News | 2003年7月1日 11:39 AM 更新 |
ネットワークとインターネットに関するイベント「NETWORLD+INTEROP 2003 TOKYO」が、幕張メッセで開催した。会期は6月30日から7月4日まで。
6月30日開催といっても、ブース展示、基調講演など本格的なイベントは明後日の7月2日から始まる。本日と明日の2日間はセミナー形式の「チュートリアル」「ワークショップ」プログラムが国際会議場で行われるのみ。ただし、プログラムはネットワークセキュリティからIEEE 802.11xをはじめとする無線LAN、広域インターネット技術やネットワーク関連の法律最新動向といった、これから普及する新技術や運用にまつわる問題など、実に幅の広いテーマをカバーしている。
セミナーは、2日間通しで行われる「チュートリアル」とチュートリアルをコンパクトにまとめた「ワークショップ」に分けられている。ただ、ワークショップでも、午前10時から午後6時まで同一テーマに関連するトピックスがまとめられている。ボリュームがかなりある充実したものだ。
IDFのようにコマで区切って複数のプログラムを渡り歩くのは難しいが、そのぶん、そのテーマに関する知識と動向を得るには非常に恵まれた機会だ。
会期を通してプログラムは用意されているので、興味のあるテーマが決まっているならば、まずはチュートリアルやワークショップで知識を身に付け、それから展示会で関連製品を目にするのが、もっとも効果的な「N+I」の利用法といえるだろう。
この記事では、最も広い会場で行われたワークショッププログラム「広域イーサネットソリューション〜サービス、運用、最新技術の観点から〜」の内容を紹介しよう。このワークショップでは、局所的なLAN網を接続するインフラとして、従来のWANで使われてきたATMの代わりに、10Gbpsベースのイーサネットを使うための、技術的課題や最新の規格や製品について説明が行われた。
10Gbpsのイーサネット規格は2002年6月に標準化の作業を終了し、IEEE規格委員会において正式承認が行われている。従来方式との互換性を重視したLAN PHYと、イーサネットとの一貫性を失ったものの、広域ネットワークで広く使われているSONET/SDHとのシームレスな接続性を重視したWAN PHYの二つのファミリーに分けられており、最大伝送距離は40キロに及んでいる。
ワークショップの最後に行われた、講師全員参加によるパネルディスカッションでは、広域イーサネットにおいて、現在注目されている諸問題について意見が交換された。その主な議論は、広域イーサネットそのものよりも、10Gbpsという高速ネットワークの必然性に集中した感がある。
10Gbpsという大容量帯域を必要としているクライアントの例として提示されたのが、米欧の先進ユーザーたち。「テラグリッドプロジェクト」というグリットコンピューティングの研究団体といったかなり特殊な用途が例としてあげられている。
一方で、現実的な例として紹介されたのが、日本におけるISP相互接続におけるインターネットエクスチェンジインフラとしての導入だ。日本における急速なブロードバンドの普及にあわせて、ISP間を流れるトラフィックはすでに20Gbps台に突入しており、年内には40Gbpsに迫る勢いとなっている。この部分の接続インフラに複数の10Gbpsイーサネットを導入する例が日本でいくつが出てきている。このように、従来会社内の幹線LANなどの「閉じたネットワーク」で普及してきた高速イーサネットとは異なり、ISP相互接続といった「開かれたネットワーク」での普及がまず進んでいるのが、10Gbpsの特徴として認識されている。
規格と技術の準備ができた10Gbpsであるが、本格普及のためには解決しなければならない問題も抱えている。ワークショップでも、普及が始まる価格の条件と、広域ネットワークとして求められる通信品質の確保について、議論が行われた。
普及価格については、過去の経験則から「価格が300ドルあたりになった時点で、本格的な普及が始まるだろう」と述べたものの、ネットワーク機器ベンダーからは一様に「300ドルで10Gbpsイーサネット周辺機器を出荷するのは相当無理をしないと不可能」という意見が出てきた。この問題では、「ISPの転送能力はどんどん上がっているのに、エンドユーザーが支払うコストはほとんど変わっていない。事業者は帯域を増やすために設備を増設しているのに、そのコストをどこから調達するのか」といった、ブロードバントビジネスの現状に対する疑問も提示された。
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[長浜和也, ITmedia]
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