News | 2003年6月4日 08:55 PM 更新 |
カメラから入力した屋外環境のユーザー視点映像に、3次元の仮想環境画像を、複数センサー情報を統合して高精度で重畳、両眼HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に表示する。豪・南オーストラリア大学のブルース・トーマス教授は、このウェアラブルな拡張現実(Augmented Reality)インタフェースを開発する「Tinmithプロジェクト」のリーダーである。
この両眼HMDをつけていると、簡単にいえば現実空間のなかに「モンスター」を見ることができる。最近のSF映画における高度なCG合成で、映像のなかで自然にモンスターを登場させることができるようになっているのは周知の通りだが、それを「リアルタイム」に「アウトドアの現実空間のなか」で、かつ「精細」にできるようにしようというのである。
Augmented Realityで現実空間に対してほぼリアルタイムに合成するという研究は多いが、トーマス教授らのTinmithは、精細さを目指している点とキラーアプリケーションとしてAugmented Realityゲームを検討している点が興味深い。
「キラーアプリケーションというのはマーケティング的な発想であり、わたしはビジネスマーケティングのエキスパートではない」と、牽制しつつも、「ゲーム機のようなフィジカルなデバイスは、多くのユーザーが使用し、使うのが簡単である」として、大勢のユーザーが使うゲームに可能性を見いだしているのである。
こうした世界を実現するためには新しい技術が必要だが、「技術は移り変わる」として、
といったデバイスの誕生や、CPUパワーの向上、WAN(ワイドエリアネットワーク)の普及などによって、新しい可能性が見い出されるだろうと予測する。
現在、ヘルメット、ゴーグルなどで重装備のシステムも、やがては「E-SUIT」と呼ばれるようなシンプルなウェアラブルシステムになっていくだろうという。
Tinmithプロジェクトでは、こうした予測をもとに屋外でのAugmented Realityについて研究している。例えば芝の上に存在しない構造物を作り出したり、実際にシューティングタイプのゲームを作ったりしているという。
屋外型のゲームには、実際に身体を動かすという楽しさがあり、グループで楽しめる面白さがあるという。ちょうど、80年代末期から、河原などでエアガンを用いて行うサバイバルゲームが大流行したが、あのサバイバルゲーム感覚の延長線上に今回の屋外型Augmented Reality+ウェアラブルシステムというのはあるのかもしれない。ちなみにトーマス教授のお気にいりのモンスターは「ゾンビ」だとか。
そういえば、サバイバルゲームの装備は、エアガン用のタンク、弾よけのゴーグルなどとかなりの重装備だったから、ウェアラブルの重装備も、十分受け入れられる素地はある。赤外線暗視スコープなどと組み合わせれば、けっこう楽しいゲームができるのではないだろうか。1ゲームあたりの時間は90分というところだから、動作時間の短さもゲームバランスのひとつとして考えることができる。
トーマス教授は、このゲームの評価として「もっとも気に入られたウェアラブル機器は、銃型のデバイスだった」と締めくくった。
[美崎薫, ITmedia]
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