News 2003年9月18日 09:04 PM 更新

パーツベンダーに聞く2003年後半の一手その6
「MSIのMEGAシリーズはビデオデッキPCを目指す」

マザーボードにビデオカードと、バリバリのパーツベンダーに見えるMSIも、今やMEGAを初めとする本体PC系の製品に活路を見出そうとしている。MEGAシリーズはどこまで進化していくのだろうか。

 WPC EXPO 2003のMSIブースや、アキバで行われたプライベートイベントを訪れた人は気が付いていると思うが、今、MSIが最も力を入れているのは、マザーボードでもビデオカードでもなかったりする。もちろん、これらがMSIの主力製品であるのは、これから先も変わらないのだが、MSIはこれまでのパーツビジネス一辺倒から、パーツ以外の事業を本格的に拡大していく方針だ。

 この方向転換は、競合他社が一様に感じている「パーツ市場の成熟化」が大きく影響している。パワーユーザーに支持されているMSIでも「パーツの売り上げは横ばい」(趙子欽氏 エム・エス・アイ・コンピュータ・ジャパン代表取締役)。事業拡大のためには「初心者も楽しめるほかの分野に進出し、MSIの競争力をアップしなければならない」(趙氏)という事情が、パーツビジネス以外へ注力する大きな動機となっているようだ。

 「初心者でも楽しめる」ために選んだのがデジタル家電の領域。「MEGA」シリーズのフロントデザインがミニコンポを強く意識しているのも「量販店でメーカー製PCのコーナーではなく、HiFi機器のコーナーにおいてもらえるようにするため」(趙氏)


WPC EXPO 2003で公開されたニューデザインMEGA

 ただし、初心者が楽しめることを目指す「MEGA」シリーズはベアボーンとして販売されている。確かにプレイヤーとして使うだけなら、CPUやメモリ、HDDなどのPCパーツを必要としないが、せっかく4万円近い金額を払って購入するのだから、PCとして利用範囲を広げたいところ。

 ところが、以前ZDNetでMEGA 651を評価したときに、筐体内部のスペースに余裕がなく、かなり作業に慣れていないとパーツの組み込みは難しいと感じた。初心者も楽しめる「MEGA」であるなら、これは気になるところだが、MSIは「販売予定が遅れたのは、評価中に判明した熱対策や筐体内部のスペース確保の改修を行っていたため。製品ではこれらの問題は解決し、パーツの組み込みも簡単にできるようになった」(石岡宣慶氏 同社マーケティング担当)と述べている。

 「初心者も楽しめる」ことを考えるならば、PCパーツを組み込んだ完成されたPCとして「MEGA」シリーズを販売すべきとも考えるのだが、MSIはあくまでもベアボーン販売に固執している。「本体PCとしてMEGAが販売されるのは、MSIがMEGAをOEMとして納入した業者が、自分でパーツを組み込み、その業者のブランドとして販売するケースだけになるだろう」(石岡氏)。実際、このような形態で、ショップブランドとして販売される計画もある。

 このようにベアボーン販売に限定されたMEGAシリーズと対照的に、ノートPC「PenNote3100」はMSIから本体PCとして販売される。ただし、それは「急激な展開ではなく、小規模に始めていく」(趙氏)。MSIが気にしているのは、本体PCを扱う場合に必ずユーザーから求められるになる「質の高いサポート」なのだ。


感圧式タッチパネルを採用し、ノーマルのWindows XPでペンコンピューティングを可能にした「PenNote3100」

 もちろん、これまで行ってきたパーツ系製品のサポートは、長年のノウハウの蓄積もあってマザーボードベンダーの中でもかなり充実しており、ユーザーの評価も高い。しかし、本体PC、とくにデスクトップPCとなると、ユーザーによるアップグレードも行われるなど、対処する範囲は格段に広くなりサポートも難しくなる。「ノートPCは、ユーザーが手を出せるところがほとんどなく、ほぼ販売した状態でサポートが行える。そのため、ノートPCは本体販売、デスクトップPCはベアボーン販売にした」(石岡氏)

 MSIはAMDが行ったOpteron発表会に、ビジネスパートナーとして出席しているが、現在、Opteronで構成されたシステムの法人販売やコンサルティング業務に乗り出す予定はない。この理由もやはり、サポート体制などの人的リソースの制約。法人を相手にしたビジネスは、これまでどおり、SI企業に対してパーツを納入していく形を考えている。

 このようにMSIのIA事業は、GIGABYTEのように法人ではなく、あくまでもコンシューマーをターゲットに展開されていく。その主力となるMEGAシリーズは、近日中にAthlon XPベースの製品が加わる予定。しかし、これまで登場した製品は「MEGAシリーズのフェーズ1」(趙氏)でしかない。どうやら、今年度中に「MEGA 2」「MEGA 3」を登場させる予定らしい。

 次のシリーズのMEGAがどのような姿になるのかは、まだ明らかにしてもらえなかったが、「当然ビデオデッキPCの方向に発展することになるだろう。マザーボードのチップセットもビデオ機能を内蔵したnForce3やIntel 865Gといった高性能のものに変わっていく」(趙氏)

 台湾パーツベンダーがIAビジネスに進出するときに問題になる販路についても、「PenNote3100や、高機能MP3プレイヤーのMEGA Stickなど、一般ユーザーを対象にした製品は全国で販売する予定。そのためには当然量販店に販路を展開しなければならないので、現在その作業を積極的に行っている」(石岡氏)と、台湾ベンダーとしては珍しく、日本の商習慣に積極的に受け入れようとしている。

 IAビジネスの今年の目標を「パーツビジネスの1割」を設定しているMSI。これまでの自作PCユーザーとはまったく異なる日本全国の初心者ユーザーに「PC関連機器ベンダーのMSI」と認識してもらえるかどうか。これは量販店にMSIがどれだけ食い込めるかにかかっているといえるだろう。

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関連リンク
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[長浜和也, ITmedia]

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