News | 2003年6月4日 09:24 PM 更新 |
「Electronics in Textiles: The Next stage in Man Machine Interaction」と題された二つめの招待講演は、ドイツのInfineon Technologiesのシニアディレクター、ベルナー・ウェーバー博士が行った。
人間と電子機器のインタフェースとしてInfineon Technologies社が研究しているのは、織物の生地に電子回路を組み込む新しい布地である。
ウェーバー博士は、電子回路を組み込んだ衣服の生地を、「Smart Textile」と呼んでいる。Smart Textileは、単に電子回路が組み込まれているだけではない。衣服の内と外の温度差、つまり体温と外気温の差を利用して発電が可能になるというのだ。圧電性のコンバーターでとり出した電力で動作し、信号を発信することができるという。Infineon Technologiesはこの分野のトップの1社である。
ウェーバー博士が強調するのは、「シリコンはいつもベリーチープ」ということだ。Smart Textileによって実現する布やラベル「スマートクロシング」「スマートRFID(Radio frequency ID)ラベル」は、自家発電できるインテリジェントなセンサーシステムであり、「スマート」を強調するように、シンプルで、現在のウェアラブル機器とは一線を画したデザインに仕上げることができる。
こうして出来上がった機器は、従来のウェアラブル機器、MP3プレイヤー、携帯電話、腕時計、PDAなどとは、ぜんぜん違うとWeber博士は言う。「今、皆さんは、ウェアラブル機器をいっぱい持っているけれど、みんなばらばらになっている」という。
しかし、Smart Textileによって実現された機器では、機能が分割され、それがネットワークで統合されるので、今よりもずっとスマートに使えるようになるのだという。
こうした構想のもと、シンガポールでウェアラブルファッションショーを開催したり、実際に試作を進めているそうである。
ウェーバー博士は、MP3プレイヤーがことのほかお気に入りのようで、ウェアラブル機器の代名詞としてしばしば例示していたが、確かにシリコンは大量生産によって劇的に価格が低下していくという特徴を持つ。また、小型化にも大きな効果があるだけに、発電機能のある小形チップが持つ可能性は大きいだろう。
[美崎薫, ITmedia]
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