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» 2020年03月27日 07時00分 公開

新型コロナでICTが加速 全世帯にWi-Fi環境を整備した町、ノートPCを配布した大学も

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校措置を受け、遠隔教育が注目されている。全世帯にWi-Fi環境を整備した自治体や、新入生にノートPCを配布する大学など、遠隔教育の実施に向けた準備が一部で進んでいる。

[産経新聞]
産経新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校措置を受け、学校や塾などと家庭をインターネット回線で結んで授業を行う遠隔教育が注目されている。終息が見通せない中、ICT(情報通信技術)を活用した遠隔教育の需要が今後高まる可能性もあるが、通信環境が地域や学校、家庭ごとでばらつきがあるなど課題も多い。

photo 名古屋商科大学の遠隔授業(同大提供)

全世帯にWi-Fi環境を整備

 阿蘇山のふもとに位置する熊本県高森町。休校要請を受け、町内の町立小中学校と義務教育学校3校全ての児童・生徒計445人が遠隔授業を受けられるように、全世帯に無線LAN(Wi−Fi)環境を整備した。事業にかかった総額は30万円あまり。町の規模が小さく、家庭に無線LAN環境のないのが26世帯だけだったため、この金額となった。

 同町では2015年度から、文部科学省の委託事業「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の向上に係る実証事業」に取り組み、補助金を受けて各校に電子黒板や通信環境を整備している。18年度までに児童・生徒に1人1台のタブレット端末が配布されていた。

 小中学校の校区が広い地方の山間部では、遠隔教育の需要が高い一方、人口が少なく必要な端末が少なくて済み、遠隔教育を進めやすい下地がある。同町教育委員会は「子どもたちは比較的アレルギーが少なく、今回の措置に取り組めているようだ。先が見えないが、状況次第で新学期以降の運用も検討したい」と話す。

学生にマックを配布

 大学でも導入を決めたところがある。名古屋商科大学(愛知県日進市)も新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月から2カ月間、全ての学生への講義を遠隔で行うことを決めた。教員が学内のスタジオで講義を行い、生徒は自宅などで入学時に配布されたノートPCを通じて受講する仕組みだ。

 当初は新年度の講義開始を2週間程度遅らせることも検討していたが、「新型コロナの問題がいつまで続くか先が読めない。このままでは講義を始められない」(同大広報担当者)として、遠隔講義の実施を決定した。

 同大では全学生に対し、1985年にデスクトップ型PCを、92年からは米Apple社のノートPC「マッキントッシュ」を無償配布するなど、情報通信教育に力を入れてきたといい、担当者は「こうした長年の下地が役に立っている」と説明する。

急がれる1人1台

 ただ、これらの先進例は一部にとどまる。

 岡山県赤磐市では2019年、市立小学校で他の学校との教室同士を結んだ遠隔授業を行ったものの、学校と家庭を結ぶ仕組みまでは整っていない。市教委の担当者は「学校、家庭の双方にも環境を整える必要があり難しい」と話す。

 文部科学省は19年末、義務教育を受ける生徒・児童に対し、23年度までに1人1台の端末環境を整備する「GIGAスクール構想」を打ち出した。19年時点での全国平均は5.4人に1台、学校側の通信環境(無線LAN)の整備率も40.7%にとどまっている中、文科省は「コロナ問題で必要性は際立ってきた」(同省担当者)と整備を急ぐ構えだ。

 SMBC日興証券のシニアエコノミスト、宮前耕也さんは、遠隔教育について「家庭ごとで通信環境が違い、公教育では公平性の確保などハードルがある。遠隔教育は塾など私的教育が進めやすい」と指摘。内容としては「全体として新たな需要が増えるのではなく、既存のライブな授業や教育DVDの市場がそのまま置き換わる」と予測した上で、「遠隔サービス独自の内容が増えることで市場は広がるのではないか」との見方を示した。

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