News:アンカーデスク 2003年7月29日 09:34 AM 更新

「コピーワンスコンテンツ」がもたらす弊害(1/2)

デジタル放送が普及していくことで、今後はコピーワンスコンテンツが急増する。これは、デジタルレコーダーに新しい機能を実装する必要をせまるものといえるだろう。

 年末から始まる地上波デジタル放送は、多くの番組が「コピーワンスコンテンツ(1度のみ録画可能な番組)」になる。また現状ではごく少数の番組のみがコピーワンスコンテンツだったBSデジタル放送も、その多くが同時にコピーワンスに移行するようだ。

 こうしたコピーワンスコンテンツの増加は、「最終的にどこにコンテンツを保存するのか」という点で、今後のデジタルレコーダーのあり方を変えていく可能性が高い。というのも、コピーワンスコンテンツの場合、一度録画してしまうと、その番組は他の機器に対してコピーすることができなくなるからだ。

アナログだってコピーできない

 現在のデジタルレコーダーは、著作権保護されたコンテンツを「アナログ出力」する場合に、少なくとも2種類のコピープロテクションを施しているケースが一般的だ。

 まず一つが、市販のビデオパッケージなどでもおなじみの「マクロビジョン」。もう一つが、「CGMS-A(Copy Generation Management System Analog)」である。

 次世代のBlu-ray Discなどでは、この二つに加え、ウォーターマークも採用している可能性が高い。ウォーターマークは、コンテンツそのものに埋め込まれているため、マクロビジョンやCGMS-Aよりも除去されにくいというメリットがあり、いずれすべてのデジタルレコーダーで必須の機能になっていくことは間違いないだろう。

 一方、デジタルレコーダーには、マクロビジョンとCGMS-Aを検出する回路も搭載されており、これらのいずれかが施されたコンテンツが入力されると、自動的に録画が停止されるように設計されている(いや、ウォーターマークも検出できるかもしれない)。

 コピーワンスコンテンツが増加しても、「アナログだったらコピーできるさ」――と思っていた方は少なくないだろう。だが、それは基本的に間違いだ。コピーワンスコンテンツは、デジタルレコーダーを使用する限り、アナログを使ってもきちんと録画が制限される仕組みがすでに一般的になっているからだ。

 加えて、PC用のTVチューナーキャプチャーカードなどでも、この機能を実装した製品がすでに発売されている。デジタル方式によるテレビ番組の録画に対する制御の仕組みは徐々に整備され、水面下でその対応がちゃんと進んでいるのだ。

「TV録画と複製の制限」がデジタルレコーダーを変える

 結果として、デジタルレコーダーの普及とデジタル放送への移行は、これまで自由に近かった「TV番組の録画」に制限が加わるだけでなく、その「録画したもの」の複製についてはほぼ完璧に制限されることになる。こうなると、どうしても手元においておきたい(保存しておきたい)番組をどうするかということを真剣に考えなければいけなくなるだろう。

 例えば、何のアーカイブストレージも持たない純粋なHDDレコーダーの場合、保存しておきたい番組が出てきたときにどうするのだろう――デジタルでの複製ではもちろんダメ、アナログもダメだとしたら、内蔵されているHDDは、いずれ食いつぶされてしまうからだ。

 日本の場合、2011年に地上波アナログ放送が停止される予定になっている。既存のアナログ放送については、移行までに時間がかかるので、現状ではそれほど大きな問題ではない。

 しかし、いずれ、半ば強制的にデジタル放送に移行していくことになる。おそらく、コピーワンスのコンテンツは、増加することはあっても減ることはない。すると、HDDのみを搭載したデジタルレコーダーは、純粋なタイムシフト需要に対しては有効だが、残しておきたい番組を録画するといった用途では、とたんに不便な機器になってしまう。

 こういった状況を考えると、今後、純粋なHDDレコーダーは、すぐにではないにせよ、内蔵されているHDDをカートリッジ式にするといった“リムーバブル”HDDに移行していく可能性がある。もし、本当にそうなるとすれば、各社が独自にインタフェースを決めたりせず、少なくとも共通のインタフェースや形状を策定することが望まれるだろう。

PCでの録画にも制限がかかる?

 また、現在、人気が高いPCを使ったテレビ番組の録画はどうなってしまうのだろうか。PCでも、当然コピーワンスコンテンツの制限は守る必要があるからだ。

[赤波子, ITmedia]

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