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» 2020年08月24日 07時00分 公開

電力各社の「鉄塔カード」静かなブームに ネットでは10倍価格で取引も

全国各地の送電鉄塔を題材にした「鉄塔カード」が静かなブームとなっている。鉄塔写真に説明文が添えられたカードは数量限定配布のため入手困難で、インターネット上では元値の10倍以上で取引されることもあるほどだ。

[産経新聞]
産経新聞

 全国各地の送電鉄塔を題材にした「鉄塔カード」が静かなブームとなっている。大手電力各社のグループ会社が手掛けており、迫力ある鉄塔写真に「パリのエッフェル塔のような美しさ」「その高さは見るものを圧倒する」といった説明文が添えられている。数量限定のため入手困難で、インターネット上では元値の10倍以上で取引されることもある。新型コロナウイルスの感染拡大で配布イベントも中止になり、プレミア化はますます進みそうだ。(岡本祐大)

photo 東京電力パワーグリッドが作製した鉄塔カード「生品線」(同社提供)

販売会で行列

 カードは各社とも縦9cm、横6cm程度に統一。表はそびえ立つ鉄塔の写真で、裏には名称や電圧、高さなどのデータが記載されている。説明文には「27万5000ボルト設計で建設された全国初の超高圧送電線」といった技術的な特徴や、「我が国の発展と近代化に大いに貢献した」など設置の背景がまとめられている。

 先駆けとなったのが、東京電力ホールディングスの送配電会社、東京電力パワーグリッド(東電PG)だ。もともとは送電工事会社の会社説明会などで配り、鉄塔をはじめとする事業内容に興味を持ってもらおうとしたのがきっかけ。各地で作られて人気を集めた「ダムカード」や「マンホールカード」を参考にしたという。

 2019年3月に製作された第1弾は、同社管内の4万基を超える鉄塔の中から栃木県内の4基を選出。同年8月に東京都内で開いた販売会では、整理券を求めるファンの行列ができたという。

 「予想以上の反響」(同社広報)を受けて20年6月、Jパワー(電源開発)グループの電源開発送変電ネットワークとともに、今度は群馬県内の鉄塔を取り上げた第2弾を製作した。

風景との調和も

 東電PGに続いたのが、関西電力グループの関西電力送配電。20年4月の関電の送配電事業分社化に合わせて「高さナンバーワン」「国内初の50万ボルト設計の直流送電線鉄塔」など4種類を作製。5000セット限定生産のシリアルナンバー入りで、コレクター心理をくすぐる。

photo 関西電力送配電が作製した鉄塔カード=大阪市北区

 一方、3種類を作製した北陸電力送配電のこだわりは自然との調和だ。「有峰幹線」のカードには「赤白の塗装が施され、青空と真っ白な雪を被った雄大な立山連峰によく映える」と記し、北陸の雄大な自然と人工の鉄塔が調和する情景を切り取った。

photo 北陸電力送配電が作製した鉄塔カード「有峰幹線」(同社提供)

 担当者は「他社が複雑な造形の鉄塔を選んでいるのに対し、自然に溶け込む『景色に映える』ことを基準に選んだ」と独自性を強調する。

担い手確保につながるか

 各社のカードは会社説明会での配布が中心で、販売会では一部が出回るにとどまっていることもあり、基本的に入手は困難。東電PGは1セット500円で販売したにもかかわらず、オークションサイトやフリーマーケットアプリでの取引は1セット数千円以上にまで高騰している。思わぬ人気ぶりに関係者からは「何にでもコレクターはいるのだと気付かされた」と驚く。

 新型コロナの影響もプレミア化に拍車を掛ける。カードを配布予定だった各地のイベントが感染拡大防止のため相次ぎ中止に。関西電力送配電の担当者は「手に取ってもらう機会が限られたのは残念」と肩を落とす。ただ、今後の感染状況を踏まえつつ、ネット販売やイベント開催、さらに第2弾の作製も検討するという。

 ブームを起こしつつある鉄塔カードだが、当初の目的は電力大手と協業する電線工事作業会社の採用活動支援。「送電線の工事作業員減少は電力業界全体の課題」(東電PG)という状況で、電力供給という社会インフラの担い手確保にどこまでつなげられるかが今後の課題だ。

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