ラジオとは何か――。その本質を見つめ直したという製品が、クラウドファンディングから一般発売までたどり着いた。
ニッポン放送とCerevo、グッドスマイルカンパニーは7月20日、スマートフォンとBluetooth接続するラジオ受信機「Hint BLE Radio」(ヒント・ビーエルイー・ラジオ)を9月初旬に一般発売すると発表した。ラジオ局が同製品を通じてリスナーのスマホに番組関連URLを送れるほか、音楽スピーカーとしても使える“IoTラジオ”だ。同日から公式サイトなどで購入予約を受け付ける。実売予想価格は2万2000円(税別)。
「ラジオって何だろうと考えると、『これは人の気配発生装置だ』と思い至ったんです」――そう話すのは、ニッポン放送アナウンサー吉田尚記さん。「ラジオとは何か」という疑問から生まれたHintに、吉田さんが込めた思いは。
Hintは、通常のAM放送と同じ番組を、FM放送波で同時に流す「ワイドFM」(FM補完放送)に対応するラジオ受信機。FMアンテナは本体に内蔵している(付属の外部アンテナを接続すれば受信感度を上げられる)。
ラジオ番組内で「ピポパポ」という電話のダイヤル音(DTMF音)が流れると、リスナーのスマホ(Android/iOS)に番組情報と関連したURLが届く「BLEラジオ」機能も。スマホとHintのペアリングは必要なく、リスナーは近くにいるだけでURLを取得できる。
Bluetoothスピーカー機能も搭載。スマホ内の音楽やポッドキャストを再生できる。microUSB経由で充電可能で、連続駆動時間は約3時間。サイズは80(幅)×80(奥行き)×297(高さ)ミリで、重量は1075グラム。
同製品は、2016年7月に3社が共同開発を発表。クラウドファンディングで目標額1300万を達成し、一般発売が決まった。
「ラジオって、『これから重要なことを聴くぞ』という気持ちで聞くものではないですよね」――開発発起人の吉田さんはそう話す。
「ラジオって何だろうと考えると、『これは人の気配発生装置だ』と思い至ったんです。それで、気配を辞書で引くと『hint』でした。ラジオは答えを求めて聴くものではないのに、聴いたことが後々本当に何かの答えになったりするじゃないですか。だから『hint』が製品名に最適だなと」(吉田さん)
吉田さんは「人って、聞き流してもいい人の話は大好きなんですよ」とも。「上司と授業の話は嫌いなんですよね。どちらもリアクションを求められて、話を聴いていたかどうかが試されるからすごく嫌なんです。でも、ファミレスで隣に座っている人の話は気になるじゃないですか」
そんな「ラジオは聞き流してもいい」「ファミレスの隣人の会話のように聞き流せる」という考え方が、“気配”をかもせるラジオ受信機の開発方針になったという。
そんな「気配」に配慮したHintには、ラジオの“聞き疲れ”を避ける工夫が。無指向性スピーカーを採用し、全方向に音を流すことで、部屋のどこにいてもラジオが聞こえるよう設計した。スピーカーはフルレンジを1基、ベースを1基、ツイーターを1基搭載する3Way構成とし、特に人の声の周波数帯である400Hz付近を聞こえやすいようにチューニングしたという。
コンセプトを練ったデザイナーのメチクロさんは「人の声向けにチューニングしていない、低音がよく出るスピーカーで声を聞き取ろうとすると、低音もその分鳴ってしまい聞き疲れする」と指摘。チューニングしたHintは、適性音量で人の声を遠くまで届けられるという。
大のラジオ好きという声優の中村繪里子さんは、Hintの無指向性スピーカーに魅力を感じたようだ。中村さんは、完成直前のプロトタイプを持ち帰って使用していたという。
「最近『風ぼっこ』(ベランダで風に当たること)をするのが楽しみなのですが、スピーカーが無指向性なので、本体の向きを変えなくてもベランダ側にも音が届くんです。音がよくて、無指向性スピーカーってこんなに威力を発揮するんだなって」(中村さん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR