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» 2018年10月19日 07時00分 公開

人工知能を“正しく”疑え データサイエンティストがNHK「AIに聞いてみた」の違和感を探る (1/3)

「本を読むと健康になる?」──そんな“AI(人工知能)の提言”を紹介し、日本の社会問題について切り込む番組の第3回がNHK総合で放送された。データ分析の専門家の松本健太郎さんが、AIの分析手法について解説。

[松本健太郎,ITmedia]

 NHK総合で「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」の第3回が、10月13日に放送されました。テーマは「健康寿命」。3回目にしてデータサイエンス界隈からのツッコミすらなくなり、個人的には寂しい放送回となりました。皆さんはご覧になられたでしょうか? もちろん私は正座待機でした。

 過去にさまざまな批判を受けたからか、番組のトーンがだいぶ変わった印象を受けました。マツコ・デラックスさんら出演者は口をそろえて「決してこれが答えではない」「スタッフが勝手に解釈して言っているだけ」と説明し、健康寿命を延ばすヒントとして挙げられた3つの提言のうち、1つはマツコさんによって却下されました。

AI NHKの「AIひろし」の提言(「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」公式サイトより)

 ただし「都道府県別健康寿命×平均寿命散布図」を持ち出し、平均以下を「不健康」と表現するあたりは「本来の意味の不健康から乖離(かいり)しているなぁ」と思うなど、細かいツッコミはありました。しかし、丁寧に番組を作ろうとしている意識は私も感じました。

AI 都道府県別の「健康寿命」(「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」公式サイトより)

 放送を受けて「スタッフも疑似相関などは分かっている。あえて意外な項目をピックして、仮説をブレストする番組だ」と好意的に評価する識者もおられるようですが、私はそこまで物分かりの良い大人になれませんでした。その理由は、検証があまりにおざなりで、やっつけ感があったからです。

 今回の記事では、番組内でマツコさんに受け入れられた2つの提言を検証してみます。

「本を読むと健康寿命が延びる(かも)」は本当か

 日本各地の65歳以上のべ41万人分の生活習慣・行動に関する追跡調査の結果を読み解いた結果、番組が開発したAI(人工知能)である「AIひろし」は、赤、青、白の各特徴からなる健康・不健康ネットワークを作成。「運動よりも食事よりも読書が大事!?」と提言しました。

AI データ分析により作成されたネットワーク(「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」公式サイトより)

 公式サイトの説明によれば、ネットワークは「ベイジアンネットワークなど複数の機械学習を組み合わせて、要素同士が強い関連性をもつパターンを導き出し」たもので、それぞれの要素に対して「健康と答えた人が多い場合は赤、不健康と答えた人が多い場合は青、どちらでもない場合は白」としています。

 つまり、赤色の項目(番組では健康要素と説明)で他の赤色とつながりが多いものほど、健康のカギになる可能性を秘めているようです。

 ネットワークを読み解くと「本や雑誌を読む」は赤い項目で、運動や食事より多くの健康要素とつながっていました。読書と健康寿命は関係があるのか。それを調べるために番組は、人口10万人当たりの図書館数が全国1位で、学校司書配置率98.3%の山梨県(健康寿命は男性1位、女性3位)へ実地調査に向かいます。

 その結果、マツコさんが「国の大きな指針にしてもいいくらい」と言うほどのさまざまな発見があった――という流れなのですが、そもそも、なぜ健康寿命1位の山梨県だけ見て判断するのでしょうか。

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