News:アンカーデスク 2003年6月9日 07:50 AM 更新

「いい音」の復権はPCから(1/3)

最近、“音をいじる”人の裾野が広がってきた。「音が悪い」といわれてきたPCでも、いろいろ工夫をする動きが目立っている。そんな人に注目してほしいのが、夏バイオのほとんどに搭載された「SMS」だ。アナログやオーディオCDなどの音源を、Windowsの制約を超えてブラッシュアップできるのだ。
顔

 先日アキバのパーツ屋をうろうろしていて見つけたのだが、CD/DVDドライブのアナログオーディオ出力からサウンドカードへ接続するオーディオケーブルで、ずいぶんと高級なものがあった。

 確か2000円ぐらいしたように記憶している。かなりの太さできちんとシールドしてあり、ドライブのオーディオケーブルに「ここまでするか」と思わせるに十分なものだ。その時買ってくりゃ、ネタとして写真でもお見せできたのだが、惜しいことをした。

 もし奇特な方がいらっしゃったら、「DOS/Vパラダイス」の2階で売ってるので、詳細を教えてほしい。

 PCは元々音が悪いと言われているが、このようにいろいろと工夫することでなんとかしようというムーブメントは、いい傾向だとと思う。ただ、基本を誤解したまま突っ走っては、お金をかけた割にはあまり効果がないということになるのが、オーディオの世界である。件(くだん)のオーディオケーブルも、品質自体は問題ないと思うが、その効果が発揮できるのかどうかは、接続するドライブ次第だ。

 アナログで音を出すからには、当然CDは等倍で回るわけだが、最近のCD/DVDドライブは高速化するあまり、等倍速回転での特性が悪い(関連記事)。さらにドライブ内部にある低コストのD/Aコンバータ出力では、あまりいい音は期待できない。

 その後のケーブルをいくら頑張っても、値段分の向上が認められるか、難しいところだ。そのあたりまで全部分かってこのケーブルを買ってくれればいいのだが。

 DVDが流行ってきて以来、世間一般のオーディオに関する考え方が変化してきているのを感じる。2chのオーディオを疑似サラウンド化したり、サウンドプロセスで部屋のサイズをシミュレーションしたりといったことを楽しむ人が増えたようだ。

 音をいじる人の裾野が広がることは喜ばしいことだが、こういった行為はアナログのピュアオーディオ全盛の時代から見れば、とんでもないことだ。

 あの頃は、LPレコードに記録されている音にマチガイはない、とにかくここから原音を忠実に拾い出すのだ、ということに、まなじりを決していた時代であった。筆者の学生時代、音響工学の恩師は、やれホーンスピーカーは自作だ、カートリッジのコイルは顕微鏡を見ながら手巻きだ、などとやっていたぐらいだ。それを手伝わされる筆者などはいい迷惑であった。

 それが今では、音はいろいろいじっていいんだ、それで楽しければ、といったリラックスムードである。もちろんそういうベクトルの人はピュアオーディオ時代にもいた。そういう人間が当時何をやっていたかというと、音楽を作る方に向いていたのである。

 実は筆者もその口で、アナログシンセいじったり多重録音したり、それが高じて音響の専門学校に行ったりと、まったく人生踏み外したものである。

 そんな筆者の最近の興味は、アナログオーディオのデジタル化にある。CDで再発されていないLPレコードをマスタリングして、CD-Rに書き直す作業だ。そこそこいいサウンドカードなど買ってきて、SteinbergのCLEANというソフトでノイズリダクションなどしているのである。

 これはぜひ今のうちにやっておかなければ、という義務感とか焦燥感でやっているわけではなく、単純にこうやってPCで音をいじっているのが楽しいからだ。

記憶の音を再現できるとしたら

 さて前置きが長くなってしまったが、ソニーのバイオ夏モデルのほとんどに搭載された新アプリケーションに、「SonicStage Mastering Studio」がある。これはCLEANなどと同じようなマスタリングツールだが、オーディオに詳しい人に言わせると「プロが使っている機能が惜しげもなく入っている」ということで、かなりのインパクトをもたらしたようだ。


「SonicStage Mastering Studio」は、音源をブラッシュアップできるマスタリングツール

 筆者はオーディオのプロではないので、それがどのぐらいの価値があるものかはよく知らない。だが、LPからのマスタリングを以前から行なっていたこともあって、そのアプリケーションには多分に興味がある。そのあたりのお話を伺うべく、筆者はまたソニーを訪れたのである。

[小寺信良, ITmedia]

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