News | 2003年5月12日 03:47 AM 更新 |
Microsoftは「Universal Plug&Play」(UPnP)を強力に推進するベンダーではあるが、もっぱらPC向けOS側のサポートや仕様の方向決めに熱心で、UPnPクライアントデバイスのプラットフォーム提供にはあまり興味がないようだ。
では、彼らはネットワークアプライアンスに興味がないのだろうか?
いや、それは違う。彼らは単純にネットワーク経由で写真や動画、音楽などを再生するアプライアンスは専門ベンダーに任せ、もっぱらPCの持つパワーを活かせる、メディアリッチなクライアントの提供を狙っているのだ。そのベースとなる要素はSmart DisplayとMedia Center PCである。
Microsoftの狙う“メディアリッチ”なネットワークアプライアンス
現行のSmart DisplayはWindowsターミナル向けに開発されたRDP(Remote Desktop Protocol)をベースにしたもので、あまりメディアリッチなアプリケーションには向いていない。例えばSmart Displayで動画を表示させようとしても、無線LANの帯域を使い切ってコマ落ちするばかりで使い物にはならない。
しかし次世代のSmart Display技術では、動画や高品質な音楽、そして3Dグラフィックスをもリモートで扱えるようになる。先日、Transmetaが次世代Smart Displayのリファレンスデザインを行うメンバーとなり、TM5800をSmart Displayに実装するというニュースがあった(5月8日の記事)。
なぜSmart DisplayにCrusoe?――そう思った人も少なくないだろうが、端末側に高品質の動画再生や3Dグラフィックレンダリングの機能が必要になると考えると、それも納得がいく。
さらにMicrosoftは、次世代のSmart Display技術とMedia Center PCの将来のバージョンを組み合わせることで、AV機器に対してリモートのユーザーインタフェースを提供しようとしている。
例えば、書斎にあるMedia Center PCをサーバとし、リビングにあるHDTV上でMedia Center PCをローカルで利用するためのユーザーインタフェースやメディア再生機能をユーザーに提供しようというわけだ。
そのためにリモートクライアント側のデバイスに、圧縮動画の再生パフォーマンスや3Dグラフィックスのレンダリング機能を実装。リモート接続のためのプロトコルも従来とは全く異なる高機能なものへと置き換えられる。
こうすることで、メディアリッチなユーザー体験を実現する基礎の処理は、強大なプロセッサパワーを持つPCが担当することとなり、その恩恵を限られたプロセッサパワーしか持てないAV家電に与えることができる。
これは、間接的にPCの付加価値を向上させることにもなるだろう。PCのプロセッサやメモリ環境でなければできない処理は、今後デジタルAV家電のパフォーマンスが向上しても存在し続けるはずだ。
もちろん、Microsoftが提供するMedia Center PCの機能やユーザーインタフェース技術が、わざわざPCを使うまでもない、ありふれたものならば、こうした技術も意味のないものになってしまう。
しかし、MicrosoftはMedia Center PCの機能やユーザーインタフェースを構築するにあたり、日本の主要ベンダーを含むAV家電メーカーやコンシューマー指向の強いPCベンダーと密にコンタクトしながら、本気で使い物になるものへと変えようとしている。
これまでMicrosoftは、AV家電に近付こうとしながら、なかなかAV家電ベンダーの輪の中に入れずにいた。PC向けクライアントOSで支配的な立場にある同社にとって、全く文化の異なるAV家電の常識やノウハウを、うまく社内の技術に取り込めないのが原因ではないか?と思ったこともあった。しかし今、Microsoftは他社から自社とは異なるカルチャーの良い部分を学ぶ姿勢を持つようになったようだ。
3DもサポートするWindows CEベースのAVリモート端末
話をAVリモート機能に戻そう。
クライアント側の装置(ここでは仮にAVリモート端末と呼ぶ)は、Windows CE.NETベースの3Dアクセラレータやオーディオ機能を持つ“ノンHDD”デバイス。
[本田雅一, ITmedia]
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