News | 2003年11月6日 02:29 AM 更新 |
11月5日に東京で行われた「インテル・テクノロジ・セミナー」では、インテルが新しく開発した「High-k」「メタルゲート」を利用するトランジスタの特性解説を始めとして、まもなく登場する90ナノメートルプロセス半導体で利用されている技術や、次々世代を目指したマスク技術など、主に生産技術に関する最新の状況が紹介された。
インテルの城浩二氏(取締役開発製造技術本部長)は、最近の生産技術に関する研究成果によって「ムーアの法則は10年先まで通用する目処がついた」と述べるほどに、インテルにとって「ムーアの法則」は依然として重要な道しるべとして認識されている。「2010年には操作周波数20GHz、トランジスタ数は10億個以上」(城氏)が求められる半導体のプロセスは、これからも2年ごとにダウンサイズを進めていくことになる。
城氏の説明によると、インテルが描いているプロセスサイズのロードマップでは2003年に65ナノプロセス、2007年の45ナノプロセスの導入がそれぞれ予定されている。
また、90ナノプロセスで50ナノであるゲート長は、現在、研究所レベルで15ナノのプロトタイプ試作を成功させており、「あとは大量生産に関する課題を解決するのみ」という段階まで達している。2007年に登場する予定の45ナノプロセスのゲート長が25ナノ以下と予想されているので、さらにその先の微細化まで実現の目処が立っていることになる。
High-Kとメタルゲートを使った半導体開発の説明は、このセミナーのために来日したIntelのロバート・S・チャウ氏(フェロー兼技術・製造本部トランジスタリサーチディレクタ)によって行われた。
High-k(高誘電率材料)をゲートの絶縁膜に使うのは、プロセスの微細化によって大きな問題となりつつある「漏れ電流」を抑制するため。現在は「理想的な素材で、代替え素材への移行は心臓移植にも匹敵する」(チャウ氏)と開発者に言わしめる二酸化シリコンが使われている。
しかし、微細化に伴う薄膜化が原因で発生する漏れ電流を抑えこむために、インテルは「厚くて」「大量の電流を流せる高誘電率」な素材をゲートの絶縁膜に採用した。インテルのデータではHigh-kを採用した場合、誘電容量は従来より60%アップしゲートの漏れ電流は100分の1までになった。
効率が向上し漏れ電流が減るのだから、すぐにでも採用したいHigh-k絶縁膜だが、これまでゲート電極の素材として使われているポリシリコンと組み合わせると、トランジスタを動作させるしきい電圧が上昇する現象が発生する。これでは駆動電圧が高くなってしまうわけで、省電力とパフォーマンスに大きく影響してしまう。
また、High-k素材の物性的問題でポリシリコンと接触させるとHigh-k絶縁膜の内部で「フェノン振動」が発生し、電子の流れを阻害する問題も発生する。
これらの問題を解決するために採用されたのが「メタルゲート」。しきい値の向上とフェノン振動を解決し、かつ駆動電流を大量に流せる半導体が実現できるようになった。現在量産に向けた開発が進められており、2007年に登場する45ナノプロセストランジスタで採用される予定になっている。
このほかセミナーでは、開発製造技術本部のリソグラフィ開発部長である大藤武氏から「先の先」の半導体の生産に必要になるEUV(極紫外線)用マスク技術についての説明や、テクノロジーソリューションセンター部長の石川公也氏による、パッケージングテクノロジーの説明が行われた。
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[長浜和也, ITmedia]
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