News 2003年11月12日 03:00 PM 更新

「機能のシェイプアップは退化ではない」──バイオノート505 EXTREME(2/3)


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 PC購買層の中心に向けた確実に売れる製品ではないが、誰もが驚き、注目し、記憶に残してくれる。そんな製品を目指したわけだ。マスをターゲットにした製品では、ユーザー対象を広げすぎ、製品コンセプトが曖昧になることもあるが、X505のプロジェクトではそうしたコンセプトの揺れは皆無だったという。「薄く、軽く、カッコいい。そのためには何でもやろう。言葉を掛け合うまでもなく、全員が共通の意識で動いていた」(加藤氏)

削ることが後退だとは思わない

 携帯するノートPCとして、必要なものだけにシェイプアップした新しい製品を作る。はっきりとした一つの目標に向かっていた開発チームは、本体から機能を削ることに迷いはなかった。

 筐体にはモデムも無線LANも実装されていない。有線LANはインターフェイスこそ内蔵しているものの、専用コネクタから引き出すアダプタが必要になる(このアダプタはVGA出力機能も兼ねるもので、本体に同梱されている)。筐体にあるのはPCカードTYPE IIスロットとUSB 2.0を2ポートにiLINK1ポート。無線LANも標準で添付しているアンテナの出っ張りが小さいPCカードを利用する。専用デザインのモデムカードはオプションで用意されている。

 誰もが必ず使うと「思われる」機能はPCカードやアダプタで対応し、モバイルPCとして最低限の要素のみを筐体に内蔵したわけだ。


キーボードを後ろに設置したデザイン案もあったが、それでは薄さのインパクトが出てこなかったらしい。右側面に設置されているのはTypeIIのPCカードスロットとサウンド端子のみ


筐体左側面にあるのは、電源供給ジャックと併設されたi.LINKにUSB 2.0が2ポートとLAN/VGA出力アダプタを接続する専用コネクタ。電源コネクタがある円柱パーツの反対側には電源スイッチが用意されている


X505とデザインをそろえたオプションパーツ類。エクゼクティブモバイルパッケージには、本体と周辺機器をまとめて収納できるアタッシュケースが「標準」でセットされている


標準で用意されたマウスと無線LANアダプタ。マウスにはメモリースティックが搭載されている。このように、本体内蔵のインタフェースをギリギリまで省き、その分薄さと軽さを追求して、その代わりに周辺機器でカバーするのがX505のアプローチとなっている

 ライトウェイトスポーツカーを例にコンセプトを示してくれた西野氏はこう語る。「機能を削ることは、機能を拡張してきたノートPCにとって退化だと見る人がいるかもしれない。しかし、機能を増やす一方ではなく、必要なものだけに絞り込み、それによってシェイプアップされた製品を作ることが退化だとは思わない」  もっとも、近年の「全あり」傾向の仕様から考えると、本機のスペックが最小限なものであることは明白だ。512Mバイトを搭載する「増設も換装もできない」メインメモリは、現時点では十分だろうが、今後ソフトウェアの進化によっては足りなくなる可能性も否定できない。1.8インチ1プラッタの20GバイトHDDも、ノートPC用HDDの容量が80Gバイトになっている今、どうせなら2プラッタの40Gバイトにしてほしいと考える読者も少なくないはずだ(もちろん、それらを実現するにはX505のフォルムを、もう少し太くする必要があるが)。

 「X505に関して、モバイルPCに必要とされるスペックを切ったつもりはない。増設は不可能だが、その分、内蔵メモリには余裕を持たせた。持ち歩くためのサブノートPCとしてならば、20Gバイトの容量で十分実用に耐えうると考えている。ネットワーク接続に関して言えば、同時に使うのは一つだけ。ならば用途には合わせてユーザーに選択してもらうのがいい」

 「今回、筐体からメモリースティックスロットを省き、添付したマウスにメモリースティックリーダ/ライタの機能を持たせたのも同じ考え方です。本体はミニマムで必要なものだけを入れ、それ以外はPCカードや標準添付の周辺装置でカバーすればいい」(加藤氏)

 とはいうものの、筐体にどのような仕様を盛り込むかは、かなり議論を積み重ねた部分だという。とくに、「ユーザーがどのようにモバイルPCを使うのか」といったユーゼージモデルの検討には相当な時間をかけている。必要なネットワークデバイスをすべて搭載した上で、PCカードを諦めるという選択肢や重要度の高いものを標準装備し、スロットをPCカードではなくコンパクトフラッシュにするといったアイデアも当然あった。

 「デバイスを詰め込み過ぎると、今度は熱の問題が出てきて快適なPCにすることが難しくなる。コンパクトフラッシュスロットは有力な解決策ではあったが、ワールドワイドで見るとGPSやGPRSなど、コンパクトフラッシュではカバーできないデバイスもある」(加藤氏)ということで、現在の仕様へと落ち着いたようだ。

コスト削減よりコンセプトの実現が優先された

 X505の開発で驚かされた点がもうひとつある。それはプロジェクトスタート時から、量産時のコストを度外視しても構わないという指示が、プロジェクトのメンバーに出されていたことだ。

[本田雅一, ITmedia]

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