News 2003年4月11日 11:01 PM 更新

DDR400は出荷準備完了なれど当初の歩留まりは40%の見込み

IDF最終日の技術トラックで行われた「メモリロードマップ」では、チップベンダーからDDR400とDDR2に関する最新の生産/開発状況が紹介された。はたして、DDR2は予定通り2004年に登場するだろうか

 3日間開催された「インテル デペロッパ・フォーラム JAPAN Spring 2003」(以下 IDF JAPAN Spring2003)は4月11日が最終日。  この日行われた技術トラックの一つ「デスクトップテクノロジ」最終コマでは「インテル メモリ・ロードマップ」と題し、2003年から2004年のメインストリームとなるDDR400とDDR2について、インテルとメモリベンダーのエルピーダメモリと日本ナンヤ・テクノロジーから説明された。

 インテルが今回示したメモリロードマップでは、2月に米国で行われたIDF Spring2003から、いくつかアップデートされている。

 2003年後半で消えることになっていたRDRAMは2005年まで生産される。ただし、これは主にエンタープライズシステムのメーカーとそのユーザーからの要求に対応するため。あくまでも旧システムのメンテナンスサポートのために生産することになる。そのため、PC1066の後継メモリは登場しない。


今回インテルが示したメモリのロードマップ。DDR400が2003年第2四半期から、DDR2は533/400MHzが2004年第1四半期から立ち上がる


ただし、立ち上がるものの2004年前半まではDDR333が主流でDDR400は一部のハイエンドPC向けになるとインテルは見ている。DDR2も本格的な普及は対応マザーが登場する2004年後半からだ

 PC1066がカバーしていたレイヤーはDDR400が受け持つことになる。IDF Spring2003の時点では“feasibility”だった開発フェースは現在Validationが終了。インテルにおける開発作業は終了し、2003年第2四半期のラウンチ準備はすべて完了。すでに7社のメモリチップベンダーと12社のメモリモジュールベンダーで製品が用意されている。

 規格策定段階で議論されていた、メモリモジュールへの供給電圧は、現行の2.5V(+/−0.2V)よりやや高めの2.6V(+/−0.1V)に落ち着いた。駆動電圧が高くなると、生産が容易になり歩留まりも最初の予想よりも高くなるといわれている。エルピーダメモリによると、現在の歩留まりが40%であるが、プロセスチューニングが進めば今年の後半には60〜80%の歩留まりが達成できるとしている。


エルピーダメモリが示した256Mビットと512Mビットにおけるメモリチップの採取率。現在512MビットからはDDR400は採取できないが、マスクを手直しして2003年第4四半期からDDR400を生産する予定。256Mビットでも歩留まりは現在40%と決して高い値ではない。目標とされる歩留まり80%は来年達成される見込みで、しばらくはDDR400の高値傾向が続くかもしれない

 DDR400は高クロックに加えて供給電圧が高いため、発熱量がかなり多くなる。そのため、インテルはDDR400はデスクトップPCとエントリーサーバのみでサポートし、ノートPCはもとより、最近需要が高まっているスモールファクターPC(省スペースPC)でも安定動作は難しいだろうと予想している。  この問題を解決し、かつ、PCベンダーやメモリベンダーの開発を容易にするために、すべてのPCプラットフォームで共通のメモリ規格を準備する。これが、いまになって、DDR2を推進することにしたインテルの「DDR2のセールスポイント」だ。

 DDR2で採用される新技術の「On Die Termination」、パッケージで採用したFBGA、1.8Vと低い供給電力。これらのおかげで、消費電力は少なくなり、高クロック動作にもかかわらず発熱がかなり抑えられている。インテルはRDRAM採用時に高いパフォーマンスをアピールしていたが、DDR/DDR2ではパフォーマンスではなく、パフォーマンスと発熱量の良好なバランスをアピールしている。


DDR2とDDRのスペックを比較。プリフェッチがDDR2で2倍になっているため、動作クロックをそれほどあげなくてもデータ転送レートは向上する。さらにパッケージにFBGAを採用したことで、同クロックのTSOPモジュールと比べ発熱量が7〜8割減少した


DDR2で採用されるOn Die Termination(ODT)を実装していない回路(左)と実装した回路(右)の違い。ODT採用回路ではトランジスタや抵抗がいらなくなるので、その分コストと消費電力が抑えられる

 DDR2の開発は、現在サンプルモジュールによる評価段階に差し掛かっている。メモリベンダーから提供されたサンプルモジュールを、インテルがさまざまなサーマルモデルで検証している。現在のSpecificationレビジョンは0.6で、新しく提案されるスペックをシミュレーションで検証している状態。ガバナーのレイアウトデザイン作業も進行中だ。


エルピーダメモリが製造したDDR2の1Gバイトサンプルモジュール。メモリチップのフットプリントは約130平方ミリメートルと小さく、TSOPのDDRより正方形に近い。チップ形状を正方形に近づけるとチップ内モジュールの信号線が短くなり高速化に貢献する

 DDR2の出荷は2004年初頭を予定している。インテルのロードマップではDDR2の動作クロックは533MHzと400MHzからスタートし、2005年には高クロックの製品が登場することになっている。ところが、エルピーダメモリと日本ナンヤ・テクノロジーによる開発状況によると、まず登場するのはDDR2/533MHz。シミュレーションでは、高クロックのDDR2/667MHzも2004年後半から生産が可能になるという結果も出ている。


エルピーダメモリが示したシミュレーションによるDDR2-667/533/400の採取率。生産は512Mビットチップから行われる。1Gビットチップは512Mビットより遅れて生産を開始。256Mビットチップはシステムベンダーからのリクエストで生産する予定だ

 この状況をみると、デスクトップPC向けの製品としては、2004年前半にメインストリームとしてDDR2/533MHzが登場し、DDR2/400MHzはごく少数が生産される見通しだ。これは、次期デスクトップPC向けチップセットとしてまもなく登場するCanterwoodとSpringdale-GがDDR400をサポートするので、DDR2/400MHzはモバイルPCやSFF向けといった特定用途に限られるとメモリベンダーが考えているためだ。

 また、DDR2/533MHzにしても、対応するチップセットは2004年後半に登場すると言われている“Grantsdale”まで待たなければならない。

 エルピーダメモリと日本ナンヤ・テクノロジーが示した開発予定では、サンプル出荷を2003年第4四半期中に行い、量産体制は2004年第1四半期までに整えるとしている。さらに日本ナンヤ・テクノロジーのロードマップではDDR2/800MHzが2006年に、DDR3が2006年後半にそれぞれ登場すると示されている。


日本ナンヤ・テクノロジーが示したメモリロードマップ。矢印の中にあるのはプロセスサイズ。2006年の後半からナノメートルサイズのプロセスチップが登場する見込みだ

関連リンク
▼ インテル
▼ インテル(R) デベロッパ・フォーラム Japan Spring 2003
▼ Intel Platform Memory
▼ エルピーダメモリ
▼ ナンヤ・テクノロジー

[長浜和也, ITmedia]

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