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» 2020年09月08日 11時00分 公開

次々止まった携帯・水道・電気……ストーカーなりすまし被害の恐怖 ネット申請悪用で郵便物入手も

警視庁高井戸署がストーカー規制法違反容疑などで逮捕した男は、出会い系サイトで知り合った女性に嫌がらせ行為を繰り返した。Twitterアカウントを特定して個人情報を推定。転居手続きサイトを悪用して郵便物を入手するなどさまざまな手口で情報を取得していたとみられる。

[産経新聞]
産経新聞

 女性になりすまして携帯電話やクレジットカードの紛失届を出し、女性宅の電気や水道を次々と解約する――。警視庁高井戸署が6〜8月、ストーカー規制法違反容疑などで計4回にわたって逮捕した男は、出会い系サイトで知り合った女性に一方的に好意を寄せ、嫌がらせ行為を繰り返した。インターネット申請を悪用して女性宛ての郵便物も入手しており、事件は本人確認の在り方にも課題を突きつけている。(松崎翼)

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住所教えずも…

 高井戸署によると、男は埼玉県川越市の無職、黒崎裕史容疑者(36)。当時都内在住の大学生だった女性(23)と出会い系サイトを通じて知り合い、2019年7月に初めて会った。「(黒崎容疑者は)早口で自慢が多い」と感じた女性は本名を明かさず、住所も「多摩地区」とうそを伝えた。

 だが、女性に好意を抱いた黒崎容疑者は、無料通信アプリ「LINE」で「結婚したい」「真剣に付き合いたい」などと執拗(しつよう)にメッセージを送信。12月に再び居酒屋で会うことになったが、黒崎容疑者はすぐに泥酔し、「おれは暴力団だ。お前薬やっているだろ」などと言いがかりをつけて女性の胸ぐらをつかんだ。その後、女性は黒崎容疑者との連絡を完全に絶った。

勝手に携帯紛失届

 女性の身の回りに異変が起き始めたのは、約3カ月後の20年3月上旬。女性の通う大学に「(女性が)売春や薬物をやっている。警察が捜査中だ」などと中傷する電話が入った。その直後から女性の携帯電話やクレジットカードが使えなくなり、勝手に紛失届が出されていたことが判明。自宅の電気や水道も次々と解約され、恐怖を感じた女性は高井戸署に相談した。

 「命の危険がある」と判断した署員は、女性に実家に避難するよう指示。女性は3月11日に自宅を出たが、13日に署員が女性宅を確認したところ、玄関前には「また15日にくるね」とメッセージカードを添えた花束が置かれていた。避難が数日でも遅れていれば、女性の身に危険が及ぶ可能性は十分にあった。

 黒崎容疑者はどうやって女性の住所を特定したのか。逮捕後の調べでは、「Twitter上で『暴き屋』に依頼し、女性のアカウントを特定した」「投稿された写真などから誕生日や大学を知り、住所を推測した」と話したが、供述にはあやふやな部分も多いという。自宅からは、女性の名字の印鑑や住民票の写しも見つかっていた。

ネットサービス悪用

 被害は、女性の避難後も続いた。女性は実家に避難する際に郵便局に転居届を出していたが、黒崎容疑者は女性宛ての郵便物を入手しようと、女性になりすまして日本郵便の転居手続きサイト「e転居」で転送先を栃木県内にある自分の実家に変更。10通以上の郵便物を受け取ったとみられ、中には女性が新居探しを依頼した不動産業者からのものも含まれていたという。

 e転居はサイト上で名前や新旧の住所、携帯電話番号などを入力して郵便物の転送を申請できるサービスで、本人確認の書類の提出などは不要だ。受付後に配達員が旧住所を訪ねて転居したことを確認する仕組みで、今回は女性が避難して不在だったため、なりすましを見抜けなかった。

 日本郵便は事件後、「本人確認の在り方など、もう一手間加える工夫を考えなければならない」(担当者)とし、サービスの見直しを検討している。捜査幹部は「SNSは常に悪用されるかもしれないという意識を持ち、慎重に投稿することが大切。不安なことがあれば警察に相談してほしい」と話した。

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