News | 2003年7月3日 10:16 PM 更新 |
富士通は7月3日、同社の環境問題に対する取り組みを紹介する「富士通環境フォーラム2003」を富士通本社で開催した。フォーラムは、外部講師による「講演」と、環境対策の具体的なケーススタディを紹介する「テーマセッション」、環境貢献賞を受賞した活動内容をパネルで紹介する「展示」で構成されている。
ここでは、テーマセッションのなかから、工場の生産プロセスを見直して環境負荷を低減させる「グリーンプロセス活動」ケーススタディについて紹介しよう。
「グリーンプロセス活動」の取り組みは、2002年度から開始した。初年度は、全国に3カ所ある半導体量産工場のうち三重工場をトライアルとして選び出し、今年の3月まで試験運用を行ってきた。
半導体量産工場が選ばれた理由は、これらの工場における有害物資排出量が富士通全体の7割、エネルギー消費量も5割に達していたため。半導体工場で、グリーンプロセル活動を成功させれば、環境負荷削減において大きな効果があると、富士通は考えている。
工場で行われる環境対策活動は、従来「インプット」と「アウトプット」のみが対象だった。インプットとは、外部から調達して工場の中に入ってくる部材や原材料。アウトプットとは生産された製品や生産過程で発生した廃棄物のこと。「工場に入ってくるもの」と「工場から出て行くもの」だけに注目していたわけだ。
グリーンプロセス活動では、工場内部にあって生産活動に使われる機材や物質にも注目し、生産ラインごとに有害物質や消費エネルギーの削減を行っていく。そのため、従来の活動で対象とされてきた「資材系」以外に、新たに製造設備の運用や維持に使われる「副資材」を取り上げ、この両方のインプットから発生する排出物をチェックしていく。
活動内容は定量化された数値によって評価される。その指標として富士通が考え出したのが「CG指標」と呼ばれる値だ。CG指標を求めるために、ラインごとに使用する物質の量を調査する。調査の結果、判明した物質の使用量と、その物質の単価、そして、前もって物質ごとに定めておいた「環境影響度」。この3項目の積で、ラインごとのCG指標が算出される。
CG指標の算出で使われる「環境影響度」とは富士通が考案した新語。環境に与える影響によってランクが決められており、CG指標の計算ではそのランクがそのまま計算値として使われる。薬品・ガスのランクは5段階に分けられており、発ガン性など危険性の高いものが最も高いランク5として扱われる。
以下、ランク4には地球温暖化やオゾン層破壊といった地球規模で影響を与える物質、ランク3には大気汚染や水質汚染を引き起こして地域環境に影響を与える物質、ランク2には保護具で回避できる物質など、与える危険度の高さと、影響範囲によってランクが決められている。
グリーンプロセス活動では、活動開始前にCG指標を算出し、突出した物質を重点的な削減対象として対策を講じていく。この段階で重要なのが、事前に行われるCG指標の算出で作成される「コストテーブル」の精度だ。
実際に活動を推進した小泉元氏(富士通デバイス技術統括部プロセス技術部プロジェクト課長)によると、工程ごとの使用物質の種類と使用量は現場スタッフの「言い値」であるため、この言い値が実際に値とずれている場合がある。この「ずれ」の原因を解明して、どれだけ実際の値に近づけられるかに、活動の成果が影響されるそうだ。
また、対象になった物質の具体的な削減方法では「ガスが通っている配管の中で、比較的太いものを選び出し、その太い配管を使っている機械が関係する工程の見直しを行った」というように、地道な調査を積み重ねて、成果を上げているようだ。
活動の評価は、四半期ごとに算出されるCG指標の削減率と、環境関連法規の遵守状況などから採点した点数を100点満点で評価する。合格ラインは60点に設定されているが、通常レベルとして許されるのは70点台。活動を開始した時点には、不合格レベルの50点だったが、2002年度の第4四半期では90点に近いレベルにまで改善された。
昨年の三重工場トライアル運用を経て、今年からは会津若松工場と岩手工場でもグリーンプロセス活動が本格的に開始した。富士通では2003年度中に国内の事業所にこの活動を展開する予定になっている。
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[長浜和也, ITmedia]
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