるMPEG-4エンコーダチップの高性能化/低価格化によってプレーヤー側を対応できるという意味において、合理的な戦略と言えるかもしれない。半導体技術が進化すれば、それに伴って低価格なDVDプレーヤーでもHD再生を行えるようになるからだ。

 米国ではケーブルテレビのデジタル化により、今後、高精細のデジタルTVが急速に普及すると言われている。米国でのテレビはこれまで、DVDの普及とともに大画面への要求が高まっていたが、高精細化に関しては全く進んでいなかった。しかし、デジタルCATVで家庭のテレビがHDTVへと移行していけば、低価格のHDビデオプレーヤーが望まれるようになる。

 もっとも、まずは青色レーザーで高密度記録に移行してから、圧縮方式の改善を行うべきという意見もあり、HD-DVDの将来に向けての道筋ははっきりとしていない。



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▼ どうなる次世代光ディスク 最終回:普及が「2005年以降」になる理由
順調に行けば、来年中には次世代光ディスクの製品出荷が始まる。キーパーツとなる青紫色レーザーの開発も、急ピッチで進行中だ。しかし、次世代光ディスクの普及には、しばらく時間がかかりそうというのが、業界関係者の偽らざる認識だ


関連リンク
▼ 特集:2003 International CES

[本田雅一, ITmedia]

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