News 2003年3月11日 07:47 PM 更新

粗悪な記録型DVDメディアが、なぜ“怖い”のか(2/2)


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 DVD-RAMメディアには、メディアに欠陥があったとき、交替処理を行うという機能がある。これは、メディアに多少の欠陥セクタが存在した場合、エラーがあるセクタを、交替領域にある正常なセクタと交替させるというものだ。つまり、物理的にエラーが存在していた場合でも、ユーザーが使用する領域(論理エリア)には、見かけ上、エラーが存在しなくなるのである。

 これはDVD-RAMの最大のメリットであり、DVD-RAMが信頼性の高いメディアとして、業務用のアーカイブストレージで広く普及している理由でもある。

 ところが、“粗悪なDVD-RAMメディアでは、この機能を悪用。粗悪なDVD-RAMを製造しているメーカーは、あらかじめこの機能をアテにしてメディアの製造しているのだ。低品質を指摘されても、彼らから言わせると、「DVD-RAMは、交替処理があるからこれでいいんだ。何の問題もない」となる。悪用ではなく、“有効利用”といった感覚なのだろうか。

 だが、これは、ドライブを設計しているメーカー側から見ると困った話。というのも、いくらDVD-RAMといえども交替領域を無限に確保しているわけではないからだ。その領域は100Mバイト強ほど。この領域をすべて使い果たすと、当然、欠陥セクタとしてマークされ、メディアの記録容量が減っていくことになる。

 PC用データだけを記録しているのであれば、確かに記録容量は減るが、さほど大きな問題は発生しない。こういった使用方法もありかと、妙に納得させられるぐらいだ。だが、こういった粗悪メディアは、民生用のDVD-RAM/Rレコーダでは問題が発生しかねない。

 というのも、DVD-RAM/Rレコーダでは、映像をリアルタイムで記録するために「AVライト」と呼ばれている特別な記録方法が使用されているからだ。AVライトは、DVD-RAMにおける記録後のベリファイ処理をスキップし、高速にデータの記録を行うというもので、記録中に欠陥セクタらしきものを発見したとき、最悪のケースではそのセクタすべてを「スキップ」し、次のセクタに記録するという手法を採る。これは、そういった領域(欠陥と思われるセクタ)に映像を記録し、ブロックノイズなどが発生することを抑えるために考えられた機能である。

 しかし、こういったことが頻繁に発生すると、記録容量は単純に減っていってしまう。結果として、粗悪なDVD-RAMメディアをAV記録用に使用すると、アテにしていた記録容量がなくなってしまう、ということさえ起こりうるのである。実際、あるドライブメーカーでは、「DVD-RAMでは、交替処理をあてにしてメディアを製造するところがあって困るんですよ。本来、そんなことをしたらいけないはずなんですが……」と嘆いていた。

CD感覚で作るから品質が悪い

 安いのは大歓迎。だが品質が悪いのは困る。ではなぜ粗悪なメディアが生まれるのか、あるメディアメーカーの技術者は、「台湾メーカーの多くは、CD-Rの感覚でメディアを製造するから品質が悪いんです」と指摘する。

 記録型DVD用のメディアの製造工程は、CD-Rの製造工程とそう大きくは変わらないが、難易度はより高い(DVD-Rの製造工程については、この記事参照)。

 特に難しいと言われているのは、基板の成型と、作成した基板を張り合わせる2つの工程だ。まず、基板の成型工程には、記録層をもつ基板の作成と張り合わせに使用するダミー基板の作成の2つがある。いずれも反りがない基板を製造しないと、張り合わせたときにメディアが反ってしまい、粗悪なメディアが製造されてしまうことになる。

 特に基板を成型するときの「時間」は重要なポイントだ。これをあまりに短くすると反りのあるメディアが作成できてしまう。

 だが、メディアを安価にするためのポイントもメディアの成型時間の短縮にある。というのも、基板の成型にかかる時間を短縮すれば、1ラインで製造できるメディアの量を物理的に増やすことができるからだ。大量生産によって価格を落とすメディアの製造上、これは欠かせないことだ。メディアメーカーでは、いかに製造時間を短縮し、1ラインで製造できるメディアの量を増やしながら、品質を維持するかということがノウハウの1つになる。

 安価な台湾メーカー製のメディアの品質が悪いのは、まさにこの部分でのノウハウが足りないからだ。CD-Rを製造しているのと同じ感覚でやってしまえば、簡単に粗悪メディアが製造される。まさに上記の技術者が指摘した点である。

 また、CD-Rにはなかった張り合わせ工程でも品質差が生じる。国内メーカーは、この点でもかなりのノウハウを蓄積しており、メディアを垂直に落下させても基板が割れてしまうといったことはほとんど起こらない。しかし、台湾メディアでは、何度も繰り返すと往々にして簡単に割れてしまう。張り合わせ工程をうまく行えないと、メディアの反りの原因にもなる。

メディアの使い分けを

 とはいえ、記録型DVDメディアの低価格化は、今後、より一層進むだろう。そうすると、おそらくさらなる製造時間の短縮をせざる得ない。その結果、さらに粗悪なメディアが出回ってくる可能性もある。

 繰り返すが、安価なメディアは、機器の普及には欠かせないものだ。筆者はこれを否定する気は毛頭ない。だが、あまりに粗悪なメディアにデータを記録するのは、やはり注意が必要。メディアを購入するときは、そういった点に注意し、重要なデータは、品質が安定している国産メディア、ホビー用やテスト用には安価なメディアといった使い分けをお勧めしたい。



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[北川達也, ITmedia]

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