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まるでスマホ? PCの新しいスリープ状態「モダンスタンバイ」とは白木智幸のITフィットネス

» 2019年08月27日 07時00分 公開
[白木智幸ITmedia]

 こんにちは、白木智幸です。皆さんはPCを使い終えた後にシャットダウンをする派ですか? それともスリープ状態にしておく派ですか?

photo どれを選ぶ?

 PCのシャットダウンは起動していたプログラムを全て終了させ、電源を完全にオフにすることを指します。スマホで例えるなら電源ボタン(スリープボタン)を長押しして電源を切った状態です。デスクトップPCなら、コンセントから電源ケーブルを抜いても問題ありません。

photo スマートフォンの電源を切る「シャットダウン」の操作画面

 一方、スリープとは起動中のアプリを終了させずに低消費電力で待機している状態です。電源ボタンを押したり、キーボードやマウスを操作したりすると瞬時に復帰できます。

 ノートPCやキーボードカバーを装着したタブレットPCの場合、電源キーを押さなくてもディスプレイを閉じるだけでスリープ状態にできる設定もあります。

 例えば、ミーティングスペースで打ち合わせが終わり、PCのディスプレイを閉じてスリープ状態に。次の場所に移動してディスプレイを開けば、スリープが解除されてすぐに作業に戻れる──そんな使い方は当たり前となっています。

photo 電源オプション(※タスクバーのバッテリーアイコンを右クリックで選択できる)ではカバーを閉じたときの動作や、電源ボタンが押された時の動作を設定することができる

 PCのスリープ状態もスマートフォンの画面を消灯させた状態に近い──と言いたいところですが、実はPCのスリープとスマホのスリープは決定的に違う部分があります。スマホはスリープ中でも電話やメールの着信を常に待ち受けられるように設計されていますが、PCはCPUの動作や通信を止めてしまうため、スリープ中に新着通知を受け取れません。

 PCは持ち運ぶときにカバンに入れたり、小脇に抱えたりして移動することが多く、スリープ中に受信した通知や着信にすぐ対応する必要性が低いと考えられてきたデバイスです。そもそもPCは据え置き型の機器から進化してきたので、電源がある場所に腰を据えて使うことが主流だったことも要因の一つでしょう。いずれも用途に合わせて異なる進化を遂げてきたといえます。

photo PCのスリープ設定。操作しない時間が続くとディスプレイの電源だけをオフにしたり、スリープに入るように設定したりできる

 しかし、ここにきてPCのスリープ機能が進化し、常に新着通知を待ち受けるスマホと同様の振る舞いができるWindows 10の機能「モダンスタンバイ」に対応したPCが登場しています。

次世代のスリープ「モダンスタンバイ」とは?

 モダンスタンバイとは、スリープ状態でもWi-Fiなどに接続し続ける機能です。画面は消灯していますが、ネット接続を維持しながら一定時間ごとに新着通知を確認します。いわばスリープ中も、“半分起きている”状況なので、スリープが解除されてからWi-Fiやモバイル回線に再接続されるまで待たされることもなく、スマートフォンとほぼ変わらないスピーディーな感覚をPCで体験できます。

photo モダンスタンバイに対応する製品の一例

 このモダンスタンバイという機能は、実はWindows 8以降に「Connected Standby」「InstantGo」といった名称で搭載されていました。しかし、同機能を実現するためのスペック要件が厳しかったため、対応PCは限られました。

photo モダンスタンバイ対応製品であるかどうかは「コマンドプロンプト」で「powercfg /a」と入力し、スタンバイ(S0 低電力アイドル)ネットワークに接続されていますが表示されていることで確認ができる

 こうしたスリープ機能が徐々に進化して対応PCが増えている背景には、最近のPCがスマホやタブレットで使われるテクノロジー(半導体の高性能化、ファンレスなど)の採用を進めていることが挙げられます。

 モダンスタンバイを活用すれば、PCでもスリープ中でも音楽を再生できたり、決められた時間にアラームを鳴らしたりできるようになります。ネットワークにもつながっているため、他の機器にテザリングするなど、スマホで使っている機能をPCでも実現できることになります。

 ビジネスでこの機能がもっとも重宝すると思われるのはセキュリティ面の強化です。万が一、業務用PCを外で紛失した場合、モダンスタンバイ状態であれば遠隔でデータを即座に消去するリモート機能を活用できます。働き方改革でPCを外に持ち出す機会が増えている今だからこそ、有効に働く機能といえるでしょう。

PCはまだまだ進化する

 あらゆるものがネットワークに常時接続される世の中では、「機器がスリープ中に何ができるか」は重要なポイントになると考えられます。

 例えばクルマの世界では、キーを抜いて停車している状態であっても、アプリを使って車のバッテリーやドアロック、エアコンなどの状態や停車位置を確認したり、ナビの目的地行先をアプリで設定してナビに転送したり、車外からリモート操作で駐車できる車種も登場しています。

photo ドアロック/アンロック、駐車位置の確認、車の状態などをリモートから確認できる車種が登場している(出典:独ダイムラー)

 スマホの登場や基本性能の成熟で革新的な進化が目立ちづらくなったPCですが、実は細かなところで進化しています。私はモダンスタンバイ対応の機種を使うようになってから、持ち運びの時も常にスリープ状態です。PCをシャットダウンする機会が本当に減りました。こういう使い方もこれからは普通になるのかもしれません。

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著者:白木智幸(しろき ともゆき)

パソコンやタブレット製品の知っているようで知らないポイントや、IT関連の難しいことを分かりやすくお伝えすることで、最新のテクノロジーやITを楽しみながら、よりよい働き方・ライフスタイルにつながるエッセンスをご紹介することがテーマ。

外資系IT企業プロダクトマネジャー、トレーニングチーム「Daddy Park Training」広報・マーケティング担当、地域コミュニティー「勝どきパパの会」代表


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