News 2003年5月14日 02:07 PM 更新

ソニー、携帯ゲーム機に参入。キーワードは“21世紀のウォークマン”(2/2)


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 サウンド面では3Dサウンド機能を内包。本体内にステレオスピーカーとステレオヘッドフォンアンプを内蔵させ、PCM音声のほかATRAC3やAACなどの音声圧縮CODECもサポートするという。さらに注目すべきは、これらサウンド関連の機能をリコンフィギュアブルなDSPで実現していることだ。

 “リコンフィギュアブル”とは、再構成可能を意味しており、DSPの内部構成を自在に変更できるものと推定される。

 リコンフィギュアブルなチップは、ハードウェアのリソースを再構成し、さまざまなアルゴリズムに対して最適な処理構造を持つことができる。このため、シリコン上のリソース利用効率を最大限に高めることが可能になり、コスト、チップサイズ、消費電力を最小限に抑えつつ、さまざまな種類の処理に対応可能となる。


サウンド機能の概要。リコンフィギュアブルDSPにより、省電力かつ柔軟性の高いサウンド処理を実現する

 今回の発表ではPSPに搭載されるリコンフィギュアブルDSPにどのような能力があり、どのような用途で使うのかなどには言及しなかったが、おそらくは消費電力やチップ上の実装コストを抑えながら、最大限のパフォーマンスと柔軟性を備えるためだと考えられる。

 一方、CPUには従来と同様にMIPSコア(32ビット、クロック周波数は未定)を採用。前述の3Dグラフィックのエンジン、サウンドエンジンに加え、メインメモリやインタフェース類も1チップに統合。90ナノメートルルールで製造される。


CPUの概要。ほとんどすべての機能は1チップに統合される。プロセスルールは90ナノメートル

 またI/OインタフェースにはUSB2.0を実装することも明らかにした。さらにメモリースティックスロットを装備。I/Oデバイスにも対応し、ゲーム用のメモリストレージとして利用するほか、ワイヤレス通信やGPSユニットなどを装着可能にするという。

 ただし、気になるバッテリ持続時間については明らかにされなかった。電源関係で発表されているのは、充電式のリチウムイオンバッテリ内蔵型になること。およびACアダプタでの駆動も可能なことの2点のみだ。

 「まさにこれは21世紀のウォークマン」と久夛良木氏は話す。これまで自宅の中でしか楽しめなかった3Dゲームを、街中に持ち出すことが可能になる。現在、携帯型ゲーム機は、ほぼ市場の100%を任天堂が掌握している。

 しかし、主力機種のゲームボーイアドバンスは数世代前の古いゲーム機アーキテクチャを採用したものだ。コストは安いが、ユーザー体験の品質には、自ずと限界がある。

 久夛良木氏はインタビューの場などで、エレクトロニクス技術で市場のステアリングを握るためには、多数のコンシューマーに訴えかけて大量の製品をさばくことと、大量出荷を前提に最新の半導体技術を投入して技術的なリーダーシップを取ることの重要性について話すことが多い。

 今回の製品は、まさにそうした考え方を大胆に実践したものだ。SCEは初代プレイステーションで、大量販売によるハードウェアのコストダウンの効果を活かして3Dグラフィックを家庭用ゲーム機の世界に持ち込んだ。PSPはそのときと同じインパクトを、携帯型ゲーム機の世界へと広げるだろう。

 発売までの時間はまだまだ長い。どのようなデザイン、どの程度のサイズ、どのぐらいの価格など、不明点が多いのは事実だ。しかし、ひとつ発売が楽しみなハードウェアができたことだけは間違いないと言えるだろう。

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[本田雅一, ITmedia]

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