News 2003年1月23日 04:55 PM 更新

SmartSkin――人体形状センサーをエンターテインメントに応用する

人体の位置・形状を認識できるデバイス「SmartSkin」。そのゲームなどへの応用がこれから進みそうだ

 ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一氏と東京工業大学の福地健太郎氏による共同研究が、タッチセンサー風の「SmartSkin」を応用したゲームのプロトタイプであった。

 このSmartSkinは、格子状の導電物体(つまり人体)の位置/形状を認識できるデバイス。単なるタッチセンサーではタッチしている位置だけしかとることができないが、SmartSkinでは、手の形を認識できる。

 一般にゲームというのは、身体性が高くなるほど面白くなっていくものだ。指先だけを動かすゲームよりも、腕全体、足でリズムをとるゲームと、動かす部分が増えるほど、面白くなっていく。

 アーケードゲームでは、身体性の高いゲームが次々と開発されている。ところが、家庭用のジョイスティックやマウスなどでは、動かせる範囲がきわめて限られている。

 そこで、SmartSkinを応用して福地氏らは、もっと身体性の高いゲーム「Marble Market」を考え試作した。「Marble Market」は、ビー玉風の球(マーブル)がテーブルの中央から無数にあふれてきて、自分の陣地にかき集めれば勝ち、というゲームだ。マーブルには、黄色や緑や青の得点になるマーブルと、赤くて減点になるマーブルがある。減点になるマーブルは、相手の陣地に押し込んだ方がよい。


「Marble Market」をプレイしている様子

 テーブルは平面ではなく、手の位置を中心に仮想的な曲面をなしていて、手を近づけるとそこが仮想的に盛り上がるので、マーブルは転がっていくように手から離れていく。


「Marble Market」のプレイテーブルは平面ではなく、手を近づけると仮想的に面が高くなる。これによって、マーブルが、手から逃げていくというのがハプニング的でゲーム性を向上させる

 実際にプレイしてみると、プレイヤーは、両腕を使ってマーブルをかき集めたりと、さまざまなテクニックを駆使して楽しむようになるという。盛り上がると、テーブル面でプレイヤー同志の腕がぶつかり合い、実力行使で相手を邪魔するようになる。あたかも、スポーツをしているような感覚のプレイ感を実現できる。


SmartSkinは、複数点の入力が可能になるため、従来は考えにくかったゲームなどの応用が広がる可能性をもつ。デバイスの価格も安価だという

 デバイスとしてのSmartSkinの完成度は高く、PS/2のソニーコンピュータエンタテインメントの榎本繁氏、津田宗孝氏らによって、「Page Turning」、「Jelly Man」、「Letter Typing」などがデモンストレーションされていた。


「Jelly Man」のデモ


SmartSkinを試すソニーコンピュータエンタテインメントの津田宗孝氏

 これらは、両手のひらを使って画面に触るようにして入力が可能になる仕組みであり、きわめて直感的な使い勝手を実現できる。しかも、SmartSkin自体のデバイス価格は、すでに、数千円程度まで低くできていて、すぐに実用化できるほどの状態にあるという。

 基礎技術でありながら、実用性も高いという点で、今回のエンターテインメントコンピューティングの発表のなかでも、白眉と言ってよいだろう。

EffecTV: メガデモ技術のリアルタイムビデオイフェクトへの応用

 続いて、またまた東京工業大学の福地健太郎氏が発表したのが、リアルタイムに映像にエフェクトを追加することができる映像技術の発表だった。


東京工業大学の福地健太郎氏。個人的には今回のエンターテインメントコンピューティング2003のMVPは福地氏だと思った

 最近のテレビ映像では、映像自体が水面のように揺らいだり、ありもしないところで炎が燃え上がったりするような効果がしばしば使用されている。こうした映像は高価な専用機でなければできないと考えがちだが、案外簡単にできちゃうよ、というのが、このEffecTVなのだった。

 EffecTVは、家庭用コンピュータ向けのシステムで、320×240/30フレームの動画に対して、リアルタイムでエフェクトを追加することができる。効果も、色変換、残像、フェードイン/アウトなどさまざまで、その場で楽しむことができる。ゆがんだ鏡の前で子どもが自分の身体を動かして遊ぶように、EffecTVの前で身体を動かして遊ぶのは、なかなか楽しかった。

 しかも、このEffecTVは、PentiumIII+USBカメラ程度の貧弱な環境であっても動作する。また、現在はLinuxのオープンソースモデルで開発を進めているという点でも、注目されている。すでに世界中からいろいろなイフェクトが追加されるようになっており、「開発者の手を離れて動き始めている」と福地氏。

 EffecTVシステム全体は、仮想的なビデオ入力デバイスとして振舞うために、他のアプリケーションとの連携が容易であるという。移植も進んでいて、PlayStation2Linuxのほか、GStreamer、Pure-Deta、jMaxなどにも移植。FreeFrameを使ったWindows版がそろそろ公開になるという。

PCと携帯電話を用いた写真ベースの観光・施設案内

 東京大学空間情報科学研究センターの田中浩也氏とインターネット・ジーアイエスらは、エンターテインメントを意識した空間ナビゲーションを実装したと発表した。

 携帯電話の普及で、これまで使われてきたカーナビから、人間が歩いている範囲で使われるヒューマンナビが重視されるようになる。

 そこで、歩きながら使えるようなナビゲーションを作るシステムが紹介された。このヒューマンナビでは、キャラクターを重視して、まるでキャラクターが先導するかのように画面上で行き先を案内してくれるようになっている。ヒューマンナビはすでに実用化されいてるものも少なくないが、地図ベースのものよりも、今回のような写真ベースのもののほうが、今後増えていくのかもしれない。


作成した写真はキャラクターのナビつきで、携帯電話で見ることができる。

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[美崎薫, ITmedia]

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