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» 2020年05月27日 07時00分 公開

SNSでの中傷で自殺に追いやる“指殺人” 世界でも問題視、法整備求める声も

ネット上で誹謗中傷を受けた芸能人などが自殺に追いやられてしまう事件が、世界で問題視されている。SNSへの書き込みで人を死に追いやることもあることから「指殺人」とも呼ばれ、法整備を求める声も上がっている。

[産経新聞]
産経新聞

 女子プロレス選手の木村花さんの急死を巡っては、SNS上で多くの誹謗(ひぼう)中傷を受けていたことが問題となっている。芸能人などの個人に対してネット上で厳しい批判を繰り返す行動は「ネットいじめ」として世界でも問題視されており、専門家は法整備の必要性を訴えている。

 木村さんへの誹謗中傷が始まったのは、3月末のテラスハウス放送後からだった。

 テラスハウスはシェアハウスで男女6人が共同生活する様子を記録した番組で木村さんは2019年9月から出演していた。3月末に配信された回では、メンバーの1人が木村さんのプロレス衣装を誤って洗濯するトラブルが発生。木村さんが相手を強く非難する様子が配信されると、木村さんに対する誹謗中傷が過熱した。

 《早く消えてよ》《お前の方がクズだよ》などの書き込みがSNS上に相次ぎ、木村さんは胸を痛めていたとみられる。

 5月23日未明には、木村さんは《毎日100件近く率直な意見。傷付いたのは否定できなかったから。死ね、気持ち悪い、消えろ、今までずっと私が1番私に思ってました》とSNSに記していた。

 その直後、木村さんは自殺を図ったとみられる。

 SNS上の有名人への誹謗中傷を巡っては、これまでも度々、問題となってきた。

 韓国では19年、人気女性グループ「KARA」の元メンバー、ク・ハラさん=当時(28)=が自殺。元交際男性とのトラブルを機に執拗(しつよう)に中傷され、ハラさんは「ひと言の言葉で人を殺すことも生かすこともできる」などとSNSでの誹謗中傷を批判していた。

 また、ハラさんと親しかった歌手のソルリさん=当時(25)=もSNSで非難を受け、自殺。PCのキーボードや携帯電話を指で簡単に操作して悪質な書き込みを行うことで有名人らを死に追いやることになるという意味の「指殺人」が社会問題化した。

 ただ、こうしたSNS上での誹謗中傷は刑法の名誉毀損(きそん)罪などに問われる可能性があるが、立件のハードルは高い。

 インターネット上のトラブルに詳しい斎藤裕弁護士によると、名誉毀損罪の成立には「不特定多数に具体的事実を示し、社会的評価を低下させる必要がある」とする。このため、今回の木村さんのケースのように《消えろ》《気持ち悪い》などとする罵倒の類では適用は難しく、より具体的な本人をおとしめるような内容が必要とされるという。

 一方、民事での損害賠償請求でも、SNS事業者に投稿者のアドレス開示を求め、投稿者本人を特定することを求められるなど、時間と費用が掛かる。

 芸能人に対するSNSでの誹謗中傷について詳しい佐藤大和弁護士は「集団での誹謗中傷に対しては、迅速かつ適切に対応できる法律がないのが問題だ」と指摘。「1人が大人数に対して対応できる被害救済制度の法整備と、SNSを運営する各社が主体的にコメントを停止するなどの措置をとれるようにすべきだ」と話している。(大渡美咲、村嶋和樹、吉沢智美)

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