News 2003年3月18日 08:20 PM 更新

2万円を切るDVDレコーダも可能に――日本TI、新バックエンドプロセッサを発表

日本テキサス・インスツルメンツがDVD/HDDビデオレコーダ向けバックエンドプロセッサを発表。各種コーデック機能の1チップ化で、高機能DVD/HDDビデオレコーダのローコスト化を可能にした

 日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は3月18日、映像/音声の圧縮・伸張(コーデック)機能を1チップに装備したDVD/HDDビデオレコーダ向けバックエンドプロセッサ「TMS320DVD20」を発表した。「録画や再生、さらに同時録画再生などが行える高機能DVD/HDDビデオレコーダのローコスト化が可能になる」(同社)。コンシューマーエレクトロニクス向け製品担当で、日本にヘッドクォーターを置く同社DCES(デジタル・コンシューマ・エレクトロニクス・ソリューションズ)カンパニーが開発した。


DVDレコーダ向けバックエンドプロセッサ「TMS320DVD20」

 TMS320DVD20は、DVD/HDDビデオレコーダのコーデック処理を行うバックエンドで必要となるDSP、32ビットRISCプロセッサ、ビデオ・コーデック(MPEG-1、MPEG-2、DV)、ストリーム・コントローラ、OSD(on-screen display)用グラフィックエンジンといった各チップを集積した1チップソリューション。DSPには160MHz動作のTI製「TMS320C55x」を、ホスト機能や各種制御を行う32ビットRISCプロセッサには108MHzのARM9E-Sを使っている。0.13μメートル6層銅配線という最新の製造プロセスを採用した。

 同社DCESカンパニーDVD事業部デジタルAVバックエンド製品部部長の金井広太郎氏は「各社のDVDビデオエンコーダなどバックエンド製品を見ても、1チップ化した量産品はない。ほとんどはMPEG-2のエンコーダとデコーダで2チップに分かれ、メーカーによってはストリーミングコントローラやグラフィックエンジンなども別のチップで用意している。これらを1チップ化することで、処理を高速化できる。記録や再生のリアルタイム処理も可能」と新製品の特徴を述べる。

 またこれまでは、MPEGエンコーダ/デコーダなど各チップごとにそれぞれ外付けSDRAMが必要だったが、1個の外付けSDRAMに統合でき、システム全体の大幅なコストダウンも可能となった。同社の試算では、従来比3−5割のコストダウンにつながるという。

 「近年、低価格のDVDレコーダが台頭し、VTRからの置き換えが加速している。現在、松下の一番安いDVDレコーダが400ドル程度だが、そのうち200ドルを切るDVDレコーダが出てくるのは間違いない。当社の1チップソリューションを使えば、150ドル(約1万8000円)のDVDレコーダも可能になる」(同社執行役員DCESカンパニープレジデントの岡野明一氏)。

可変速再生を美しくする新技術「@YourPace(アットユアペース)」

 新チップは「速い・安い」だけではない。

 TMS320DVD20には、TIが独自に開発したビデオ再生の新技術「@YourPace(アットユアペース)」が搭載されている。これは、倍速再生やスローといった可変速再生時の映像を、等倍速と同じ再生クオリティにする技術だ。

 「この新技術によって、通常(等倍速)再生時の画質と音質を保ちながら、自分の好みのスピードで再生を楽しめるようになる。例えば1週間分録りだめしたドラマを見る場合に、2倍速で再生しても俳優のセリフが不自然にならず、コマ落ちのないキレイな映像で楽しめる。また、英語のニュース番組をスロー再生し、自分が聞き取れるスピードで英語放送を楽しむといった使い方も可能。これらの機能は単に再生時だけでなく、同時録画再生時(裏番組録画中)や追っかけ再生時(同一番組を録画中)でも利用可能」(金井氏)。


発表会場では、TMS320DVD20を組み込んだDVD/HDDビデオレコーダ試作機で「@YourPace」技術を披露


倍速・スロー再生時でも自然な映像と音声で番組を視聴することができた。子画面では録画も同時に行っているのが分かる

 可変速再生時でも等倍速と同じ再生クオリティを可能にするのは、新チップが持つ3倍のMPEG処理能力だ。

 「TMS320DVD20には、3本のMPEGストリーム処理能力を備えている。つまり、録画(エンコード機能)に1本利用しても、再生(デコード機能)側にはまだ2本の処理能力が残されているのだ。そのため、倍速再生時でも等倍速と同じ再生が可能となる。再生速度は0.5倍速から2倍速まで1/8ステップで自由に設定可能。音声は新開発のTSM(Time Scale Modification)アルゴリズムを使用することで、等倍速再生と同じ音声クオリティを実現している」(金井氏)。

2004年のDVD/HDDレコーダは、リビングルームのAVサーバに

 今回の新チップは、今月初旬から各セットメーカーにサンプル出荷を開始。量産開始は2004年第1四半期を予定しているという。10万個以上発注時の単価は30ドル以下。

 「新チップはセットメーカーの評価も高い。早ければ、来年の春モデルで新チップ搭載のDVDレコーダが登場する見込み。2003年末には今回の新チップにIPコンバータやPCIバスインタフェースなどを追加した次期チップも投入予定。これが製品化されるのが、来秋ぐらいだろう。次期チップ搭載製品ではネットワーク接続機能が備わり、デジカメなどの外部メモリデータを取り込めるカードスロットも装備できる。2004年のDVD/HDDレコーダは、リビングルームのAVサーバ的役割を担うだろう」(金井氏)。


2004年のDVD/HDDレコーダは、リビングルームのAVサーバに

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[西坂真人, ITmedia]

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