News:アンカーデスク | 2003年4月28日 09:52 PM 更新 |
そして最近では、PC向けにDolby Digitalのソフトウェアエンコーダを積極的にライセンスしつつある。
例えばSONYのVAIOシリーズに登載されているDVD作成ソフト「Simple DVD Maker Ver.1.2」では、早くからDolby Digitalでのエンコードをサポートしていた。またUleadの「Video Studio7」や「DVD MovieWriter2」では、Dolby Digital音声対応キット)が存在することが一つの目玉となっている。
進化する家電の登場
進歩しない方がいい、だから採用される、という流れは、常に向上を求めるという人間の基本理念に照らし合わせてみてもかなりネガティブだ。それならば家電であっても、パソコンのように機能を追加したりバージョンアップできるようにすればいいのだ、という発想が出てくる。
SONYのHDDレコーダ、CoCoonの新モデルであるNAV-E600/900では、機能を必要に応じてユーザーが別途購入できるというオープン キー スタイルなる仕掛けを採用している。また東芝が発表した国内初の地上波デジタル対応テレビは、スマートメディアによって内部ソフトウェアのアップデートが可能になっている。
なんでスマメなんだよという議論はおいとくにしても、これが偉いのは、値の張る割りには必然性の全くない特殊メディアではなく、汎用のメディアを使ったという点にある。
今後デジタルAV家電の中心にはデジタル地上波放送を引っさげたテレビが居座ることになると、メーカーも放送業界も鼻息は荒い。売るためのインフラと売るものの両方を持っているというわけだ。何はともあれアップデートするための道を付けておく、ということが今後の家電では重要になってくる。
白物家電でもいけるのではないか
この流れは、やがて白物家電にも普及するかもしれない。例えば洗濯機やエアコンなどは、一度買えば10年ぐらいは動いてしまうが、これだって10年前のモデルと今のモデルが同じ機能であるというわけではない。洗濯機ならばより静かになったり、エアコンならばより人体に優しいアルゴリズムで動作するようになっている。
従来白物家電において、有償ソフトウェア販売というのは成功しないと言われてきた。これも一例だが、わが家にあるミシンは新たにソフトウェアをインストールすることによって、より複雑な刺繍ができるようになる。だがこのソフトウェアが9,800円と、なかなかいいお値段だ。さらにパソコンで書いたイラストを刺繍しようなどと思ったら、ソフトウェアと専用メモリーカードライターのセットで、なんと驚くなかれ11万円だそうである。
こういうものは、クローズドなアーキテクチャを用い(実際には汎用品かもしれないが)、ニッチな市場へ向けているので、マジで採算を考えたらそのぐらいの数字がはじき出されたわけだろう。ある意味正直な価格なのかもしれない。
もし購入されて楽しく使っている方がいらっしゃったら大変申し訳ないが、筆者も裁縫好きの家内でさえも、たったそれだけの機能に11万円分の価値は見いだせない。だから買わないし、これが一般的な商品だとも思えない。このような例は、成長する家電が今後陥りがちな負のスパイラルの象徴と言えるだろう。
基本的に家庭電化製品というもののベースは、人間がより豊かに暮らせるというところにある。仮に筆者が十分すぎるほど経済的に恵まれており、11万円の刺繍ソフトが楽々買えるようになったとしても、それで本当に筆者の暮らしが豊かになったとは言えまい。
それよりもちょっとしたアップデート費を払うことで、エアコンが賢くなって子供が寝冷えしなくなったり、洗濯機がより繊維を痛めずに汚れを落とせるようになったりすることのほうが、豊かになったと感じることだろう。
白物家電はリサイクル法によってその廃棄が厳しく制限され始めたため、消費者は簡単に買い換えを行なわなくなっている。それであれば、これらもソフトウェアのアップグレードでこまめにお金を回収する方法というのは、メーカーにとってもそこそこ現実的なのではないかと思えるのだが、どうだろうか。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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[小寺信良, ITmedia]
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