News 2003年1月22日 09:58 PM 更新

エンターテインメントコンピューティングの技術課題

研究とビジネス。2つのエンターテインメントは時に交差し、時にすれ違った

 最後のセッションでは、筑波大学の星野准一氏(ec2003プログラム委員長)が司会をして、全体的なまとめの討論が行われた。

 レポートを通してみていただければわかるように、産学のうち学のほうはマクロな話題や基礎的なデバイスなどの研究が中心であり、一方、産業界のほうは個々のゲームのミクロな部分が中心。方向性としては、180度逆を向いている感じであった。

 しかし、2日目以降のセッションを見ていると、次第に両者に接点はありそうな感じがしてきたのもたしかなところだ。

 「アメリカではゲーム学会/学部が設立されている。現在のゲーム業界は、1960年代の映画学会/学部の設立と同じシチュエーションにある。日本はアメリカから2年遅れくらいで進むので、これからゲーム学会は盛り上がっていくだろう。世界的にシンクロニシティ状態でできている。1日目のセッションでは、ゲームとアカデミックは交わらないと悲観的になっていたが、2日目のセッションを聞くと、ゲーム業界が気になるような切り口、枠組みを作っていくのがよいだろうと考えるようになった」とIGDA東京 チャプターコーディネイターの新清士氏。

 「聞く立場だと、単なる情報収集になってしまうのだが、今後とも発表して参加していきたい」(ソニー)。

 「SmartSkinはずば抜けておもしろかった。自分で楽しめるものを作っていくのが大切で、そういう意味では、自分の居場所もあるのかな」(博報堂青木生氏)

 「ゲーム業界、レコード業界、アニメーション業界など、いろいろなエンターテインメント業界があるが、アカデミックに関する反応は冷たい。研究とのコーポレーションはなかなか難しいのではないかとは感じた。しかし、だからこそ、われわれが、新しい力を注いでいけるのではないか」と大阪大学の塚本助教授はまとめを行った。

 実際、今回のエンターテインメントコンピューティングでも、アニメーション制作会社などから、「うちは研究とは無関係」というような回答があったのだ、と、裏の事情を語ってくれた。

 研究者にとって「面白い」とビジネスにとっての「面白い」は質が違うが、そのあいだをどうつなぐかということが大切だ。

 ちなみに、来年はアニメーション、音楽などのジャンルにも参加者を増やしていくという。「今後、このコミュニティを盛り上げていきたい」と、塚本助教授はエンターテインメントコンピューティングを締めくくった。

 全体的に、人間の身体運動をうまくゲーム内に活かしたり、人間の顔自体を取り入れたアバターなどが容易にできるようになって、これからのエンターテインメントは、ますますコンピュータの技術を無視できないようになっていくだろう。音楽、アニメーションなどの異業種間で交流が深まっていけば、これまでにはなかったような新しいエンターテインメントが生まれてくる可能性もある。

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[美崎薫, ITmedia]

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