News 2003年5月9日 11:35 PM 更新

ロボカップジャパンオープン2003観戦記
強さの秘密はどこにある?――中型ロボットリーグ決勝トーナメント(4/4)


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 しかし、2分、今度はEIGENの1番がサイドラインからのボールをWinKITゴールに運ぶ。


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 試合は、WinKITが押し気味、EIGEN側のサイドにボールがある時間が長い。今回のEIGENはディフェンス重視なのだろうか。6分、押し合いからWinKITがゴール。

 9分、コーナーからのボールをWinKITの1番がセンタリング、これを3番がうまく合わせゴール。自律ロボットがやってるとは思えないくらいにセットプレイがきれいに決まった。


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 これで、前半終了。3−1でWinKITリードだ。もっとも、去年の決勝戦も前半終了時は2−1でWinKITだったのをEIGENが後半逆転したのだ。まだまだ予断は許さない。

 ハーフタイムの間には、加熱したモーターを冷やすためにドライヤーの風を当てる風景などが見られた。


 後半、EIGENは明らかにプログラムを変えてきた。フィールドプレイヤーが全員で相手ゴール前に突進する。WinKITがわずかな隙をついて、ドリブルで運ぶと、EIGENも足の速さを駆使して全速力で下がる。普通の車輪を採用したEIGENは全方向車輪のWinKITよりも足が速いのだ(WinKITは、全方向のなかでは非常に速い)。


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 2分、WinKIT前の押し合いを抜け出したEIGENの1番がそのままゴール前まで運ぶが、WinKITのキーパー3番のディフェンスで惜しくもシュートならず。しかし、再度ラインに置かれたボールをやはりキープ。今度は3番をかわしてシュート。


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 この後、WinKITも相手フィールドまでボールを運ぶのだが、EIGENの守りの前にゴールまでとどかない。EIGENは守るときも全員だ。

 そして、6分。EIGENの3番がゴール前に運んだボールを、1番が受け、そのままゴール。ついに同点に追いついた。王者EIGEN、やはり強い。

 しかし、EIGENは疲れてきたのか、ここからマシントラブルが目立つようになる。フィールド上で動かなくなったマシンを、スタッフがかつぎ出して調整するような場面が増えてくる(*3)。もちろんその間は、少ないプレーヤーで戦うこととなる。人間のサッカーで11対10になったって不利なのに、こっちは4対3あるいは、4対2である。圧倒的に不利だ。勢いEIGENは、防戦一方になる。

 そして8分、コーナーポスト前の押し合いによる膠着状態で、審判がボールをニュートラルポジションに移す。こうなると人数が多い方が有利だ。フリーだったWinKITの1番がそのボールをキープ、押し合いから抜け出した2番にパス。そのまま2番がゴール。


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 疲労困憊のEIGENにこの1点は重い。9分、さらに1点を追加されてしまう。直後に試合終了の笛。5−3でWinKITが雪辱を果たして今大会のチャンピオンとなった。

 WinKITというのは不思議なチームだ。EIGENにような戦略が際だっているわけでもないし、Muratec FCのように圧倒的な技を持っているわけでもない。そんなに強そうには見えないのに、全員プレイでするすると勝ってしまう。予選も2勝2分けで通過だから、WinKITは新潟では一度も負けていないのだ。

 以前も紹介したけど、金沢工業大学チームは、学部学生中心のチームだ。よそが、研究室の学生あるいは院生だったり、さらには社会人だったりすることを考えると、とっても若い。一見強くなさそうなのは、そのへんに秘密があるのかもしれないね。

 2カ月後のイタリアパドゥアの世界大会には、ヨーロッパの強豪が多数出場してくるだろう。しかし、このリーグでは日本のチームも良い成績をあげるに違いない。特にWinKITのような若いチームは、たとえ勝てなくても得てくるものは多いはずだ。

 そして、決勝では破れたけど、EIGENは強い印象を残したチームだ。Muratec FCとの2試合は当分語り草になるだろう。決勝で負けたことで、また強くなるにちがいないと、わたしは信じている。


記念撮影。向かって左がEIGENチーム


*3 モーターがかなり加熱していることが予想される。



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