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» 2019年11月25日 07時00分 公開

ドローン先進国・スイス 日本との違いは規制の考え方

人手不足問題への対応策としても注目されるドローンについて、日本でも普及を目指す動きがあるが、スイスではドローンの開発や実験が盛んに行われ、先進国とされている。日本とスイスの違いは規制の強さにあった。

[産経新聞]
産経新聞

 物流や農業、警備、災害支援など、幅広い分野で活躍の場が広がっている小型無人機ドローン。深刻な人手不足への対応策としても期待されており、「『空の産業革命』をもたらす」との声も上がる。日本でも普及を後押しする動きが出ているが、中でも、アルプスなどの雄大な自然や美しい町並みで知られる中央ヨーロッパのスイスは、ドローン開発で最先端を走る「ドローン先進国」。日本との違いはどこにあるのか。(松崎翼)

photo 病院間で血液サンプルを輸送するスイスのドローン(提供写真)

 「これからのデジタル改革で、ドローンはリーダーになる」

 スイス西部の名門、ローザンヌ工科大でドローン関連のスタートアップ企業を支援しているサイモン・ジョンソン氏は、こう力を込めた。

photo スイスのドローン産業について説明するサイモン・ジョンソン氏=スイス・ローザンヌ工科大(松崎翼撮影)

 チューリヒ工科大を起点に、ローザンヌまでの西に200キロの地域には、約80社のドローン関連企業が集積している。多くはここ5年で立ち上がったスタートアップ企業(新しいビジネスモデルで発展しようとしている企業)で、一帯は「ドローンバレー」とも呼ばれている。

 実証実験も盛んに繰り広げられている。リゾート地でもある南部のルガノでは、パイロットがドローンの飛行にほとんど関与せずに遠隔操作で監視する「自律型ドローン」を活用した病院間の血液サンプルの輸送サービスを実施。救急搬送用ドローンの開発プロジェクトも動き出している。

 日本でも、農業や物流分野の実証実験が各地で実施されるなど、国がドローンを活用した新産業の育成を目指している。インプレス総合研究所(東京)によると、2019年度のドローンビジネスの日本国内の市場規模は前年度比56%増の1450億円に達し、令和6年度には5073億円まで膨らむ見込みだ。

 それにしても、なぜスイスでドローン産業が盛んなのか。サイモン氏は「ドローンは時計と似ていて、とても繊細。スイスの得意分野だ」と話す。実際、目的地に着陸する正確性や空間把握能力では、世界トップの技術力を誇るとされる。

photo スイスのドローン産業について語るサイモン・ジョンソン氏=スイス・ローザンヌ工科大(松崎翼撮影)

 加えて挙げられるのが、スイスではドローン規制が比較的緩いことだ。日本でも規制緩和が進められているものの、現状、ドローンを第三者の頭上で飛行することは原則、禁止される。一方、スイスでは、25人以上が集まる場所の上空でなければ現状、特に許可なくドローンを飛ばすことが可能。この規制の撤廃すらも検討されているという。

 スイス政府の担当者は「まず考えなければならないのは安全」としつつも、「運用を制限してはならない。安全に拡張していくため支援していく」と語る。事前にドローンを登録することや、利用者に衛星利用測位システム(GPS)の搭載を義務付け、誰がどの場所でドローンを飛ばしているか一目で分かるようなシステムを充実させ、安全性を担保しているという。

 サイモン氏は「新しい技術を制限するのではなく、みんなが使えるように受け入れようと政府が考えているのも、(スイスで)ドローン産業が盛んな大きな要素。これからさらに進化していく」と強調した。

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