News 2003年6月23日 01:05 PM 更新

MS、PDAと携帯電話に新ブランド“Windows Mobile”

くるくる入れ替わるWindowsのPDAプラットフォームの名称が、2003年は“Windows Mobile”に決まった。今度はPDAと携帯電話が統一ブランドとなり、無線LAN機能の向上、Windows Media 9のOS組み込みが特徴となる。

 ライバルであるPalmSourceとの競争で勢いを得つつある米Microsoftは、PDA用ソフトウェアの新バージョンを6月23日にリリースし、Pocket PCをユーザーにとって、より魅力的なものにするつもりだ。

 新バージョンのソフトウェアは「Windows Mobile 2003 Software for Pocket PCs」と呼ばれるもので、デジタルメディア、メッセージング、Bluetoothや無線LANを使ったワイヤレス接続に関するサポートが強化されている(6月12日の記事参照)。また、デベロッパーはVisual Studio .NETを使ってPocket PC用アプリケーションを作成できるようになったとMicrosoftは発表している。

 「この新しいリリースは、新機能をたくさん盛り込むことではなく、プラットフォーム自体といくつかの重要な技術分野を改善していくことにフォーカスする」とMicrosoftのモバイルデバイス事業部、主任プロダクトマネジャーであるエド・スワンジンダー氏はインタビューで述べた。

 Windows Mobile 2003 Software for Pocket PCsは、2001年10月にリリースされたWindows Powered Pocket PC 2002の後継となるソフトウェア。ベースになるOSがWindows CE 3.0からWindows CE .NET 4.2に移行したとMicrosoft。Windows MobileはMicrosoftがPDAと携帯電話用の自社製品に使用する新しいブランド名だと同社では説明している。

 Gartnerの主任アナリスト、トッド・コート氏は、このアップデートで最も恩恵を受けるのは企業のPDAユーザーで、コンシューマーは違いに気付かないだろうと指摘する。

 「このリリースは企業IT部門にとって、より重要なものだ。これにより彼らは、ワイヤレスがさらにサポートされるという自信を持てるようになるからだ。コンシューマーにとっては新しいメディアプレイヤー以外に目新しいものはない」と同氏。「ユーザーが要求しているもので、このリリースには含まれていないものがある。例えば、ランドスケープモードや高解像度ディスプレイなどだ」とコート氏。

 ワイヤレスに関しては新しいConnection Managerにより、802.11b無線LANハードウェアを搭載したPDAは自動的に接続を完了する。Bluetoothを使うデバイスも同様だ。また、Microsoftによれば、携帯電話のデータネットワークとの接続が改良され、デバイスがスタンバイモードであれば接続状態を保ち、ユーザーは電子メールやインスタントメッセージの受信をし続けることができるという。

 メッセージングの強化は、Microsoftの次期メールプラットフォームであるExchange Server 2003と組み合わせた場合に特に効果を発揮する。オンライン状態のユーザーは自動的にメールを同期させることが可能。また、ユーザーが添付書類付きメールのメッセージを転送しようとすると、その添付書類の転送はサーバ側で行われ、PDAから送信する必要はない。つまり、転送にPDAの狭いバンド幅を使わずに済む、というわけだ。

 エンターテインメント機能の改善は、OSに統合されたWindows Media 9によってもたらされる。これにより、オーディオ、ビデオの品質が大幅に向上する。また、Windows XP用拡張パックPlus! Digital Media Editionのユーザーは、PDAで閲覧可能な写真アルバムをデスクトップ上で作成することができ、オーディオ、ビデオのコンテントを同期させることもできる。

 Pocket PCソフトウェアのバージョンアップに合わせて、MicrosoftはGatewayと日本ビクターを新たなハードウェアパートナーとして迎えたことを発表した。両社は年末までに新ソフトウェアを搭載したデバイスをリリースするとMicrosoftでは明らかにしている。

 東芝、Dell、HPといった既存のパートナーはWindows Mobile 2003を搭載したデバイスを23日、Microsoftの発表と同時にアナウンスする。ここで発表される新製品には携帯電話向け機能は含まれていない。携帯電話PDAは今年後半にリリースされるとMicrosoftでは述べている。

 世界PDA市場は6四半期連続で対前年比マイナス成長に終わっているが、Microsoftの対PalmSourceのシェアは増加しているとGartnerのコート氏。

 2000年にはPalm OSは出荷されたPDAのうち65.5%を占め、MicrosoftのWindows CEはわずか12%だった。2002年にはPalmのシェアは55.1%まで落ち、Microsoftのシェアは25.8%まで上がったとコート氏は説明する。

 「いま何が起きているかというと、市場のコンシューマー側、つまり、Palmの側が減少しているということだ。企業向け市場は増加しているが、この分野はPalmとMicrosoftで市場を二分している。しかし、HPやDell、東芝などはエンタープライズの大手ベンダーでもあり、Microsoftはここでシェアを獲得している」とコート氏。

 ビジネスPDAの購入者は依然としてマイノリティーだが、安定性、使っているPCとの類似性などを理由にPalmよりもMicrosoftの方を好んでいるとコート氏は説明している。

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[IDG News Service]