News | 2003年6月11日 06:57 AM 更新 |
昨年度、国内での販売台数が前年比マイナス24%と不調に終わったソニーのバイオ事業。4月からはホームネットワークカンパニー所属のバイオデスクトップカンパニーと、モーバイルネットワークカンパニー所属のバイオノートブックカンパニーに分かれていた“バイオ部隊”が、IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー(IMNC)のITカンパニーへと統合される組織改編も行われた。
これに伴い、ソニー執行役員常務兼モーバイルネットワークカンパニープレジデントの木村敬治氏が、執行役員常務兼IMNC ITカンパニープレジデントに異動。バイオ事業の立て直しに専念することとなった(ソニー4月1日付け人事・機構改革のプレスリリース)。
昨年、バイオ事業に何が起こったのか。これからどのようにして、新しいバイオの価値を提案していくのか。木村常務に昨年の不調を振り返りながら、今後の事業方針について話してもらった。
ワールドカップ後の動向読み違えが大きく響く
昨年後半から、バイオシリーズが店頭で余ってしまう現象が見られるようになった。それまで売り切れが当たり前だったバイオシリーズが不調に陥った原因はどこにあると見ているのだろうか?
「われわれも2002年は市場がシュリンクすると読んでいましたが、市場がここまで落ちるとは考えていませんでしたた。実際、昨年も4月まではワールドワイドで販売が好調で、2001年度は全世界で350万台のバイオを販売するところまで来ていたため、市場減速を考慮しても400万台以上は確実、多少の期待を込めて450万台を目標にしていました」(木村常務、以下同)
確かに昨年夏までは、バイオ不調の声は聞こえてこなかった。バイオシリーズの価格が若干上昇するとのステートメントを春ごろに出すなど、春頃までは強気の姿勢も見られたほどだ。しかし他社が機能をアップしながら価格を下げていったのに対して、強気の政策を打ち出したバイオシリーズは不調に陥る。
「国内市場はワールドカップ前後から売り上げ不調の前兆は見られたんです。しかし(ワールドカップ開催による一時的な販売数の落ち込みと考え)、元々考えていた事業計画の数字を読み直しませんでした。4月までの好調からすれば、いずれワールドカップの影響がなくなれば、売り上げは戻ってくると考えたのです。それが結果的に戦略練り直しのタイミングを遅らせてしまいました」
不調はこの2003年1〜3月期まで引きずってしまった。
「われわれも、もちろんさまざまな対策は施しました。しかし、自分たちの実感としても、競争力が2割程度落ちたという感覚があります。昨年はバイオU、Wといったソニーらしいハードウェアを出せた年で、その点については自負もあります。ですが、バイオ全体がこれだけ落ち込んだ中で、ピンポイントでヒットした商品のみでは、バイオ全体を底上げできるほど市場は甘くなかった」
バイオは普通のパソコンになってしまった?
事業としてのバイオが不調に陥った背景は市場の読み違えなどがあるとして、他社からの追い上げも激しかった。市場全体のシュリンク幅よりも、バイオのシュリンク幅は大きい。バイオは以前ほどのブランドロイヤリティを維持できなくなってきたのか?
「バイオ自身のブランド力が下がったとは思っていません。しかし以前には存在した、他社との明らかな優位差は失われたと考えています。“他社製品がバイオになった”と表現するのがいいかもしれません」
他社との差が縮まってきたことは、カタログ表記などでも実感する。例えば、以前のバイオシリーズは、カタログ上でプロセッサ速度やメモリ搭載量、光学ドライブの機能など、スペシフィックな数字をアピールする文言がほとんどなかったが、最近のカタログは普通のパソコンカタログと変わらなくなってきている。
「われわれのお客さんはバイオに対して、他社とは違う何か特別なものを期待しています。他社とは違う、普通のパソコンを超えたところにバイオの存在する意味がある。ちょっとばかり機能がいいから、格好いいからバイオがいいという話ではありません。それは、バイオシリーズが生まれた時から要求されていることです」
この春から、バイオ関連のカンパニーが再び一つになった。新体制で何が変化するのだろうか?
[本田雅一, ITmedia]
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