News | 2003年2月24日 09:27 PM 更新 |
「2003 International CES」で登場した新メモリースティック。ギガバイト超の大容量化や、動画が扱える高速データ転送を可能にしたメモリースティックPROに注目が集まっているが、同時に発表された「メモリースティック(メモリーセレクト機能付き)」も、従来製品との互換性を維持しながら“大容量化”というニーズに応えた新コンセプト商品だ。
新メモリースティックに搭載された“メモリーセレクト機能”は、128Mバイト以下のフラッシュメモリを複数枚搭載し、外部切り替えスイッチによって使用するメモリを選択することで、互換性を保持しながら、従来のメモリースティックの容量上限だった128Mバイトを超える大容量化を可能にしている。
「メモリーセレクト機能は、プレイステーションなどゲーム機用としてサードパーティなどから販売されている切り替え式メモリカードと同じシステム」と、メモリースティック事業センタープロモーション企画グループ担当部長の佐藤亮治氏は、その仕組みについて説明する。
動画を扱える次世代メディアとしてデビューしたメモリースティックPROは、ピン形状やサイズは従来型メモリースティックと同じながら、従来のメモリースティック対応機器では利用できなかったり、容量128Mバイトまでしか使えなかったりと、互換性の点で難があった。一方、市場では高画素化でファイルサイズが大きくなっているデジタルカメラの記録用として、単純に“128Mバイト以上の大容量メディア”が欲しいという声も多い。
「小型メモリに求められる進化は、高容量化など今のアプリケーションに対してのものと、動画対応といった次世代製品のためのものとで進化が必ずしも一致しない。これを一緒に考えてしまうと、今のハードではオーバースペックでコストパフォーマンスが悪かったり、互換性確保を追求するあまり性能に影響したりする」(佐藤氏)。
佐藤氏によると、メモリースティックをどのように進化させていくかについては、1年以上も同社内で議論したという。「その答えが、2種類のメモリースティックをリリースするというカタチになった」(佐藤氏)。
ライバルのSDメモリーカードやコンパクトフラッシュなどは、すでに128Mバイト以上のメディアを発売しており、ギガバイトクラスの大容量化へのロードマップも示している。一方、メモリーセレクト機能付きメモリースティックは、3月21日の発売時に128Mバイトのメモリを2枚使った256Mバイト版が用意され、128Mバイトのメモリを4枚使った512Mバイトという高容量タイプも開発表明された。
「メモリは4枚以上も内蔵可能。ユーザーの使い勝手は別として、スイッチを5個、10個、20個と増やしていけば、ギガバイトクラスも技術的には十分実現できる。メモリースティックの大きさに入るかどうかは、フラッシュメモリの積層技術の進歩しだい。つまり、メモリを機械的に切り替えるセレクトの方法ならば、理論的には容量上限はなくなる」(佐藤氏)。
ギガバイトクラスの“大部屋”よりも便利な“切り替え式の引き出し”
ただし、小さなスイッチを10個以上も搭載して切り替えるというのは、決してユーザーフレンドリーとはいい難い。「使い勝手を考えたら、8個以内というのが現実的なところ」(佐藤氏)。
だが佐藤氏は、“使いやすさ”という視点からギガバイト超の小型メモリカードに対して疑問を投げかける。
「デジカメの高画素化で大容量のニーズは高いが、撮影したJPEG画像は、大きくても1枚2Mバイト前後。これまでの容量上限だった128Mバイトでも、60枚前後は撮れる。WordやExcelのファイルなら、1つ数百Kバイトぐらいが多く、PowerPointでも数M−10数Mバイト程度。これらのファイルを収納するのに、1G−2Gバイトのようなやたらに“大きな部屋”があると、非常に使いづらいものとなる」(佐藤氏)。
つまり、128Mバイト程度の“引き出し”を複数持ち、切り替えて使い分けられるメモリーセレクトの方が、ユーザーにとってはより使いやすいというわけだ。
「セレクトなら、Aには仕事の出張記録、Bにはプライベートな旅行写真といった分け方ができ、TVで再生したりプリンタで印刷するといたダイレクトな操作時も、切り替え1つで行える。128Mバイトぐらいあれば、銀塩フィルム2−3本分あるので、管理もしやすい」(佐藤氏)。
発表された容量タイプは、128Mバイトのメモリ2個で256Mバイトとしているが、搭載メモリは必ずしも同容量である必要はない。「例えば、128Mバイトと16Mバイトといったパターンもあり。画像ファイルなどデジタルカメラ用には大容量側に、テキストデータなどは小容量側にといった使い分けもできる」(佐藤氏)。
小型メモリカード誕生時にMicrosoftが規定したフラッシュメモリの仕様が、128Mバイトという容量上限をメモリースティックに与えた。だが同社は、スイッチによってメモリを切り替えて使うという“逆転の発想”で、大容量化の壁を克服しただけでなく、“使いやすさ”という付加価値も生み出した。
「メモリーセレクトのコンセプトは、メモリースティックPROにも応用できる。そのため、PROのような新メディアとしてではなく“機能名”にした。既存のアプリケーションなら、このソリューションで十分対応できる。逆に、切り替え式で引き出しの数を増やすカタチの方が、付加価値も生まれるしユーザーにとっても使いやすい」(佐藤氏)。
[西坂真人, ITmedia]
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