News 2003年10月2日 06:35 PM 更新
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MS批判の元@Stake幹部が語る解雇劇の真相

Microsoftを批判したことを理由に解雇された元@Stake幹部は、「いつもと同じ」やり方で報告書を作成したと説明する。「唯一違ったのはCEOの反応」だった。(IDG)

 セキュリティコンサルティング企業@Stakeの元最高技術責任者(CTO)ダン・ギア氏は先週、ソフト業界におけるMicrosoftの独占力がセキュリティに及ぼす影響に関する社外の研究に参加したことを理由に同社を解雇された(9月26日の記事参照)。同氏は9月30日、マサチューセッツの自宅からComputerworld編集部ダン・バートンによる独占取材に応えた。

――9月25日に何が起きたのかをご自身の言葉で説明していただけますか?

ギア氏 担当弁護士から、何も詳しくは語らないよう注意されているものですから……。ただ、私は自分の解雇をプレスリリースで知りました。そして、ようやく最高経営責任者(CEO)と話ができたときの彼の言葉は冷たく短いものでした。彼はただ「もはや当社にあなたは不要だ」とだけ言いました。それだけでした。その後も、それ以上の説明は何もありません。

――@Stakeはあなたの今回の行動について、「必ずしも報告書の内容すべてに反対というわけではないが、Microsoftが当社のクライアントであることを考えれば、この研究に参加したことは自社の主要クライアントに対する配慮に欠けた行動だったと言わざるを得ない」と指摘しています。筋の通った話だと思いますか?

ギア氏 私の経歴を知っている人であれば、私が長年の経験による専門知識に基づき、誠実に判断を下していることを理解しているはずです。マーケティングという観点から、すべての要素をチェックするわけではありません。そもそも私が@Stakeに採用されたのも、言うなれば、広い視野で大局的見地から物事を捉え、状況を公正に審判できる能力故です。

 かつて私は誰かに、若い審判員と中堅の審判員と老練な審判員の違いをこう説明されたことがあります。若い審判員ならば「ボールかストライクか、私は見えた通りに言う」と言い、中堅の審判員ならば「私がボールかストライクかを決めるまでは、ボールでもストライクでもない」と言い、老練の審判員ならば「ボールかストライクかを決めるのは私だ」と言うだろうというものです。少し厚かましいかもしれませんが、私は自分がこの老練の審判員に近付きつつあると思っています。私は、自分ができる限り率直にコメントできることについては何でもコメントするようにしています。それが私のやり方です。ですから、私にしてみれば、今回の報告書もいつもと同じごく普通の仕事でした。唯一いつもと違ったのが@StakeのCEOの反応でした。

――なぜ、この報告書を業界団体のComputer & Communications Industry Association(CCIA)に提出することを選んだのですか? この団体はMicrosoftに対して批判的であることが知られています。ほかにも、もっと公正とされている団体やメディアをいくらでも選べたでしょうに。

ギア氏 私には軌道に乗せたい衛星があり、彼らにはそのための打ち上げ機があった、ということです。私は、この報告書が葬られる心配のないような団体を選びました。これが全面的な成功につながったのだと思います。私に対する非難は宣伝にもなっています。まさに思わぬ成果と言えるでしょう。

――多くの人たちは、この報告書の基本的な見解、つまり一枚岩のIT環境は異成分からなる環境と比べてセキュリティが弱いという考えに同意しています。ですが、ワシントンを拠点に活動するCCIAと接触し、同団体との関連性を持たせたことが、ご自身やこの報告書にとって裏目に出たとは思いませんか?

ギア氏 私が@Stakeに採用されたのは、私には名声、評判、支持者があり、@Stakeにはそれがなかったからです。特に驚くべきは、私が@Stakeの評判によって得たものよりも、@Stakeが私の評判によって得たものの方が多いという点です。

――多くの人たちは、この報告書の基本的な見解に賛同していますが、一部からは「異成分からなるIT環境では、設定のつたなさが、一枚岩のIT環境と同じくらいのセキュリティ問題をもたらす可能性がある」との指摘もあります。

ギア氏 確かに、その問題はあります。必要以上の修正を加えてしまう可能性もあります。ですが、もしどちらかを選ばなければならないのであれば、私には迷う余地はありません。設定の難しさに関して言えば、それは大半の大規模システムに設定すべき項目が多すぎることによるものです。設定すべき項目が多いと、ユーザーもそれらをきちんと設定しようとしません。ユーザーがデフォルトの設定を変更しないのは、項目が多すぎるからです。もし私の車にボーイング747のようなフロントエンドが搭載されていれば、私は怖くて街中を運転などできないはずです。それがこの問題の核心です。ただし、そうした懸念は無理からぬものです。もし皆がボーイング747のようなフロントエンドを雑多なバージョンで使うことになれば、私にもどうすればいいか分かりません。エンジニアとして言わせてもらえば、「簡単であること」は優れた設計の目標であって、決して出発点ではないのです。

――@Stakeについて、あるいは今後の就職についてなど、これからのプランはどうなっていますか?

ギア氏 私の今後については、今、いろいろなオファーが殺到しているところです。残りの人生でできることは尽きそうにありません。

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