News 2003年12月17日 11:46 PM 更新

コア事業は、小型・高精細ニーズが高まる「低温ポリシリコン」――三洋ディスプレイ

三洋電機がディスプレイ事業についての説明会を実施。同社ディスプレイカンパニー社長の田端輝夫氏が、ニーズが高まる小型・高精細タイプを中心にしたディスプレイ事業戦略を語った。

 三洋電機は12月17日、同社のディスプレイ事業についての説明会を実施。同社ディスプレイカンパニー社長の田端輝夫氏が、ニーズが高まる小型・高精細タイプを中心にした同社ディスプレイ事業戦略を語った。


同社ディスプレイカンパニー社長の田端輝夫氏

 同社ディスプレイカンパニーの主力製品は、アモルファスシリコンTFT(a-Si)/低温ポリシリコンTFT(LTPS)/有機EL(OLED)の3つ。なかでも同社が1996年に世界で初めてLCDモジュールの量産化に成功した低温ポリシリコンTFTは、現時点で同社がもっとも注力するディスプレイ分野だ。


 同社のディスプレイ国内生産拠点は、低温ポリシリコンTFTと有機ELを生産する「岐阜工場」、低温ポリシリコンTFTを扱う「鳥取第1工場(第5棟)」、アモルファスシリコンTFTを扱う「鳥取第2工場(第6棟)」の3工場。マザーガラスのサイズは、もっとも古い岐阜工場(300×400ミリ)が第1世代、鳥取第1(550×670ミリ)/第2工場(680×880ミリ)が第3〜3.5世代となる。

 今年になって第5世代(1100×1250ミリ)工場が次々と立ち上がり、韓国メーカーなどからは第7世代(1880×2150ミリ)の声も聞かれる中で、生産キャパシティの低さは否めない。

 だが田端氏は、コア事業とする低温ポリシリコンTFTでは、携帯電話などモバイル機器での需要の高まりから「小型・高精細化」へのシフトが進んでいるとし、このような小型の低温ポリシリコンTFT生産においては大型マザーガラスを使う第5世代以上のラインよりも、小回りのきく第3世代ラインのほうが有利であることをアピールする。

第3世代ライン(鳥取第1工場)第5世代ライン
マスクコスト
多品種少量生産
微細化
歩留まり

 「第3世代ラインはマスクコストが安くなり、小型ディスプレイの多品種少量生産に向いている。また、マスクの位置決めのしやすさから微細化や歩留まりに関しても小型マザーガラスの方が有利。つまり、生産/コスト両面において、小型ディスプレイでの第3世代ラインのメリットは大きい」(田端氏)

ディスプレイとLSIとのセット提案「ディスプレイシステム」

 同社は今年4月から企業グループ制を導入。ディスプレイ分野は4月1日付けの組織変更で電子部品を扱う「コンポーネント企業グループ」の1カンパニーとなった。このディスプレイカンパニーの社長に就任したのが、同社セミコンダクターカンパニー(組織変更前までの社内カンパニー)の副社長を務めていた田端氏。入社以来、半導体畑でバイポーラ/MOS LSI開発など技術職を歴任してきた田端氏がディスプレイ事業で掲げるのは、「ディスプレイとLSIのシームレスな連係」だ。

 「セミコンダクターカンパニー時代から、ディスプレイは半導体と一緒になって開発していかなければいけないというのが持論だった。従来組織の問題点は、販売・製造・技術開発をそれぞれ別の拠点で行っていたこと。これらをすべて一元化して、小型化のノウハウの共有や設計の水平展開を実施。特に重要なディスプレイとLSIとのシステム化は、セミコンダクターカンパニーがサポートしていく体制を構築中」(田端氏)

 「低温ポリシリコンTFT LCDで、低電圧/低消費電力や多機能(システム)化を求めるためには、制御LSI(システムLSI)に最先端技術を導入しなければならない。これが、ディスプレイと半導体とを一緒にやる理由」(田端氏)

市場のニーズも“小型・高精細”

 市場のディスプレイへの要求も、低温ポリシリコン液晶が得意とする“小型・高精細”に向かっている。

 「これまで高いシェアを誇ってきたのがビデオカメラのビューファインダーで、そこに使われるLTPSの50〜60%が当社製。また、デジカメにもハイエンド機でLTPSのEVF(電子ビューファインダー)を使うケースが増えている。そして最近は、カメラ付き携帯電話のメガピクセル化にともなって搭載ディスプレイの高画素/高画質化のニーズが高まり、携帯電話にもLTPSの搭載が始まった。この携帯電話向け市場が今後大きく成長する」(田端氏)


ビデオカメラやデジカメのEVFに同社の低温ポリシリコンTFTが使われている

 デジカメでは、CCDの高解像度化やズーム機能の高倍率化にともなってEVF搭載率が高まるほか、背面液晶モニターでも高精細化が進むことで、低温ポリシリコンTFTのニーズはさらに向上。携帯電話も、CCDの高精細化以外にTV視聴や位置情報システムといった情報端末化が進むことでQVGAが搭載モニターの主流になると田端氏は指摘する。

 「デジカメや携帯電話など急成長分野で、今後、低温ポリシリコンTFTの優位性はさらに高まる。特に、2インチクラスのQVGAについては、アモルファスシリコンよりLTPSの方がコスト面でも有利」(田端氏)

次世代ディスプレイ「有機EL」の戦略は?

 一方、次世代ディスプレイとして期待される有機ELに関しては、Eastman Kodakと共同で開発してきたアクティブマトリックス型フルカラー有機EL(OLED)ディスプレイの商用出荷を今年2月から開始し、第1弾製品としてEastman Kodakのデジタルカメラに採用。また、今年10月のCEATEC JAPAN 2003では、QCIFの有機ELを搭載した地上デジタルテレビ対応W-CDMA端末を参考出展するなど、同分野での技術力の高さをアピールしている。

 「OLEDの最大の課題は寿命。現在は5000時間以上となり、デジカメには問題ないレベルにまできているが、携帯電話に搭載するにはまだ足りない。白色OLED方式によるプロセスの簡素化にも取り組んでいるが、画質を考えたらRGB塗り分けがやはりいい。量産にともなう課題や、動画再生などOLEDの特徴を生かせるアプリケーションが育っていない点もある。本格的な量産化は来年になるだろう」(田端氏)

関連リンク
▼ 三洋電機

[西坂真人, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.