News 2003年9月19日 09:09 PM 更新

ミカンや牛乳にも「RFID」――NTTデータなどがスーパーで実証実験

NTTデータ、丸紅、マルエツの3社が、食料品流通分野でのRFID(無線ICタグ)実証実験を行う。ミカンや牛乳など単価の安い食料品にRFIDを付け、生産者から消費者の手に渡るまでの流通過程でのRFIDの有効性を検証する。

 NTTデータ、丸紅、マルエツの3社は9月19日、食料品流通分野でのRFID(無線ICタグ)実証実験を9月24日から開始すると発表した。実証実験は、東京都江東区にあるスーパーマーケット「マルエツ潮見店」で実施。生産者や食品メーカーから出荷された食品が卸売業者を経て店頭に並び、最終的に消費者の手に渡るまでの流通過程でのRFIDの有効性を検証する。

 物流でのRFID導入は、すでに一部アパレルメーカーなどで始まっているが、RFID1個の価格が数十円から百円台とまだ高価なことから、食料品など単価の安い商品への導入は現段階では難しいとされていた。だが、RFIDのコストダウンに向けた研究開発が昨年から今年にかけて活発となっており、1個5円以下のRFIDも見えてきている(別記事を参照)。

 「食料品流通でのRFID導入には、運用面でさまざまな問題が考えられる。これらをあらかじめ検証しておくおことで、RFIDの標準化促進や普及を後押しするのが実証実験の目的」(NTTデータ)


実証実験で食料品に取り付けられるRFID

 実験期間は9月24日から11月23日までの約2カ月間。第一段階(9月24日〜9月26日)として、無線ICタグ導入によって物流作業がどれだけ効率化されるかの検証が行われる。具体的には、商品、ケース、パレットに無線ICタグを貼り付け、入出荷検品や在庫管理などへ活用する。

 第二段階(10月6日〜11月23日)では、生産者(食品メーカー)から店舗までの検証を実施。無線ICタグ付きの商品が出荷され、物流ルートを通過するときの情報登録・活用や、店舗での商品陳列や棚卸、消費者へのサービス提供などへの活用などを検証する。

 実験期間中に使用するRFIDは約5万個を予定。実験場所となるマルエツ潮見店には、ラベル型のRFIDが貼り付けられた生鮮食品や加工品などの食料品約90アイテムが並べられる。デモンストレーションではRFIDが付けられた大根が用意されたが、生鮮食料品として現段階で候補に上がっているのはミカン、キャベツ(減農薬タイプ)、牛乳、ヨーグルト、牛肉など。


食料品に取り付けられるラベル型のRFIDと、ラベルを貼り付けた食料品

 また、同店のユーザーを対象に消費者モニター100人を募集し、モニター専用のカード型RFIDを配布。店内に設置された情報表示端末で、生産者からの商品情報や、調理レシピといった食料品に関するさまざまな情報が、個々の消費者のニーズに合わせたカタチで提供される。この情報端末は、一般ユーザーも利用可能。その場合の各種情報は、タッチパネルからユーザーが選択する方式となる。


大根を端末にかざすだけで、生産者情報などが瞬時に表示される

 RFIDの無線方式には、国内でもRFID用としてすでに普及している13.56MHz帯の電磁誘導方式を採用する。ただしこの周波数帯は、タグ情報の読み取り可能距離が最大でもハンディタイプのリーダーで20センチ以下、物流システム向けの大型読み取り装置でも70センチ程度と短いのが弱点。欧米では読み取り距離が6〜10メートルと長いUHF帯が主流となっているが、欧米方式のUHF周波数帯は、国内では携帯電話などで使用されているため、長距離通信用には2.45GHz帯が割り当てられている。

 今回の実証実験では、第三段階(11月以降実施予定)としてUHF帯電波方式の検証も計画されている。

 「長距離の読み取りが行えるUHF帯のメリットを生かして、物流センターでの検品や在庫管理に活用したい。UHF帯を利用すれば、フォークリフトでモノを運ぶ時に情報を読み取ってしまうといったこともできる。日本ではまだ認可されていないが、経済産業省でもUHF帯を利用したRFID実証実験が推進されているので、検証の認可もおりると確信している」(NTTデータ)

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[西坂真人, ITmedia]

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