News 2003年8月29日 05:17 PM 更新

パーツベンダーに聞く2003年後半の一手その2「AOpen編」

台湾系主要マザーボードベンダーに、今年後半の製品展開についてインタビューを行うシリーズ。第2弾はAOpen。インテルプラットフォームを主軸にラインアップを展開するAOpenはAthlon 64でどんな「一手」を考えているだろうか?


今回話を伺ったエーオープンジャパンスタッフ。左から方啓州氏(企画部広報担当)、羅欣倫氏(企画部チーフ)、・靜菁氏(企画部広報担当)

 Intel 875Pや865G/PEといったFSB 800MHz対応チップセットが登場したおかげで、今年前半のマザーボード業界は売り上げを伸ばしたのでは? と、思っていたが、AOpenからは「堅調だったけどIntel 875Pや865シリーズに対してユーザーは冷静だった」(羅氏)と意外な答えが返ってきた。

 この原因としてAOpenが考えているのが「FSB 800MHzのもたらすパフォーマンスのインパクトが、ユーザーに対してまだ浸透しきれていない」(羅氏)。それを示す実例として、Intel 845GE/GVといった、値ごろ感の出てきたFSB 533MHzの売り上げが依然として順調なことを上げている。FSB 800MHzのシステムがパフォーマンス的に圧倒的優位であることをユーザーが理解しているなら、性能重視の自作PCユーザーはFSB 800MHzを選択するはずだからだ。

 AOpenは、FSB 800MHz対応プラットフォームが今ひとつ盛り上がりに欠けるもう一つの理由として、選択できる製品の数が少ないことも挙げている。現時点で選択できるチップセットがインテルのものに限られてしまうため、マザーボードのバリエーションが少なく、ユーザーの選択肢の幅が狭いため、どうしてもマザーボード市場が活気に乏しくなってしまうというわけだ。

 AOpenとしても「インテル以外の」選択肢が登場して、マザーボード市場を盛り上げて欲しいと思っているところなのだが、肝心のサードパーティチップセットベンダーである「VIA」と「SiS」の話になると、どうしても厳しい意見が出てしまう。

 SiSがまもなく投入を予定しているSiS 655FXや、VIAから今年の末に登場すると言われているチップセットでは、FSB 800MHz、DDR 400のデュアルメモリバスサポートなど、ようやくインテルのチップセットにスペックが追いつくことになっている。

 羅氏は、AOpenでもSiS 655FXを搭載したマザーボードを市場に投入することを明らかにしてくれたが、それでも、「ユーザーの選択肢を広げるためにラインアップに加えるが、ビジネスの見通しについては慎重にならざるを得ない」と考えている。

 「いち早くFSB 533MHzをサポートしたSiS655が登場したとき、ショップもユーザーも好意的に評価してくれたおかげで、売り上げを順調に伸ばすことができた。しかし、インテルがチップセットの価格を引き下げたとたんに、SiS655を搭載したマザーボードは売れなくなってしまったことがある。SiS 655FXも、登場した時点ではユーザーにとって有力な選択肢となるだろう。しかし、インテル次第でSiS655と同じ状況にならないとは、誰も言い切れない」(羅氏)

 では、そのインテルが今月末から登場させた「FSB 800MHz対応、DDR400シングルチャネルサポート」のIntel 848Pに対しては、AOpenはどのように見ているのか。

 「このチップセットに関しては、2カ月前から情報をもらっていたが、スペックがシュリンクされているのに価格はそれほど下げられていないなど、正直言ってユーザーやショップの反応はあまりよくない。もちろんユーザーの希望が多ければ出荷されることもあると思うが、それよりも、Intel 865シリーズを充実させ、一方でIntel 845GE搭載マザーを安価に提供するほうが、ユーザーにとってはメリットが大きいだろう」(羅氏)

 一時期、AMDプラットフォーム対応マザーを積極的に登場させていたAOpenであるが、現在はインテルプラットフォームに主軸を大きくシフトさせている。そんなAOpenでも、これから登場するAthlon 64に対しては、nForce3 150を搭載した「MK89-L」とVIAのK8T800を搭載した「AK86-L」を、AMDの発表にあわせて市場に投入するべく準備を進めている。


K8T800を搭載した「AK86-L」。nForce3搭載マザーと比べ、Serial ATA、RAID(0、1)をサポートするなど、インタフェース面で充実している。実売価格は1万8500円前後を予定。ちなみにnForce3 150搭載の「MK89-L」の実売価格は1万8000円前後の予定

 ここで興味を引かれるのが、nForce3 150搭載マザーがMicroATXフォームファクター、K8T800搭載マザーがフルATXフォームファクターであること。

 この切り分けは「ワンチップのnForce3 150はMicroATX、Serial ATAやRAID(0 or 1)をサポートするK8T800&VIA8237の組み合わせはフルATX」と単純な理由で決めたものではないらしい。10月下旬には、逆にK8T800を搭載したMicroATXマザー、nForce3 150を搭載したフルATXマザーが登場する予定だ。

 「日本でメインのマザーボードはMicroATX。nForce3 150とK8T800のパフォーマンスを比較すると、数字はまだ明らかにできないが、AOpenの社内で評価した結果ではnForce3 150が優れていた。そのため、日本で最も競争が激しいMicroATXマザーとしてnForce3 150を搭載した製品をまず始めに投入することになった」(方氏)

 このように、Athlon 64に登場に向けて製品を用意したAOpenであるが、その見通しについては「大丈夫か、という不安がある」(羅氏)

 「登場した当初は価格も高いだろうし、重要な特徴である64ビットコンピューティングに対応したOSもアプリも、どうなるか見えてこない。ユーザーに対してどのようにメリットをアピールできるだろうか」というのが、不安を掻き立てる一つの要因。

 そして、やはりAOpenも「Athlon 64が順調に市場に供給されるのかという視点から考えると、これまでの経験から考えると慎重にならざるを得ない」(羅氏)ようだ。

 パーツベンダー(そしてそれ以上に台湾チップセットベンダー)が待たされ待たされ、忍耐力を極限まで試された感のあるAthlon 64の登場を、AOpenも「今年後半のマザーボード需要のきっかけ」と見ているのは、ほかのマザーボードベンダーと同様のところである。そして「そのためには、十分な数が出てきてくれないとダメだよ」と一抹の不安を抱えているのも、これまたベンダー共通の見解のようだ。

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[長浜和也, ITmedia]

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