News 2003年3月6日 08:06 PM 更新

スクリーンのほぼ真下に設置可能なプロジェクタ――NECビューテク

NECビューテクノロジーが、スクリーンまでの投写距離を大幅に短縮したDLPプロジェクタ「WT-600」を発表。複数の非球面ミラーを組み合わせて投写する「ミラー投写方式」で、60型スクリーンへの投写距離はわずか25センチあればよい

 NECビューテクノロジーは3月6日、スクリーンまでの投写距離を大幅に短縮したDLPプロジェクタ「WT-600」を開発したと発表した。従来の投写レンズを使用せず、複数の非球面ミラーを組み合わせて投写する「ミラー投写方式」を採用。「60インチスクリーンへの投写距離は、世界最短の25センチ。本体サイズを含めても、スクリーンのほぼ真下といっていい約60センチの奥行きで設置できる」(同社)。7月中旬から発売し、価格は80万円。


ミラー投写方式を採用したDLPプロジェクタ「WT-600」

 スクリーンに向かって前方から投写するフロントプロジェクタは、スクリーンサイズを大きくする際にどうしてもある程度の投写距離が必要だった。「短焦点レンズを売りにしている製品でも、60インチで1.5メートル前後、100インチでは2−3メートルは投写距離を確保しなければならなかった」(同社)。

 投写レンズ方式で投写距離を短く(短焦点化)するためには、多群レンズの一番前のレンズを大口径化し、さらにレンズ曲率が大きい(厚い)ものを使用しなければならない。大きくて分厚いレンズを搭載すれば、当然本体が重くなる。これはモバイルプロジェクタにとって致命的だ。

 同社が新開発した「ミラー投写方式」は、4枚の非球面ミラーで光線を次々と反射させて拡大投影を行う。4枚目の凹鏡が曲率の大きい大口径レンズの役割を果たすことで、60インチスクリーンでも投写距離はわずか25センチという超短焦点投写が可能になったわけだ。


投写距離が短いため、狭い会議室にも設置可能

 「台形補正も光学系だけで行っており、画質が劣化するデジタル処理は使っていない。ミラー成形技術では富士写真光機の協力を得たが、非球面ミラーを組み合わせたトータルの光学設計は当社独自のもの」(同社)。


ミラー投写方式の仕組み

 表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)素子を使ったDLP(Digital Light Processing)方式を採用。DMDは非球面ミラーの1枚目と2枚目の間に設置されている。3枚目の非球面ミラーが移動することでフォーカスを合わせる仕組み。スクリーンサイズは40インチから100インチまで対応し、40インチではわずか6センチの投写距離があればよい。

 WT-600のスクリーンサイズごとの投写距離は以下の通り。

スクリーンサイズ(縦×横メートル)投写距離
40インチ(0.6×0.8)6センチ
60インチ(0.9×1.2)25センチ
80インチ(1.2×1.6)45センチ
100インチ(1.5×2)65センチ


発表会のプレゼンテーションでも新製品を使用。100インチスクリーンのすぐ下にWT600が設置されているので、プレゼンテーターが画面の前に立っても映像がさえぎられることはない

 プロジェクタとしての基本性能は、パネル解像度がXGA(1024×768ピクセル)で、最大UXGA(1600×1200ピクセル)の表示をサポート。明るさは1200ANSIルーメンで、コントラスト比は2500対1となる。「レンズを使用していないので色収差も少なく、コントラスト比が高いことで黒がくっきりと表示できる」(同社)。

 少々気になるのは、1200ANSIルーメンという明るさ。同クラスのプロジェクタが2000ANSIルーメン以上なのに対して、一見すると数値上では見劣りする。だがこれは、従来の明るさの測定方法がミラー投写という新方式を考慮したものではないために低い数値が出てしまっているのだ。

 「従来のANSIルーメンの測定は、レンズに対して測定器を平行に当てて行う。この方法で斜め上に光を投写するWT600を測定すると、光のロスが大きい。だが実際には、1200ANSIルーメン以上の明るさがスクリーン上で確保されている」(同社)。    また、本体側面に装備されたPCカードスロットを経由して有線/無線LANに対応。無線LANカードを使えば、PCからケーブルレスで映像表示が行える。本体サイズは、390(幅)×313(奥行き)×313(高さ)ミリで、重さは約5.9キロ。4枚目のミラーは可倒式で本体に収納できる。


4枚目のミラーは可倒式で本体に収納

 「この方式はホームシアターにも有効。レンズ投写方式の場合、日本の狭い家屋では設置場所に困るが、WT600なら壁のすぐ近くに置いてオーディオと一体のシステム作りも可能。普及が進めば、低価格なホームシアター向けも検討したい」(同社)。


会場では、WT600で動画を再生してホームシアターを想定したデモンストレーションも行われた

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[西坂真人, ITmedia]

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