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» 2019年07月23日 06時52分 公開

「萌え」という言葉は使わない……学芸員語る「京アニ」の強さ (1/2)

「京アニ」の強さの源は、人材育成にあった。雇用を安定させ、女性に活躍の場を与え、「全員一丸」の温かい組織から、唯一無二の作品が生まれた。京アニをよく知る京都文化博物館の学芸員は、「あまりにも不条理な出来事」と肩を落とした。

[産経新聞]
産経新聞

 18日に起きた放火事件で多数の犠牲者が出るなどした京都市伏見区の「京都アニメーション」。日本のアニメ界を牽(けん)引(いん)してきた「京アニ」の強さの源は、人材育成にあった。雇用を安定させ、女性に活躍の場を与え、「全員一丸」の温かい組織から、唯一無二の作品が生まれた。京アニをよく知る京都文化博物館の主任学芸員、森脇清隆映像・情報室長は、「あまりにも不条理な出来事」と肩を落とした。

photo 白煙を上げて燃える京都アニメーションのスタジオ=18日午後0時2分、京都市伏見区(鳥越瑞絵撮影)

女性の活躍

 森脇さんは、平成15年に同館で開催した映像イベントで一緒に仕事をして以来、京アニと深い関わりをもつ。そんな森脇さんの目に、京アニの人材育成のシステムは、まぶしく映った。

 不安定な働き方が少なくないアニメ業界において、正社員を採用し、責任ある仕事を任せ、成長させた。さらに、女性に活躍の場を与え、女性の声を作品に反映させた。「京アニは、社長夫人がアニメの作画の手塗りを請け負ったことが始まりなので、女性の意見を埋没させません」

 その女性たちが大ヒットさせたのが、女子高生がバンドを組む青春物語「けいおん!」(21年)。「20代後半の女性スタッフたちが、『萌(も)えキャラ』と呼ばれる、性的特徴を強調した女性ではなく、女性から見た女子高生の何げない日常を表現することで支持を集めたのです」。京アニでは「萌え」という言葉は使わない。「代わりに『愛』という言葉を使います。原作への愛をキャラクターに絞り込むのです」

小津作品と共通点

 民主的で年功序列を廃した意見形成や作品作りも、特徴的だった。京都の商店街が舞台の『たまこまーけっと』(25年)の制作時のこと。「舞台のモデルである出町桝形商店街(京都市上京区)に私を含めスタッフみんなで取材に行ったのですが、取材中、監督にみんながどんどん意見するんです。全員で寄ってたかって作品をつくるという印象でした」

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