News 2003年2月18日 02:14 PM 更新

Media Center PCの対日戦略――マイクロソフトに聞く

第3四半期には新版がリリースされるというWindows PC Media Center Edition(MCE)。その対日戦略はどうなっているのか、日本法人でMCEを担当している御代茂樹氏に話を聞いた

 早くも今夏に次バージョンがリリースされるというWindows PC Media Center Edition。だが、日本における製品投入などは、今ひとつ明らかになっていない部分が多い。日本法人がどう考えているのか。マイクロソフト日本法人でMedia Center Edition(以下MCE)を担当しているニューメディア&デジタルデバイス本部マーケティング部の御代茂樹部長に、日本でのスケジュールや今後のeHOME戦略に関して話を聞いた(聞き手:山本雅史)。

ZDNet:日本でのMedia Center Editionのスケジュールはどうなっているのでしょう?

御代氏: 昨年、HPが米国でリリースしたMCEは、よく売れているとの評価をいただいています。HP以外の大手パソコンメーカーでも、Media Centerをリリースしようという動きもあるようです。ただ、日本では、1バージョンスキップして、リリースすることにしています。

 これは、米国と同じスケジュールでは、準備が間に合わなかったということもありますが、最初のリリース時点では日本国内の環境(電子番組表:EPGなど)がきちんとサポートされていなかったりしていたためです。

 まあ、一度リリースされれば、いろいろなところに問題点や修整点が見つかるものです。日本でリリースするときは、これらを修整した上でリリースしたいと考えています。

ZDNet:日本でのリリースは年内ですか?

御代氏:スケジュールに関しては、まだ決まっていません。

(編集部注:2月中旬にMCEの次バージョンに関するベータテスターの募集が始まった。次バージョンのリリースは、夏から秋にかけてと予想される(2月14日の記事)。日本では、年末商戦に間に合うよう、搭載製品がリリースされるというスケジュールが最有力だ)

ZDNet:米国でのMCEの実際のユーザーは、どういう層だったんですか?

御代氏:当初は、MCEの紹介ビデオにあるように、ハイテク好きな独身男性をターゲットと考えていました。しかし、米国ではファミリーなど幅広い層に受けているようです(1月21日の記事)。これは、MCEの価格の高さもあるでしょうが、高所得のファミリー層で、PDPやプロジェクタなどの大型モニタが購入されるにつれ、MCEのメリットが理解されてきているのでしょう。

 単に、大型モニタに接続できるPCということでは、ホームシアターPC(HTPC)がありましたが、MCEはHTPCでは実現できなった新しいユーザーインタフェースが評価されたのでしょう。機能としては、HDレコーディングなど、HTPCなどとあまり変わりませんが、リモコンで大型のアイコンを操作するといったユーザーインタフェースは、今までなかったものです。

ZDNet:MCEはPCなんですか? それともデジタル家電?

御代氏:MCEがPCとデジタル家電のどちらなのかという捉え方は、ちょっと違うと思います。大型モニタによってサポートされる新しいデバイスと考えてほしいですね。

 PCほどパーソナルではなく(リビングの中心で複数の人と一緒に使う)、きちんとしたインタラクティブ性を持ったものです。大型モニタから考えれば、VTRやDVDなどのデバイスと同じく、MCEというデバイスが増えたということになるでしょう。

ZDNet:MCEは、VTRやDVDデッキ、HDレコーダーなどの家電機器を置き換えていくものなのですか?

御代氏:そのようなことは考えていません。確かに、MCEは、HDレコーダーやTVチューナー、CDプレーヤー、DVDプレーヤーなどの機能は持っていますが、現在のAV機器を置き換えるものではありません。

 10年、20年先はどうなるか判りませんが、現状ではAV機器とPCとをブリッジさせるための第一歩になる製品だと思っています。PCがAV機器の機能をすべて取り込んで、PC1台あればすべてサポートしているといったものにはならないでしょう。

Microsoftでは、MCEの他に、家庭用のホームサーバの開発も進めており、これには、WindowsXPのテクノロジーがベースとして使われています。ある意味、WinodwsXP上にあるさまざまな機能を使いやすいように切り出して、MCEやホームサーバーを作っていくことになるでしょう。

ZDNet:Windowsは、今後MCEなどのように、さまざまなエディションを作っていくのですか?

御代氏:多分そうなると思います。

 ベースとしては、PCのWindowsというプラットフォームを利用し、そこに用途別にアプリケーションを入れ、用途別のエディションを作っていく予定です。

 Windowsというすばらしいプラットフォームがせっかくあるのです。AVサーバやホームサーバが必要だからといって、イチから新しいOS、新しいアプリケーションを開発する必要はないでしょう。必要な機能を抜き出してくだけで、家庭の中で利用できる製品を作ることができるのです。今あるPCのテクノロジーをうまく利用していくことが大事なのではないでしょうか。

ZDNet:MCEは、BSデジタルや今年の末に始まる地上波デジタル放送などに対応するのですか?

御代氏:おそらく最初の製品はそのレベルまではまだいかないでしょう。まずは、現状の地上波に対応した製品を出すことになると思います。

 BSデジタルは、チューナーモジュールなどが出ているので、メーカーによっては対応していくでしょう。しかし、ハイビジョンのHDレコーディングになると、すぐにHDを消費してしまいます。

また、本当にハイビジョンクオリティのHDレコーディングがいいのかどうかということもあります。音楽業界では、PCは目の敵にされていますからね。

 だからこそ、“地上波TVのHD録画をPCで行う”というあたりから、コンセンサスを作って行き、ハイビジョンの録画へと進めていければと考えています。やはり、PC業界だけでなく、放送業界などの他の分野ときちんとしたコンセンサスを作っていかないとだめでしょう。

今後5年ほどが非常にエキサイティングな時代になると思っています。CPUやグラフィックスカードの性能がアップし、PDPやLCDといった薄型・大画面のモニタが一般に普及することで、PCにとっては新しいマーケットができてくるからです。



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[山本雅史, ITmedia]

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