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» 2020年06月16日 07時00分 公開

コロナ追跡システム、登録は利用者次第 実効性とプライバシーのバランス課題に

政府の緊急事態宣言が解除され、大阪府や京都市などはQRコードを使った「新型コロナ追跡システム」を導入した。感染拡大の“芽”を摘み取るのが狙いだが使うかどうかは利用者次第で、実効性とプライバシーのバランスが課題となる。

[産経新聞]
産経新聞

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除され、飲食店や遊興施設が次々に再開される中、感染拡大の第2波を防ごうと、大阪府や京都市などでQRコードを使った「新型コロナ追跡システム」が導入された。感染者に接触した可能性がある人を早期に把握し、感染拡大の“芽”をつみ取るのが狙いだが、使うかどうかは利用者次第で実効性はこれからだ。海外では強力な追跡システムに個人情報の露出を恐れる人々が虚偽申請をするなど、新たな課題も出ている。(秋山紀浩)

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感染拡大を防止せよ

 「職業上、新型コロナの感染は気になるし、慣れればそれほど難しい操作でもないと思う。感染を広げない意味で大事ですね」。6月上旬、京都市の「伝統産業ミュージアム」で新型コロナ追跡システムを利用した看護師の女性(69)は、こう感想を述べた。

photo 京都伝統産業ミュージアムの入り口でQRコードを読み込む来館者=京都市左京区

 京都市のシステムでは、依頼があったスーパーや飲食店などの店舗や施設に市が個別のQRコードを発行し、各店舗はコードを入り口などに掲示する。利用者は来店時にコードを読み込み、案内に従ってメールアドレスや利用日時を登録。使うかどうかは利用者次第となる。市はクラスター(感染者集団)の発生リスクで飲食店や施設をレベルA〜Cに分類。1000平方メートル未満のライブハウスならレベルAに該当し、一人でも感染者が出た場合は、同じ時間帯の利用者にメールを送信、症状が出た際は速やかに連絡するよう呼びかけるとしている。

 同市によると、6月3日現在で389件の申請があるといい、市は飲食店やライブハウス、イベントの主催者などに申請を促していきたいとしている。同様のシステムを運用している大阪府では10日現在で累計1万5063の施設が登録しているという。^「第1波」の教訓

「第1波」の教訓

 背景にあるのは、飲食店などで経路を追えない感染者が相次いだ「第1波」の教訓だ。国内外から多くの観光客が訪れる京都では、顔なじみではない客が飲食店で同席するケースも多く、店主の記憶だけでは追跡が困難なことが多々あった。プライバシーを理由に、調査に応じてもらえないこともあったという。

photo 京都市の新型コロナ追跡サービスの登録画面。日付や時刻を入力し、基準を上回る感染者が出たらメールで連絡がくることになっている

 「このサービスを使えば、感染者の近くにいた人に注意を促すことができ、より感染者の把握が容易になる。店舗や施設にとっても、新型コロナの対策をしていると利用者に安心感を与えることにつながる」。市の担当者はこう話す。

実効性とプライバシー

 一方で課題となるのは、実効性とプライバシーのバランスだ。隣国の韓国では、衛星を用いたスマホの位置情報や防犯カメラの映像、クレジットカードの決済情報などをもとにIT技術を駆使し、感染者の移動経路を徹底追跡することで一定の感染封じ込めに成功してきた。

 しかし、個人のプライバシーまで侵害されるという懸念も浮上。いったん封じ込めに成功した後の5月上旬、ソウルの歓楽街のクラブを中心にした集団感染が発生した際には、個人情報の露出を恐れて来店者が名簿にうその電話番号を書き残したりしたことから、連絡の取れない来店者が多く出た。感染者が、同性愛者が利用するクラブも訪れていたと報じられたことで、ネットでは同性愛者を攻撃する書き込みも相次いだ。

 大阪や京都で導入されている追跡システムは登録するかは利用者次第で、韓国ほど強力なものではない。大阪府の担当者は「管理するのはメールアドレスで、氏名や生年月日などの個人情報は入手しない」と説明。メールアドレスも約2カ月で削除されるという。京都市も「システムの設計上、プライバシーに踏み込むことはない」と話す。追跡システムの効果の検証はこれからだが、第1波で学んだ教訓が感染拡大防止につながることが期待される。

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