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» 2020年09月04日 07時00分 公開

手を使わず柔道着脱ぐ訓練も、海外に広がるオンライン指導

新型コロナの影響で柔道教室も自粛を余儀なくされた。福井県あわら市で柔道クラブを開く長田康秀さんはオンラインを活用。一人でできる練習プログラムの開発や、海外との交流なども積極的に行うようになった。

[産経新聞]
産経新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大で、身体接触を伴うスポーツ教室も自粛を余儀なくされた。指導者らが創意工夫をする中、福井県あわら市で接骨院を営みながら柔道クラブ「立志塾」を開く長田康秀さん(40)はオンラインを活用。外国の子供たちに一人でできる練習方法などを伝えた一方、海外の事例を自らの教室にも取り入れた。コロナ禍は逆風だが、それによって生まれたつながりは海を越え、新たな可能性を示し始めている。

photo ポーランドの柔道指導者に協力し、海外の子供たちに指導した際の長田さん(右上)の映像(YouTubeから)

組み手もできない

 「組み手ができない、道場に集まれない。こんな状況を考えたこともなかった」。新型コロナの感染拡大防止で、全日本柔道連盟は3月、高校生以下の練習自粛を求める通知を出した。これを受けて長田さんは立志塾を休止したが、相当な焦りが募ったという。

 そうした中、指導者の勉強会や講演開催、指導に役立つ冊子を作成しているNPO法人「JUDO3.0」(宮城県女川町)がビデオ会議システム「Zoom」で全国の指導者が話し合うオンラインカフェを開設し、長田さんもそれに参加。全国の指導者らと情報交換し、コロナ禍でもできるアイデアを出し合うようになった。

 この場で、相手と組み合わなくてもできる練習プログラムを作ろうという取り組みが立ち上がった。長田さんは、右手と左手で違う動きをするなどの運動能力を高めるトレーニングを紹介。柔道着をずらして相手が技をかけにくくするテクニックを磨くため、手を使わずに柔道着を脱ぐ訓練も、取り上げた。

 オンラインカフェでのつながりは、国内だけにとどまらなかった。

 指導者同士のつながりから海外との交流も生まれ、長田さんは6月、スペイン、クロアチアなどと映像をつないだ稽古に指導者として参加した。また、ポーランドの指導者がオンラインで幼稚園に運動教室を開くと聞くと、長田さんも園児たちに柔道の動きに基づいた体操を教えた。

photo 海外と映像をつないで柔道指導にあたった長田康秀さん(YouTubeから)

状況を嘆くよりも

 福井県内で感染状況が落ち着いてきたことから、長田さんは6月半ばにクラブでの指導を再開。だが、7月になり県内で再び感染が広がり、道場とオンライン同時で指導を行うなど手探りの状態が続いている。

 一方、「相手と組み合えない状況だからこそ、柔道本来の意味と改めて向き合えた」と長田さん。それは柔道の創始者、嘉納治五郎が残した「精力善用」と「自他共栄」の精神という。「今、置かれている状況を嘆くのは簡単だが、ここから生かすことを考えるのが柔道家ではないか」。オンラインカフェを通じた交流で学んだことだ。

photo 接骨院を営みながら、柔道教室を開いている長田康秀さん=福井県あわら市

 「新型コロナ禍の状況でも、オンラインでの取り組みが広がり、国際交流が身近になった。感染が落ち着けば国内外問わず、もっと深い交流ができる」と長田さん。柔道を学ぶ子供たちについても「まずはオンライン合同練習を開き、参加させたい。柔道だけでなく、さらに何かを学ぶ意欲につながるはずだ」と期待を込めている。

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