News | 2003年8月6日 10:17 PM 更新 |
松下電工は、広島大学大学院との共同研究で開発した次世代空気浄化システムを8月6日に発表した。同時にこのシステムを搭載した空気清浄機も発表、9月1日から出荷を開始する。
今回開発された空気浄化システムは、6000Vもの高電圧によって水を18ナノメートルという微粒子水に分解、この微粒子水で反応性が高い“ラジカル”を包み込むところが大きな特徴になっている。このようにラジカルを包み込んでマイナスに帯電した微粒子水を松下電工は「nanoe」(ナノイー)イオンと命名している。
ラジカルとは、2対の電子で安定する物質から電子を一つ取り除いたもの。電位が高く反応しやすいため、臭いの元になる物質や、細菌などの有害物質と反応しやすい。今話題の「マイナスイオン」も、このマイナスに帯電したラジカルを指している。
従来の放電式「マイナスイオン発生家電」では、ラジカルをむき出しのまま空気中に放出していたが、反応しやすいラジカルは、取り除きたい有害物質と反応する前に、大気中の窒素や酸素と反応して数秒単位で消滅してしまう。ところが、ラジカルを水で覆っているnanoeイオンは、水に溶けにくい酸素や窒素と反応しないため、大気中に長時間残留できるのがメリットだ。
これまでの放電式マイナスイオンでも、有害物資を取り除くことができたのだが、あっという間に消滅してしまうため、マイナスイオン発生装置のすぐそばでしか効果がなかった。現在販売されている「個人用マイナスイオン発生装置」がヘッドセットのような形をしているのも、発生したマイナスイオンをすぐに人体に取り込むため(でも、取り込んだマイナスイオンが、一緒に吸い込んだ酸素より先に有害物質と反応するとは限らないのだが。そういえば、マイナスイオン発生機能を内蔵したデスクトップPCもあるが、バックパネルから発生させていたので、人体にどれほど効果があったのかは疑わしいところ)。
もともと松下電工は、空気清浄機の新しいシステムとしてnanoeイオンを研究していたが、長時間残留する性質と、18ナノメートルという微細サイズによって、これまでの空気清浄機では実現できなかった作用も確認されている。
とくに、世界初の効果として注目されているのが、花粉抗原の不活性化効果と、布などに付着した臭いの脱臭効果だ。
花粉の不活性化では、花粉に付着している抗原をnanoeイオンで覆い、細胞の抗体と結合させないようにする。測定を依頼されたNPOの「花粉情報協会」の調査によると、nanoeイオンを1分間放出すると、71%の花粉が不活性化状態になったとしている。
このほかにも、nanoeイオンによって細菌やカビ、ウィルスを不活性化し、かつ変性させて無害化させるなどの効果も確認されている。松下電工の依頼で細菌の不活性化評価を行った北里環境科学センターでは、O-157とMRSAで菌の残存率を測定したが、容積1立方メートルの測定器内で30分nanoeイオンを噴射したところ、MRSAを100%不活性化するのに成功している。
現在のところ、不活性化効果が確認されているのは北里環境科学センターで評価した2種類の細菌だけ。記者発表で配布された資料には、開発背景のトレンドとして「SRASウイルス危機」という言葉があり、一見、SRASにも効果があるような印象を与えていたが、松下電工の谷水洵氏(電器分社役員 リビング・ライフ事業部事業部長)は「原理的には効果があると思われるが、検証はまだ行っていないので、SRASを不活性化するとは現時点では言えない」と述べている。
nanoeイオンを利用した最初の製品として登場する空気清浄機「エアーリフレ nanoe」は、最大24畳の広さをもつ室内の空気を清浄する。記者発表の冒頭で、谷水氏は「nanoeイオンの応用範囲は広く、住宅メーカーである松下電工としては、家1軒、車両1台、ジャンボジェット1機、東京ドーム丸ごと、といったような展開も考えている」と発言したが、加えて「nanoeシステムは登場したばかりなので、社内でも事業計画についてこれから考えるところ」と、nanoeイオン発生ユニットのOEM化も含めて、具体的な計画は白紙状態にあると説明した。
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[長浜和也, ITmedia]
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