News 2003年6月4日 11:59 PM 更新

“PC要らず”の賢いプリンタを低価格に――OakのSoC

米Oak Technologyが、低価格プリンタ向けSoC(システムオンチップ)を発表。PCを使わずに単体でカラーコピーなどが行える高性能複合機が、200ドル以下で登場する日も近い

 米Oak Technologyが、低価格プリンタ向けのプログラマブルSoC(システムオンチップ)「OTI-4100」を発表した。PCを介さずに印刷が行えるスタンドアロンタイプのプリンタが低コストで設計できるというこの新SoCソリューションの可能性について、同社に話を聞いた。

 デジタルカメラやカメラ付き携帯電話など、手軽にデジタル画像を楽しめるイメージング機器が増えている。そしてユーザー層の広がりは、PCを使わずに家電感覚で撮影画像を印刷したいというニーズを生み出した。

 プリントエンジンのみを搭載した従来のプリンタはPCを介さないと印刷ができなかったが、最近はプリンタとイメージング機器とをUSBケーブルなどでダイレクトに接続できたり、メモリカードスロットを搭載するなどして、PCを介さずに直接印刷する「ダイレクトプリント」に対応したインテリジェントタイプのプリンタが登場し始めている。

 また、プリンタにスキャナやカラーコピー機能を搭載した「複合機(MFP)」が、頭打ちとなっているプリンタ市場の救世主として注目されている。

 同社日本法人オークテック・ジャパンのイメージンググループディレクター・河田哲郎氏は「2001‐2002年のコンシューマ向けプリンタ市場を見ると、今までマーケットをけん引してきた単機能インクジェットプリンタが横ばい成長と振るわず、かわってインクジェット複合機が成長率63%と大きく伸ばしている。中でも、200ドル以下の低価格タイプの複合機は、前年比250%と成長が著しい。また、単機能プリンタでもダイレクトプリント対応モデルは28%増と好調な伸びを示している」と語る。

 だが、ダイレクトプリント対応機や、単体でコピーなどを行える複合機を作るためには、従来PCが担当していたインテリジェント機能を高速で処理できるシステムがプリンタ側に必要となる。「イメージング機器との接続/画像入力を行う各種インタフェースや画像処理/システム制御を行う高性能CPUなど、さまざまな処理チップを装備しなければならないため、どうしてもコスト高になってしまうというデメリットがあった」(河田氏)。

 Oak Technologyが開発したOTI-4100は、従来複数のチップで行っていた処理を1チップに統合した「システムオンチップ(SOC)」設計を採用。32ビットRISC「ARM7(67MHz)」と、同社独自のプロセッサ「Quatro DSP」という2つのコアで構成され、業界標準の内部バスと、扱いやすいC言語ベースのプログラミング環境を備える。

 USB2.0のハイスピードモード(最大480Mbps)に対応し、USBホスト機能も装備。コンパクトフラッシュ/SDメモリーカード/スマートメディア/メモリースティック(Proを含む)など主要なメモリカードインタフェースに対応し、プリンタやスキャナのインタフェース機能も取り込んでいる。

 同社は昨年8月に中・上級機向けのプリンタ用SoC「OTI-4110」をリリースし、今年1月から量産出荷を開始。Hewlett-Packardが今年5月に発表した低価格カラーレーザープリンタ「Color LaserJet 1500」に、OTI-4110が採用されている。

 「Color LaserJet 1500は、OTI-4110を使うことでHPのカラーレーザープリンタとしては最低価格となる799ドルを実現した。今回のOTI-4100はOTI-4110の低価格版という位置付け。パッケージをBGAからLQFPに変更してピン数を減らしたほか、CPUコアをARM9からARM7に変更したり、クロック周波数を落としてダイサイズを小さくするなどして、コストダウンを図った」(河田氏)。

 OTI-4100は、今月からエンジニアリングサンプルが出荷されており、今年10月から量産出荷が開始する予定。

 「OTI-4100を採用した製品が市場に出てくるのは、2004年の第1四半期ごろ。PCを使わずに単体でカラーコピーができるスタンドアロンタイプで200ドルを切る高性能複合機が、来春にも登場するだろう」(河田氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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