ITmedia NEWS >
ニュース
» 2020年06月08日 07時00分 公開

一人歩きする“5Gカバー率9割” 基準変更で高カバー率でもつながりにくい可能性 (2/2)

[産経新聞]
産経新聞
前のページへ 1|2       

 なぜ、指標が変更されたのか。5Gの普及に関しては、自動運転や遠隔医療、工場や農業などでの遠隔管理などが期待されている。こうした地域は、山間地や過疎地、農場、工業地帯といった居住者の少ないところが多い。総務省の担当者は「人口カバー率を重視すれば、大都市部の整備が優先されるため、基準を改める必要があった」と理由を明かす。

 総務省は、5G電波の免許交付について、5年後の基盤整備率が5割を達成することなどを提示した。達成するためには、東京、大阪、名古屋といった大都市だけではなく、地方もそれなりにカバーする必要がある。

 ただ、この指標には5Gの基地局の“弱点”について考慮されていない。

 5Gは、通信速度や品質が向上する一方で、電波の特性上、1つの基地局アンテナから届く距離が短くなる。4Gの大規模な基地局が最大半径数キロをカバーできるのに対し、5Gの基地局は半径数百メートルしか届かない。壁などの障害物にも遮断されやすく、物陰などでは圏外になりやすいこともあり、基地局整備の途上では、利用エリアにむらができてしまう。

 携帯各社は、基地局建設を加速させ、エリア拡大をアピールするが、基盤整備率では10km四方に高度特定基地局を1基整備するだけで目標がクリアされたことになる。10kmといえば、大手町〜池袋駅の距離。この間にある飯田橋に基地局があれば、両駅とも利用エリアに入ってしまう。

 そのため、5Gの携帯電話を利用しようとしても、通信状況によっては4Gの電波を使うしかない、というケースが続出しかねない。

 こうした指摘に対し、高度特定基地局は周辺に設置される複数の基地局を中継することを前提としており、高度特定基地局が1基あればある程度のエリアの広がりは期待できるというのが総務省の考えだ。ただ前述したように、基地局整備の途上では、利用エリアにむらができてしまうことは避けられない。

 新型コロナウイルスの感染拡大も、基地局の整備を急ぎたい携帯各社にとって悩みの種となる。ソフトバンクの宮川潤一副社長は5月11日の決算会見で、「(基地局設置のために)『ビルにうかがって、屋上に上がっていいですか』といっても『それは遠慮したい』というオーナーさんも多い。10〜20%程度の影響がある」と明かした。NTTドコモの吉沢和弘社長は「ネットワーク機器の供給に大きな遅れは出ていないが今後、出てくる可能性もある。今後の状況を見ていかないといけない」と警戒感をにじませる。

 総務省が農工業優先の指標を採用したことで、一般の利用者が不便を感じる事態が起きたとすれば本末転倒だ。携帯各社の早急な対応が求められる。(経済本部 高木克聡)

前のページへ 1|2       

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.