News:アンカーデスク 2003年5月28日 08:30 AM 更新

モナーはFlashに乗って海を渡る(1/2)

英国のウェブロガー、Fraserくんは、モナーの描かれたTシャツやマグカップを心の底から欲しいと願っている。彼は言う。「モナーは本当にCoolだ」

 英国のウェブロガー、Fraserくんは“モナー”が大好きだ。

 モナーとはいうまでもなく、日本の匿名掲示板「2ちゃんねる」のアスキーアートによるマスコットキャラクターのこと。もちろん日本語OSがインストールされていない彼の環境では、この2バイト文字で書かれた不思議な生き物を、アスキーアートとしては見ることができない。

 彼がモナーを初めて見たのは、とあるウェブログで紹介されていた、日本製のFlashムービーからだった。聞いたこともない日本語の歌にのせてぎこちなく動くシンプルで奇妙なキャラクターたち。

 Fraserくんは言う。「モナーは本当にCoolだ」。彼はモナーの描かれたTシャツやマグカップを心の底から欲しいと願っている。PCの壁紙はもちろんモナーだ。

 2ちゃんねるで交わされるのは、テキストメッセージだけではない。あまたの“名無しさん”たちが、AA(アスキーアート)板、Flash板、DTM板などの専門の掲示板で、アスキーアートの新作や、ストーリー性のあるAA童話、時事ニュースをパロディ化したFlashムービー、2ちゃんねるのキャラクターたちを既存の楽曲にあわせて動かすFlashムービーなどを創作し、面白さを競い合っている。

 鈴木宗男議員の発言をハウスミュージック風にリミックスして競作する「ムネオハウス」ムーブメントを覚えている人も多いだろう(関連記事参照)。これらの作品を採集してまとめているWebサイトも少なくない。

 そうしたFlashムービーは、たいてい2ちゃんねる文化を共有する日本人向けに作られていて、そうでない人々が見ても意味不明なものがほとんどだ。

 しかし2ちゃんねる文化どころか、背景となる日本文化そのものを知らない海外のネットユーザーたちは、それらを内輪ノリとも受け止めず、純粋に“不条理で面白いもの”として享受する。

 世界中のサイトを渡り歩き、奇妙なサイトを貪欲に探し求めるあるウェブロガーは「男性器の形の頭部を持つアスキーアートの猫が、日本の怪しげな民族音楽にあわせて動き回る」Flashを見つけ、大喜びで自身のウェブログで紹介した。

 それを見たいくつかのウェブログは、ほどなく同種のFlashを探し出てリンクを張った。彼らは考えた。おそらくこれらは何かのパロディなのだろう。そして似たようなアスキーアートを用いたFlashがこれだけ多く生まれているということは、日本のネットユーザーたちに親しまれているキャラクターであるに違いない。しかしそれが何なのかはわからない。わからないからこそ、余計に面白いと感じる。

 これまでのところ、最も多くのウェブロガーたちを熱中させた2ちゃんねる発のFlashは、ヨガ鳥氏が作成した「戦えキッコーマソ」だ。

 2002年11月、投稿されたニュースやサイトについて閲覧者たちが自由に論議を交わすグループ形式の大手ウェブログ「Metafilter」がこのFlashを紹介するやいなや、驚嘆の書き込みが相次ぎ、数々のウェブログに伝播した。

 ウェブログからリンクされた数でWebページをランキングする「DAYPOP」や「Blogdex」の上位に「kikkoman」がランクインしたほどだ。

 ヨガ鳥氏のBBSは感激を伝える英語メッセージで埋め尽くされ、果てはコスプレをする者まで現れた。

[堀越英美, ITmedia]

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