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» 2019年09月17日 06時30分 公開

2000万部超えも 中国発「華文SF」がウケるわけ (1/2)

SF小説の分野で、欧米や国内作家の作品に加えて中国発の“華文SF”の存在感が高まっている。世界的なヒットを記録した劉慈欣(リウツーシン)さんの大作『三体』の日本語版が7月に刊行され、若手作家らの短編も相次ぎ邦訳されている。隆盛の背景には何があるのか。

[産経新聞]
産経新聞

 科学的仮想をもとに、異世界やまだ見ぬ未来を描き出す−。そんなSF小説の分野で、欧米や国内作家の作品に加えて中国発の“華文SF”の存在感が高まっている。世界的なヒットを記録した劉慈欣(リウツーシン)さんの大作『三体』の日本語版が7月に刊行され、若手作家らの短編も相次ぎ邦訳されている。隆盛の背景には何があるのか。   (海老沢類、本間英士)

photo 中国で相次ぐSF書籍

オバマ氏も絶賛

 早川書房から邦訳版が出た『三体』(立原透耶監修、大森望ほか訳)は現代中国を主な舞台にしたSF小説。三部作の第1作にあたり、「翻訳SFとして破格の数字」(同社)である11万部を突破した。2015年には世界最大のSF賞といわれる米ヒューゴー賞(長編部門)をアジアの作家として初めて受賞した作品だ。

 中国ではシリーズ累計で2100万部を超え、世界でも800万部を記録。米国のオバマ前大統領もニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで「本当に面白かった。この本で描かれた内容と比べたら、議会との軋轢(あつれき)など私の日々の問題なんてささいなものだ」と絶賛した。

 人類の運命を左右する巨大プロジェクトをめぐる壮大なストーリー。科学者の相次ぐ自殺、謎めいた学術団体、VR(仮想現実)ゲーム「三体」などが絡み合う。これらのカギとなるのが、題名にもなった天体力学の難問「三体問題」だ。同社翻訳ミステリ・SF課の清水直樹さんは「荒唐無稽な要素とナノテクノロジーなど現実に即した要素を組み合わせ、エンタメに昇華させた。『人類はどこから来て、どこに行くのか』も描かれた骨太のストーリーだ」と魅力を語る。

 一方で、1960〜70年代の文化大革命期の苛烈な抗争も活写。作中のVRゲームには、秦の始皇帝ら歴史上の人物が多く登場し「普段SFを読まない読者層にも響いている」(清水さん)という。

 第2巻は来年夏、第3巻は再来年の夏にそれぞれ刊行予定。清水さんは「三国志や水滸伝、魯迅作品ではない“今の中国”を知るのに『三体』は最適の作品」と太鼓判を押す。

「3層」の北京

 『三体』の成功も呼び水となり中国では近年一大SFブームが起きている。早稲田大の千野拓政教授(中国近現代文学・文化)によると、大都市の書店は軒並みSF専用棚に大きなスペースを割いているという。

 若い書き手も続々登場しており邦訳出版も着々と進む。昨年には中国出身の米作家、ケン・リュウさんが編者を務め、中国の若手作家7人のSF作品を集めた『折りたたみ北京』の邦訳(早川書房)が刊行され話題に。同書で紹介された女性作家の一人、1984年生まれの●(=赤におおざと)景芳(ハオジンファン)の『●(=赤におおざと)景芳短篇集』(及川茜訳、白水社)は今年3月の出版から3カ月で重版された。

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